そうして私は必要最低限の荷物を纏め、時の政府の元を訪れたわけなのだが、そこで聞かされた内容は私の理解を遥かに越えたものだった。



『…黒本丸?』


「ええ。詳しく説明致しましょう。
審神者は時の政府による厳密な審査の元に選ばれ、各時代に送り込まれた後、本丸を拠点に活動して頂きます。その中には一般市民からの抜擢もあるため、本来であれば誰にも使われたことの無い本丸に送ることになっておりますが、近頃問題が多発しておりまして」


『問題?』


「黒本丸の増加です。
黒本丸とは、刀剣の乱雑な扱いや歴史修正主義者を阻止するという目的に反した行いをする審神者のいる本丸を指します。
具体的な例として、男審神者に多いのは過度な出陣と傷ついた刀剣の放置。女審神者は容姿端麗な刀剣に夜伽を求める…といったところです」


『…………』


「刀剣男士は付喪神。そのような扱いをする審神者を発見した場合はこちらで即解雇処分していますが、問題となっているのはその後、残された刀剣男士の処遇です。
審神者の力で呼び起こされた刀剣男士は暫くは動くことが出来ますが、主を失いその力を使いきってしまえばただの刀剣に戻ります。
しかし能力値の高かった審神者の用いた刀剣男士はそうもいきません。主がいなくなっても一年生きるか百年生きるか…。その間に彼らが負に転じてしまうことを我々は危惧しているのです」


『…………』


「そこで、貴女には残された刀剣男士の更正、彼らの次期審神者として黒本丸に赴いて頂きます。他でもない鈴城家の出であれば、我々も安心してお任せできるのです」


 

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