へし切長谷部様もとい般若との手合せが終わり(……え、逆?…………そう)、倒れてしまった彼は燭台切光忠様と大倶利伽羅様に運んで貰った。

時計を見れば一時間くらい経っていて、まぁびっくり。ぶっ通しでこんなに打ち合ったのは瑠璃様に頼まれた時以来だ。その時より楽しかったのは瑠璃様には内緒にしておこう。


さてさて。へし切長谷部様には暫く休んでもらうとして、私は今刀剣男士たちと広間で向き合っている。

私の右隣には薬研、左隣には鶴丸と三日月がいるけれど、別に私が召集をかけたわけではない。
手合せの後、鶴丸に広間に来てくれと言われたから来たのだけど…これは何なのだろう?何を始めるの?



薬「疲れてるとこ悪いな、大将」


『いえ、疲れてはいないので大丈夫です』


鶴「ははっ!あんだけ長谷部とやっといて疲労が無いとはまた驚きだな!」


『私は受け流していただけですよ』



向かってきた勢いのまま、流れる水のように受け流しただけ。その分へし切長谷部様は通常より疲れたことだろう。



『それで、何かお話があったのでは?』


鶴「ああ、そうだ!この本丸にいる刀剣男士全員と主従の契約を結んでほしい」


『え…?』



全員と?何故そんな話が鶴丸から発せられたのかわからず他の刀剣たちを見ると、皆様正座されて真剣な面持ちで私を見ていた。
キラキラと効果音の付きそうな眩しい目差しで。

…穴が空きそうです。



鶴「ここにいる男士全員の意見だ。長谷部も起きたら君を認めていることだろう」


『全員…。反対意見の方はいらっしゃらないのですか?』


次「いないよ!いたらアタシがシメる!」



いや、シメられちゃ困ります。
詳しい説明を求めて見回すと薬研と目が合い、その意図を汲んでくれた彼は苦笑しながら説明してくれた。



薬「大将の手入れのお陰で、それぞれの体内に残留してた前任の霊力も無くなった。本当の意味で俺たちは前任から解放されたわけだ。それに、注いでくれた霊力で大将がどんだけ俺たちを真剣に見てくれてたのかもわかったからな。反対意見なんて誰も持ち合わせちゃいないさ。まぁ、長谷部の旦那は良くも悪くも真面目すぎるからあんな行動とっちまってたけどな」


『霊力…。皆様、お身体は大丈夫なのですか?私のを入れたことで違和感があったりとか…』


一「ありません。寧ろ、前任の霊力が貴女の霊力に塗り替えられたことで身体も軽くなりました。私たちを治したいというお気持ちも一緒に流れ込んできて…感謝こそあれ、反対する者はおりません」



一期一振様の言葉に粟田口兄弟を初め全員が頷いた。どうやら本当に反対意見を持つ者はいないらしい。

散々警戒していた和泉守兼定様さえも今では嫌悪感がさっぱりと無くなっている。
ニヤッと笑ってていっそ清々しいですね。



『契約を結べば…、私はあまりしたくは無いですが、命令を聞いてもらうことが多くなります。嫌な出陣も増えるでしょうし、怪我することもあるでしょう。それでも、私と主従の契約を結んで頂けますか?』



勿論、彼らの主は私で、全員が私の刀剣だ。契約を結ばなくともその意識は持っていた。

でも契約をしたら嫌な仕事にも従ってもらうことになるだろう。なるべくはさせたくないけれど、歴史を守るためには多くの刀剣男士の力が必要で、私はその主人なのだ。

ただの所有物としているか、従者として契約するか。
決めるのは彼ら自身だ。



一「こちらからお願い致します。粟田口兄弟一同、貴女を主と認め貴女のために戦うことをここに誓いましょう」


江「私たち左文字も…同じく……」



一期一振様に続き、江雪左文字様たちや燭台切光忠様たちも続々と願い出る。

…ここで断ったらガーンという効果音が出るんだろうか?聞いてみたいけれど流石に意地悪が過ぎる気がしたから飲み込んだ。…聞いてみたいけれど(二回目)。



『では、私も貴方たちの主として、良き審神者になれるよう努めましょう。クロと申します。これからよろしくお願いします』



 

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