暫くぐすぐすと泣いていた加州清光様を宥め、再び手入れ部屋に行こうと誘うと今度はすんなりと立ち上がってくれた。
「あ…っ」
「…!」
けれど立ったのも久しぶりなのだろう、フラついて転けそうになるのを薬研と一緒に支えてあげると、怯えたように身体を震わせる。
「病み上がりと同じだな。ずっと座ってたから足の動きが鈍ってやがる」
「ご…め…なさ…ぃ……っ」
「…………」
どれだけ傷心してるんだろう?これくらいで泣きそうになるなんて、前任に会ったら怒りを抑えられなそうだ。会うことは無いだろうけど。
「…謝ることはありませんよ」
そっと彼の手をとってゆっくりと歩く。これなら転びそうになってもすぐに支えてあげられるだろう。
「ぇ…あの……」
「?速いですか?」
「や…、だい…じょぶ」
「そうですか。速かったら言ってください」
「…………」
冷たくて気持ちいい手だとか関係ないことを考えながらてくてくと手入れ部屋を目指す。
後ろで加州様がまた泣きそうに、嬉しそうに頬を緩めていたなんて気づかずに…。