日が暮れて電気をつける頃にはそれぞれ担当していたことが終了したようで、代表が何人か報告に来てくれた。荒れていた畑も耕すのに苦戦したものの、種を撒いて水をあげるまで出来たらしい。
ここの畑は特殊で、野菜は水と私の霊力を糧に育ってくれるのだそうだ。翌日には実ると養成所で習った。育っていく瞬間を見てみたい。興味津々です。
それはさておき、畑組はやはり泥だらけで帰ってきたため、すぐにお風呂に向かってもらった。はしゃいで溺れたりしないか心配な部分があるけれど、そこは薬研や骨喰、鳴狐もいるから大丈夫だろう。鯰尾は一緒になってはしゃぎそうだけど。
本丸修復組も大怪我することなく終わったらしい。
「あ〜るじぃ〜」
「おっと…。お疲れ様です、次郎」
「ふふ〜んお疲れ様ぁ!
本丸の穴、全部塞がったよ!」
「ありがとうございます」
茹で上がったほうれん草を切っていたら肩に乗った重みと前に回された白い腕。まだ酔ってないだろうに間延びした声を出す次郎は、力仕事してきたのに機嫌は悪くなさそうだ。
サラっと垂れてきた黒髪が擽ったい。
「次郎くん。主、今包丁使ってるんだから危ないよ」
「ねぇ〜もぉ疲れたからさぁ、お酒飲んで良い?」
「聞いてないねぇ…」
「次郎、離れなさい。主が困っているでしょう」
「えぇ〜…」
次郎を探しに来たのか、太郎が次郎を剥がそうとするも彼は離れそうもない。寧ろ私の首が絞まったような?刀による絞殺?いやいやいや…。
「大丈夫ですよ。太郎もお疲れ様です。
次郎、お酒は用意しておきますのでお風呂上がりに如何ですか?」
「おっ!良いねぇ!主も飲むかい?」
「飲みたいのは山々ですが、残念ながら私はまだ飲めないので…。代わりと言ってはなんですが、お酌しましょう」
「おぉおお!主のお酌!お風呂入ってくるねぇ!」
機嫌を良くしたらしい次郎はドタバタと足音を立ててお風呂に向かった。遠くから長谷部の「廊下を走るな!」という怒鳴り声が聞こえてくる。
太郎はそれを聞くと深く溜め息を吐いた。
「はぁ…。節操の無い愚弟が申し訳ありません」
「いいえ。色んな刀剣がいて私も楽しいです。太郎もお風呂に行ってきて大丈夫ですよ」
「では、有り難く。愚弟が何か仕出かさないか見張っておきます」
……苦労してるんですね。御神刀なのに茸を生やして黒い靄を背負っているように見えたのは気のせいであってほしい。
「太郎くんも大変だね」
「そうですね。でも、太郎も少しだけ楽しそうでした」
「え?そう?」
「はい。次郎といる時だけ、ほんの少しですが頬が緩んでいますよ」
恐らくそれは気心の知れた兄弟だから見せる表情なのだろう。太郎だけでなく、次郎も太郎の前だともっと甘えたがりになってるような…そんな感じがする。
さぁ続き続き、と次のほうれん草を切っている時、隣からずっと視線を感じたけれど、特に何も言われなかったので気づかないフリをしておいた。
(……よく見てるんだなぁ)
「あの、光忠?お鍋が…」
「え……わぁあああ吹いてるっ!!」
「頑張ってください、お母さん」
「その設定続くの!?」
「ダメですか?」
「ダメ…」
「…………」
「…………」
「……………」
「……っ、じゃない」
「良かったです」
「ははは…(ああ…、この子強い)」