「え?クロ明日は出陣しないの?」


「しないとは言っていません。今日の成果を見てから決めます」


「今日の成果って関係あるの?出陣は成功したんでしょ?」


「はい。全員無傷で圧勝してきました」



元々出陣したことのあるメンバーで編成したこともあって、結構スムーズに戦えたし誰一人として掠り傷すらつけることも無く帰還したのがさっきのこと。

寧ろ「まだまだいけます!」と今剣に出陣催促されてしまったくらいだ。



「じゃあ…?」


「″成果″は鍛練のことです。長谷部、大倶利伽羅、和泉守、鳴狐、骨喰、堀川には鍛練場の先生になってもらっているので」


「せっ、先生?」



薬研が話していた通り彼らには数年のブランクがあるため、刀剣男士と言えどいきなり戦場に立たせる気にはなれなかった。
それなら、数年どころか顕現して一度も出陣を経験していない者たちの先生となり、稽古をつければ自分の身体も鍛えられるし都合が良いと思ったのだ。

今日のお相手は加州、光忠、三日月、一期、鶴丸、小狐丸。一対一で相手が出来るように、一番鍛えなければいけないこの六人を選んだ。
加州は暫く出陣していなかった身体を馴れさせるために。他は出陣未経験者。

実践して強くなることも大事だけれど、身内同士で互いの技を見、癖などを指摘しながら実力を高めることも大事なことだ。

私たちの敵は歴史修正主義者。彼らの目論見を阻止するのが私たちの仕事。
私もこの間出陣したけれど、相手の強さがどれ程あるのかはまだわかっていない。

戦い馴れている者とそうでない者を組ませ、怪我を負い、庇い…、目的を達成しても重傷で帰って来られては困る…というより、悲しい。

その為には、なるべく皆の力量を平等にして部隊編成を組みたいのだ。



「へぇ。まぁ良いんじゃないの?へし切長谷部なんかは責任持ってやってくれるだろうし。でも、やる気に溢れてた和泉守兼定は拗ねたりしなかったの?」


「拗ねましたよ」


「やっぱり。大丈夫だったんだ?」


「はい」





「はあ!?先生だあ!!?」


「嫌ですか?」


「当たり前だろ!!そりゃ前任みてぇに手入れ無しで出陣連続なのも腹立たしかったが何で刀剣の俺が先生なんかッ!絶対やらねぇからな!!」


「困りましたね…。和泉守は戦闘経験も豊富でしょうし、初めて会った時の刀の構えも綺麗でしたし…」


「!」ぴくっ


「気持ちもちゃんと言葉にしてくれますから助言も出来るでしょうし、先生として適任だと思ったのですが…」


「!!」ぴくぴくっ


「そうですか、嫌ですか…。残念ですが仕方ありませんね。では他に誰か…」


「やってやろうじゃねぇか!!!」


「よろしくお願いします」





「あーあ…」


「はは。まんまと主さんに乗せられちゃったね、兼さん」


「主ももう和泉守の扱い方わかってるみたいだね」


「憐れな小僧よ」


「はっはっは」





「…と、誠心誠意を持って伝えたら了承してくれました」


(クロ……君って子は……)


「どうしました?」


「い、いや!何でも!」



遠い目をしていた真黒さんに声をかけるとハッとして数回咳払いをした。



「じゃあその鍛練の成果次第で明日は別の編成で出陣するんだね。クロも出るかはわからないと」


「はい。皆さんの実力に合わせて組み直します」


「感心感心。刀剣男士のこと、よく考えてるね」


「彼らの主ですから」



主だからと彼らの上に胡座をかくなんて以ての外だ。共に戦場に立つことが無くなったとしても、心は常に彼らと共に戦う。私の″主″としての在り方だ。



「ほんと、クロがしっかりした子で助かるよ。改めて、黒本丸の修復お疲れ様!これからも頑張ってね。私も出来る限りは力になるからさ」


「ありがとうございます。でも、今のままでも十分ですよ」



本当ならシロのお見舞いも禁止される筈だったのだ。顔を合わせればその内欲張りになって「会わせろ」と駄々を捏ねるだろうとか、審神者業に支障が出るだとか政府の嫌な感じのおっさんに言われ、正直呪われてしまえと思った。

そんなところで、真黒さんが間に入って相手のおっさんを上手く口車に乗せて説得し、月に一度だけはお見舞いの許可を貰えたのだ。

その頃の私はシロの存在だけが全てだったし、親戚の家から出してくれた真黒さんには、今でも感謝してもしきれない。



「そっか。まぁ、また連絡するよ。そろそろ私も仕事に戻るかな。
あっ、そうそうさっき瑠璃が「クロの本丸行く!」って無理矢理他の役員からその本丸の所在地聞き出してたらしいから」


「は?」


「たぶんというか絶対そっち行くと思うから、我儘な妹で悪いけど面倒よろしくね!」


「ちょ…」


プツン…


「…………」



何て言った?
″無理矢理この本丸の所在地を聞き出した″?
瑠璃様が…



「来る…?」



通信が途絶えた鏡を見詰めること数秒。



ドオオォォォォン!!!



何かが衝突するような音と共に外が物凄く騒がしくなり、刀剣たちの私を呼ぶ声が本丸中に響き渡った。










「主いた!!早く外ッ!外来て早くっ!!」

「落ち着いてください加州。何があったんです?」

「知らない人が「クローーッ!!」って叫びながら厩に突っ込んだ!!」

(何しに来たんですか瑠璃様…)


 

ALICE+