個人審神者としての活動は、政府に所属する審神者とそんなに大差無い。どちらにしても歴史を守るという目的は同じだ。

大きく違うのは、もし本丸が襲撃された場合に政府からの結界が発動されないこと。政府からの守護が無い為、私の力だけで本丸を守らねばならない。

その他の政府からの情報…例えば新しい刀剣の発見や新しく攻撃された時代等は教えてくれるらしい。歴史を守るのがお役目なのだから当たり前といえばそうなのか。

会議の参加は自由。情報が欲しければ来れば良いということなのだろう。

そして、特別部隊はそのまま継続することになった。本当なら個人審神者になった時点で政府の部隊からも外れるらしいのだが…



「クロがパートナーじゃないなら俺も辞めるって瑪瑙が…。そしたら翡翠も辞めるって言い出すし、そうなると瑠璃までっ」


「特別部隊崩壊だな」


「そんなことになったら今でも多い黒本丸がもっと増えるし刀剣の反発まで起これば歴史を守るどころじゃなくなっちゃうんだよ!」


「悲惨ですね」



というわけで、私も瑪瑙さんがパートナーであることに不満は無いので継続すると頷いた。決して真黒さんが可哀想だったからではありません。





一通りの話を終えた私と薬研は、本丸ではなく政府の外に出た。花屋で花束を買い、行き先は両親のお墓だ。



「シロも連れて来りゃ良かったな」


「でもまだそんなに遠出はさせられないから。少しずつ慣らしてからね」


「そうか。…ん?」


「どうかした?」


「…あれ」



もうすぐ着くというところで立ち止まった薬研。彼の指差す先には両親のお墓と…



(!…麗華様?)



黒い服に身を包み、墓石を撫でる彼女。いつもの強気なオーラは無い。活けられた花は真新しい物に変わっている。ここでバッタリ出会すことなんて今までには無かったのに…。



「!」



ふぅ、と溜め息を吐いた彼女はここで漸く私たちの存在に気づいたらしい。軽く会釈すると彼女は少しだけ睨んできたけれど、帰るらしく私たちを横切ったその時…



「────」


「!」



ポツリと紡がれたその言葉に心底驚いた。まさか貴女からそんな言葉が出てくるとは。

もう姿は見えなくなってしまったけれど、暫くその場から動くことができなかった。



「あの人もやっと過去と決別したんだな」


「…そうだね」



「…ごめんなさい」




謝られるなんて思わなかった。これからは少しずつでも歩み寄れたりするのだろうか?顔を合わせた時くらいは挨拶でもしてみよう。

…あれ?それじゃ今までと変わらない?
……何か話題考えよう。



お墓は綺麗に掃除されていた。活けてあるのは母さんが好きだった金魚草。半信半疑だったけれど母さんと麗華様が友人だというのは本当だったのですね。これまでお墓参りしていなかったようだし、たぶん母さんは怒っているだろうけど。

私が持ってきた花を活け、薬研と二人並んで手を合わせた。



(母さん、私にも大事な人ができました)



思えば私たちも幼かったからか、そういう恋愛の話は聞いたことが無かったな。父さんとの出会いとか、どこが好きで結婚したのかとか。もっとたくさん話したかったな…。



(母さんと父さんがいなくなって、シロも入院したままで、ずっと一人で寂しかった。でも、そんな私を彼らは支えてくれて、やっとシロも帰ってきてくれた)



ん?帰ってきたとは違うのかな?無理矢理連れ出しちゃったし。

…まぁそれは置いといて、今も皆さんと楽しく種蒔きしてくれているだろう。



(そして何より嬉しかったのは、やっと笑えたこと。やっと泣けたこと。隣にいる彼のお陰で私は表情を取り戻せました)



何をしても人形みたいだと言われて悲しくても泣けなかったのに、彼の前でだけはボロボロと泣いてしまう。

泣き顔を見せるのは恥ずかしいけれど、でも泣けたことが嬉しかった。泣けることに喜びを感じるなんて可笑しな話だ。



(そんな彼と想いが通じ合って、お付き合いすることになりました。これから先も審神者として彼らと共に歩んでいきます。何が起こるかなんてわからないけど、でも彼と一緒なら大丈夫だって思うんです)



一緒にいるだけで不思議と心が落ち着く。何が起こっても彼と一緒なら怖くない。母さんも闘病中はそんな気持ちだったのかな?



(人としてまだまだ未熟な私だけれど、どんな困難にも負けません。彼らと共に頑張って生きていきますので、お空の上で見守っていてください)



目を開けると同じタイミングで薬研も手を下ろした。私結構長く語りかけていたと思ったのですけど…



「長かったね、薬研も』


「ん?そりゃまぁ。二人の愛娘を貰うんだからそれなりの挨拶はしねぇとだろ?」


「!」


「両親の前で改めて誓うぜ。俺は刃生を掛けて夜雨を守る。幸せにする。逃がしてやらねぇから覚悟しとけよな?」


「…ふ、あははっ。最後が誓いになってないよ?
それじゃあ私ももう一度。私は一生薬研のもの。私の人生を掛けて薬研を幸せにする。負けてなんかやらないよ?」


「はは!上等だ!」



誓いになってるんだかどうなんだか。お墓の前でする会話でも無いしこんなに笑って良いものでは無いのだろうけど、彼といるとこんな場所でも笑顔になれるのだから不思議だ。



「帰るか」


「うん」



差し出された手に手を重ね、どちらからともなく指を絡める。繋いだ手に引かれて歩みを進めれば背を後押しするようにふわりと吹いた風。



「?」


「どうした?」


「…ううん、なんでもない」



振り向いたその一瞬だけ、線香皿に乗せてある簪が光ったような気がした。










「行っちゃったね」

「そうだな…」

「寂しい?」

「そりゃあ寂しいに決まってるだろ。大事な娘がまさか神に見初められるとは…」

「ふふ、でもあの神様なら大事にしてくれるでしょ?貴方と違って」

「うっ!」

「クロちゃんに暴力振るったこととシロちゃんのお見舞いも行かなかったこと、絶対に許さないから。上に戻ったらまたみっちりお仕置きよ?」

「っ、わかってますごめんなさい…」

「麗華も過去と決別してくれたし、これでもう安心ね。幸せになるのよ、夜雨。今度は朝陽と一緒においでね」


 

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