パンパンパンッ
「「「?」」」
「いやぁ〜相変わらずクールだねぇ、クロ。でも暑くないの?君たち」
「真黒さん…?」
一人分の拍手が聞こえたと思えば…、いつからいたのやら真黒さんがニコニコしながら歩いてきた。その後ろに二人の男性を引き連れて。
一人は金髪吊り目でジャラジャラしたピアスに逆さ十字のネックレスといった、いかにも不良を思わせる人。でもこの澄んだ霊力は審神者のそれと同じ…。え?本当に?
もう一人は…確か以前にお会いしたことがあった…
「真黒さんの御親友の…」
「覚えてくださっていたとは感激ですね。真黒の親友の"蘇芳(すおう)"です。お久しぶりです、クロちゃん」
政府登録名通り、蘇芳色の髪をした役人さんだ。真黒さんとは同期で大親友らしい。
私が真黒さんに勉強を教わっていた時に、偶然訪れてきた彼と出会ったのが最初だった気がする。おっとりしてて人柄も良くて、真黒さん同様に養成所では人気のある人だ。
「お久しぶりです。それと…?」
「こっちは私の後輩で、瑪瑙の同期の"翡翠"。ほら、前に言ったクロたちと同じ黒本丸修復更正部隊だよ」
ああ、瑠璃様と組んでる方ですね。まさか本当に審神者だったとは…。見かけで判断するのは良くないですね、すみません。
「初めまして、クロです。よろしくお願いします」
「…へぇ」
「?」
何でしょう、この視線。そんなジロジロ見られても何も出ませんが?
「ほら、翡翠も挨拶して」
「はいはい。翡翠でーす、よろしく。
あの瑠璃嬢が超オススメだっつってたからどんな変人かと思えば…」
「ちょっと!主は変人じゃないからね!」
「うんうん!」
「ハハッ!悪い悪い!瑠璃嬢があんなだから同類かと思って、ついな」
「「「ああ、そういう…」」」
「そこは納得しないでほしかったな!」
涙目になっても誰も否定してくれませんよ、真黒さん。私だって未だ嘗て見たこと無い人間ですもん、あの子。悪い子ではないのですが…ね。
「真黒に呼ばれてさ、ちょうど今回の会議であんたと顔合わせられるってんで挨拶に来たわけだ。特別任務で組むこともあんだろーし、今度から演練も特別部隊内で組まされるんだと」
「そうなのですか?」
「うん。味方の戦い方は知っておくべきだしね。一応クロのペアは瑪瑙って決めてるけど、腕が治るまでは任務できないから。まぁ、もうすぐ治るだろうけどさ。本丸にいれば治り早いからね」
そういうことですか。
瑪瑙さんが骨折してからというもの私への特別任務は発生していない。でもいつまた駆り出されるかもわからない。そうなった時、瑠璃様と翡翠さんのペアが出るか、どちらかと共に私が出るということになる。
瑠璃様は何となく動き方はわかるけれど、翡翠さんはたった今「初めまして」と言ったばかりだしお互いに何もわからない。前回の任務でも瑪瑙さんがどう戦うのかは知らなかったから手探りな部分もあった。演練できるならその方が有り難い。
「んじゃま、そーゆーわけだからそん時はよろしくな。俺帰るわ」
「えっ、もう行くの?」
「この前あんたの妹にぶっ壊された藤棚の修理があんだよ。うちの初期刀がめっちゃお怒りなんだよ。わかるかあの穏やかな表情が般若に変わってくサマ。背中に氷が伝っていくよーだったぜ?」
「うっ!?すまん!」
「また壊したんですか、あの力馬鹿」
お宅訪問の度に壊して回ってたんじゃ外出禁止にされるんじゃないですか?石切丸さんの胃が心配になってきました。
「藤棚壊されて怒る初期刀ってことは、歌仙?」
「おう」
「かせん?」
「うちにはいないから主は知らないよね。歌仙兼定。自称文系の雅大好きな奴だよ」
「俺の格好見ては雅じゃねぇだの何だのうるっせーの。ま、ぜーんぶスルーしてっけどさ」
それ良いんですか?確かに翡翠さんの姿と雅は結び付かないのが事実ですけど。歌仙さんという方の苦労は報われなさそうですね。
「ってわけだから帰るわ。じゃーな、クロネコ」
「(クロネコ…)はい、また今度」
ひらりと手を振って帰っていく翡翠さんを見送る。見た目はあんなだったけど悪い人ではなさそうだ。藤棚の修理が無事に終わることを祈っておこう。