シロの病室を開ければ彼女はいつものように嬉しそうに飛び付いてきた。

私たちが来ることを本当に心待ちにしていたのだろう。ベッドに戻しても私とは手を繋いだままニコニコと笑顔を絶やさない。



「で、あの義兄からも聞いてたけどあんたが翡翠さん?」


「おう。そういうてめぇがシロネコか」


「うん!よろしくね!」


「よろしく」



お祭りの時も思ったけれど、翡翠さんは見た目に反して面倒見の良いお兄さんのようだ。真黒さんを前にした時と違って笑っているし、わしゃわしゃとシロを撫でる手付きも優しい。シロも早速懐いてしまったようだ。

翡翠さんは同時に鯰尾さんのことも紹介し、シロの興味は私が連れてきた二人へと注がれる。



「それで…、えっと?そっちの白い人は鶴丸さんだっけ?」


「お?俺のことは知ってるのか」


「前に瑪瑙さんが連れてきてたんだ。でもキミとは初めましてだね!」


「ああ。鶴丸国永だ。白いもの同士、仲良くしような」


「おおっ白いもの同士!よろしく!あと、そっちの綺麗な人は三日月さん?」


「俺のことも知っておるのか?」


「クロのお古の教科書に載ってたんだよ。天下五剣の一つで一番美しい刀で、打ち除けが多いから三日月さんって呼ばれてるって」


「ほぅ、お主も主同様に勉学に励んでおるのだな。俺は三日月宗近。主からは"おじいちゃん"と呼ばれておる」


「!ってことは私のおじいちゃんだね!」


「ははは、そういうことになるなぁ」


「わーい!おじいちゃんができた!!」



よろしくおじいちゃん!と万歳するシロとそれを微笑ましく見つめる三日月。

本当に本物のおじいちゃんと孫の光景だ。私と三日月が並んでもそう見えるのだろうか?


自己紹介もそこそこに、話は真黒さんから聞いたという本題へと移る。その内容は私たち黒本丸修復更正部隊の霊力についてだそうだ。



「あまり多くの審神者には見られねぇんだが、霊力っつーか人にはそれぞれ生まれもっての属性っつーものがあるんだと」


「属性?」


「風水とか占いとかであるらしいんだけどな。大きく分けて五つ。空、地、水、火、風の五属性」


「あ、なんか本で読んだことある。パワースポットとかはそーゆー属性を持ってて、自分の属性と合えば運気が上がるし、相性が悪ければ逆効果になるって」


「勉強家だなぁシロは」


「えへへ、おじいちゃんに誉められた」



さすが、無駄に本を読んでいるだけある。それ以外にここでやれること殆ど無いもんね。

本に頼りすぎてどうでも良い知識が植え付けられていなければ良いけれど。



「それで、その属性が何か?」


「俺たち特別部隊の四人は、特にその属性が現れつつあるんだとさ」



自然界の力を借りることができる人間が稀にいるらしい。それはその者の属性と同じ力が発揮されるのだとか。



「瑪瑙は地。瑠璃嬢は火。俺は水。そんでクロネコは風だ」


「風…」


「そういえば、確かに主の傍では気持ちいい風が吹いていることが多いな」


「うむ、夏場は極楽であったな」


「そうでしたっけ?」



自分では暑かった記憶しか無いのですけど。

あ、でも言われてみれば何をするでもなく私のことを見る視線を感じることが多かったですね。あれはそういう意味だったのですか。納得です。



「無自覚か。ま、俺もそうだが」


「主は植物を育てるの上手ですからね。花が生き生きしてるのはきっと主が水の属性だからですよ!」


「おいナマズ」


「お花を育てているのですか。見てみたいです」


「私も見たい見たい!退院したら見に行っても良い?」


「!…まぁ、構わねぇけど」


「やったあ!!」



またまた万歳して喜ぶシロ。

翡翠さんは何だか驚いているような表情をしたけれど、見に行くこと自体は不快に思っていないようだ。またシロのことを撫でてくださいましたし、もしかすると真黒さんより翡翠さんの方がお兄さんっぽいのでは?

…本人がいたら本当に泣きそうですね。黙っていましょう。


そして、翡翠さんはその属性の相性についても説明してくれた。

"空"は地と風、"地"は空と水、"水"は地と火、"火"は水と風、"風"は火と空に弱い。

私たちに置き換えると、瑪瑙さんは翡翠さんとの相性が悪く、翡翠さんは瑪瑙さんと瑠璃様、瑠璃様は翡翠さんと私、私は瑠璃様との相性が悪いようだ。

…瑠璃様が"火"というのはなんとなく納得してしまいますね。瑪瑙さんと翡翠さんの仲は良いですから人としての相性ではないことは確かですけど。



「ん?瑠璃って翡翠さんと組んでるんでしょ?相性悪くて良いの?」


「あいつはやり過ぎるから俺でちょうど良いらしいぜ。組まされんのはものっすごく不服だがな」


「「ああ、成る程確かに…」」


「!!声揃った!」


「驚いた。双子ってやっぱ揃うもんなんだな」


「そりゃ揃うよ、私ら以心伝心してるもん!ねークロ?」


「そだね」


「温度差半端無いな!」


「ははは、双子の孫というのは愛らしいな」


「ま、そんなわけで、俺らは他の審神者と違って特別任務で自ら戦場に行かなきゃなんねぇからな。剣術や呪術の他にも身に付けられる力はつけとけっつー話をされた。今までに属性の力を発揮させた審神者はいねぇ。ま、上のお偉い方の見下し宣言だ」


「成る程」



要するに私たちは実験台だ。審神者が属性を意のままにでき尚且つ戦えるのなら、より多くの時代、多くの任務を与えることができる。

時間遡行軍の出現が減ることは未だに無いし、寧ろその数も時代も増える一方だ。審神者たちに秘められた能力が解放されるのなら使わない手は無いだろう。

政府に言われるがままにというのは癪だけれど、結局重要なのは歴史を守ること。私たちにとっても属性の能力がつくことは大きい。



 

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