「………ぇ?」
治す?
薬研を?
ゆるゆると顔をそちらに向ければ、先程から何も変わっていない笑顔の蘇芳さんが私を見つめていた。
「簡単です。"貴女が政府に向かう"過去を無くせば良いのですよ」
「…!あんた…何言ってんの…?」
「そうですよ!かってなことをいわないでください!」
「重春が貴女に宛てた手紙。それさえ届かなければ貴女が政府に向かうことは無かった。残酷な真実を聞くことも無く、私たちがまた過去を修正すれば貴女の痛みも無くなり全て元通りです」
「…………」
──元通り…
「本丸で過ごした平穏な時間。それを崩したのは全て時の政府です。奴等さえいなければ貴女がこんなにも振り回された人生を歩むことは無かった。貴女の時間が犠牲になることは無かったのですよ。シロちゃんも巻き込むこと無く、いずれは手術だって受けて共に過ごせていた筈です」
「そんなのわかんないだろ!?」
「ええ、でも今より可能性はありますよね。確実に」
「…っ!」
──犠牲…
──私の…時間…
──シロ……
「卑怯だぞ貴様!!主の弱味に付け込むなど…!」
「事実ですよ。貴殿方だって嫌でしょう?このままでは時の政府によってクロちゃんの身も心も壊されてしまう」
「っ!!」
「私たちと共に来ませんか、クロちゃん?私たちには貴女のお力が必要です。このまま時の政府に所属していても貴女にとって良いことは一つもありませんよ。これまでがそうだったでしょう?こちらに来てくださるのなら薬研藤四郎の破壊を防ぎ、今後の貴女の人生、平穏な時間をお約束します」
「……確かに、そうですね」
「え…?」
「あるじ…さん?」
薬研を見下ろして柄をそっと撫でながら独り言のように呟く。
「確かに、貴方の言う通りにした方が平穏な時間を過ごせるのでしょうね」
「あ、あるじ?」
「政府に行く度に睨まれることも無くなるし」
「はは…、冗談だろう?」
「ずっと夢見てきた…シロと一緒に過ごすこともできる」
「っ、主…」
「貴方の手を取れば、それは簡単に実現できるのでしょう」
そうすれば、痛いのも苦しいのも全部無くなる。
私の過去を変えれば…、シロだって帰ってくる。
どれだけ待ち望んでいたかも知れない平穏な日々が訪れる。それはどんなに幸せな時間だろう。