……え?なに今の音。

なんかデジャブを感じる。さっきの夢でも聞いた音だ。私が父さんの頬っぺた平手打ちした時と同じ。

ってことは…



「…何て言った?ねぇ今何て言ったのお母様?」


「瑠…」



お前か、瑠璃。まさかとは思ったけど瑠璃が麗華の頬を打ったらしい。不謹慎だけど見たかったな。



「"死神"とか、"生まれてこなければ"とか…。何それ?あたしの友達に向けてなんてこと言ってんの?」


「瑠…璃…?」



静まり返った室内に響く声は怒りに溢れていた。 

瑠璃がここまで怒るとは誰も予想していなかっただろうね。私だってびっくりしてるもの。



「母さん!瑠璃!?」


「…何をしている?」



げ、真黒と重春まで来た。

ってか来るならもっと早くに来なさいよ。息切れ聞こえるけど遅すぎるから。さっさと追い出してよねこの煩いの。



「なんでそんなこと言うの?今までだって…お母様がクロとシロのこと嫌いなんだって知ってたわよ。でもなんでそんな酷いこと言って傷つけるのっ?二人がお母様に何したって言うのよ!生まれてきて何が悪いの!?」


「瑠璃…」


「友達の大切さ知ってるならお母様にもわかるよね?クロだけだったのよ、あたしのことわかってくれたのは!シロもよ!あたしと対等に真っ正面からぶつかってきてくれたのもシロだけだったのよ!」


「っ!?」



吐き出される瑠璃の本音に流石に麗華も言い返せないらしい。

当然だ、私たちを憎むくらい麗華が母さんを想う気持ちは強かったのだ。つまり友達を想う心は誰よりもわかっているということなのだから。



「あたしがどれだけ"鈴城"を名乗るのが嫌だったかわかる!?ずっとずっと…審神者貴族だからって高貴な目を向けられて特別扱いされてっ…友達なんて一人もできなかったあたしの気持ち、お父様もお母様も考えてくれたことあるの!?」


「!!」


「主…」


「いつも皆に言ってたよね?"瑠璃のように成績優秀に"とか"瑠璃の足を引っ張るな"とか。その言葉を聞くたびにあたしは苦しくて堪らなかった!あたしそんなにできた子じゃないもん!
お父様とお母様が嘘つきにならないようにって頑張って勉強して…っ、でもどんなに頑張ったって二人から誉めてもらうことは一度も無かった!あたしの頑張った成績は皆の中では"当たり前"になってて、かけられる言葉も「鈴城なんだから当然でしょ」って…!」


「…………」


「クロだけだった、最初からあたし自身を見てくれてたの。テストであたしが負けて初めて言葉を交わした時、クロは何て言ったと思う?」





「申し訳ありません。私は誰にも負けるわけにはいかないので勝たせて頂きました」


「なんで謝るの?」


「本当は勉強苦手なのでしょう?」


「へっ?な、なんで知って!?」


「見ていればわかります。いつも何かに怯えるような顔で勉強してますし、お家やご両親の為に頑張っているのでしょう?」


「っ!?」


「結果が貴女より勝ったことに関しては謝りません。でも、悔しい、悲しい、怖い…。それが私が貴女に抱かせてしまった感情です。こちらについては謝ります。申し訳ありません」





「全部当たりだったよ。負けたことが"悔しかった"。お父様とお母様の期待に応えられなかったことが"悲しかった"。負けたことで鈴城に叩かれるんじゃないかって"怖かった"。そして、あたしを理解してくれる人ができて…クロに出会えたことが…ライバルがっ友達ができたことが"嬉しかった"!」


「っ!」


「なのに鈴城は…お母様は二人のこと憎んでるし、あたしたちは義姉妹になっちゃうし、チョーカーのこともシロのお見舞いのことも…、何とかしてあげたいのに何もできない自分が情けなくて悔しくて!だからせめてここでシロを守ろうって決めてたの!なのに"生まれてこなければ"なんてっお母様どんだけ酷いこと言ったかわかってんの!?」


「瑠璃、もう良いよ」


「でもッ…、て、え…?」


「!シロ!?」


「シロさん…!」


「!お目覚めになられましたか!!」



ここらで止めないと両親と不仲になるどころか瑠璃の心まで壊れる。

そう思って瞼を押し上げれば、眩しい光と共に何人かの顔がぼんやりと映った。やっぱり知ってるみんなだ、と思うのと同時に私の手が誰かに握られているのを感じた。重たい首を少し傾けると、それは…



「…大和くん。ずっと握っててくれたんだ」


「っ、うん。少しでも力になれればって。
おはよう、シロ」


「へへ、おはよう」



安心してくれたみたいに微笑んでくれた大和くんに、私も笑ってその手を握り返す。だから夢の中ですぐに大和くんが出てきてくれたのかもね。

起き上がろうとすると咄嗟に大和くんと加州くんが手伝ってくれた。そういえば、この二人の元の主さんも病気だったんだっけ。じゃあかなり心配させちゃったんだろうな。



「まだ起きない方が良いんじゃない?」


「だいじょーぶだいじょーぶ!もう元気ピンピンだから!」


「今の今まで眠ってた奴の台詞かよ」


「およ?やっぱり新しい人が二人いる!クロの刀剣男士さん?」


「おうよ。和泉守兼定!かっこ良くて強い!最近流行りの刀だぜ」


「僕は堀川国広です。兼さんとは新撰組の土方歳三の刀としてずっと一緒だったんですよ」


「!じゃあ今ここには新撰組の刀が四人もいるんだね!あと鳴狐さんと五虎ちゃんか。六人も来てくれて嬉しい!」


「よ、良かったです…シロさん…っ」


「心配かけてごめんね。もう大丈夫だよ」



さてさて、こういうふんわりした空気をいつまでも味わっていたいけど、そうもいかないよね。


 

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