「…………」


「…………はぁぁぁ、やっぱりか」



色とりどりの花が咲き乱れる美しい庭。
なんて、雅がわからねぇ俺が常套句を並べてしまう程に綺麗に整えられた庭を通り、この本丸にいるであろう大将を求めて玄関を潜れば、出迎えたのは確かに翡翠の身体。

しかし……



「あははは! 頭抱えて呆れてるクロちゃんとかめっちゃウケるんだけど! 翡翠その眉間の皺ヤバイって! あっははははは!」


「笑ってる場合かよ瑪瑙」



中身は瑪瑙。大爆笑する翡翠も貴重だと思ったのは俺だけだろうか。そして同じく違和感が半端ない。



「わぁ…、主が満面の笑みで大爆笑してる。
主! 普段からこれくらい明るく笑った方が良いですって!」


「誰がするか、てめぇが笑ってろナマズ」



翡翠の近侍、鯰尾兄も同意見だったらしい。
軽くあしらわれているが。

そんなことより、翡翠の中身が瑪瑙ということは…



「ここには大将…、クロはいねぇってことか」


「ふふふ、うん。残念ながら俺も起きたら翡翠になってたんだよねぇ。鏡で連絡とろうにも自分の身体じゃないから使えなくてさ」



瑪瑙曰く、通信で使っている携帯鏡とやらは政府に登録された審神者の身体と霊力でもって機能するものらしい。他人の鏡も普通は扱えるらしいのだが、中身が入れ替わった状態…つまり精神が入れ替わっている状態では霊力にも乱れが生じて通信できなかったようなのだ。



「あの鏡を使うには、精神と肉体が同一人物のものでなければいけないってことか」


「そういうこと。で、ここで待ってりゃ翡翠が俺の身体で戻ってくるかなーって思ってたんだけど、まさか翡翠がクロちゃんの身体に入ってるとは…。くふふっ」


「ったく、益々面倒臭ぇな」


「ちょっと主〜。クロさんの身体にいるんですからもう少し言葉遣い柔らかくしてくださいよ〜」


「知るか」



鯰尾兄を一蹴し、翡翠はまた玄関を出ていく。



「クロネコ探すぞ。ナマズ、お前も来い」


「近侍ですからね! 嫌って言ってもついて行きますよ!」


「そうかよ」


「さて、クロちゃんはどこかな〜。ま、予想はついてるけどね。ねぇ薬研くん?」


「はぁ、やっぱ"あそこ"になるのか」



あまり当たってほしくない予想なんだが、瑪瑙からこんな視線送られちゃあ十中八九"あそこ"にいるってことだろう。


翡翠と瑪瑙がこんな状態になってて、俺たちがこうして会話している間に大将は現れなかった。大将の性格からして彼女も瑪瑙と同じく鏡を使って俺たちに連絡しようとした筈。

鏡が使えない事実に直面したなら次にとる行動は二つに一つ。自分の本丸に戻っているか、元凶を見つけて問い詰めているかだが…。この場にあの騒がしいもう一人が現れないということは、どう考えても後者だろう。










「大将が何もせず本丸に帰るとは思えねぇしな」

「つまり……」

「向かう先は、"あそこ"だよね」


 

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