01



約束をした

幼い頃の約束。
彼は覚えているか分からないけど、私にとっては大切な約束


それを果たすときが きた



◆ アイランド篇 ◆



「…い、……ろ、おい…」

誰かに揺すられ、目を徐々に開いていく。
どうやら机に突っ伏しながら眠っていたようだ。

「おい、起きろ」

先程から声をかけてくれている男を見た。
出会った頃の黒髪とは違い、ピンクの髪に黄色のツナギという派手な格好になった幼なじみ・左右田和一だった。
大丈夫か?と声を掛けながら、ゆっくり揺すってくれていたらしい。
相変わらず優しい幼なじみの顔を眺めながら微笑んだ。

「あ…おはよ、和一くん」

「大丈夫かよ。ちょっと揺すっても起きねーからよォ」

体調でも悪いのかと思ったぜ、と安心したように小さくため息をついた幼なじみに小さく笑った。

「大丈夫だよ?少し眠かっただけ」

心配してくれてありがとう。と優しい幼なじみに伝えると、し、心配なんかしてねーよ!と左右田は吃りながらそっぽを向いた。
幼い頃から変わらない優しさに心が温まる感覚を覚え、顔をほころばせながら春香は周りを見渡した。

皆集まっていたようで、何故教室に集まっているのか、ここからどうやって出るかを話し合っていた。
さて、どうしたものか…と話し合いに参加すべく、椅子から立ち上がると、教壇の奥からピリついた雰囲気に合わない声が響いた。

「はーい!ミナサンお集まり頂けたみたいでちゅね!それじゃあ始めまちょうか!」

出てきたのはウサミと名乗る動くぬいぐるみだった。
この教室の先生だと言い張り、教室にいた人達は困惑している。
どうやら“ 修学旅行 ”をするために、この教室に集まったようだ。
ウサミの出発の合図と共に、教室が舞台のセットのように崩れ落ち、目の前に広がるのは青い海に白い砂浜。照りつける太陽の日差し。果てしなく広がる青空。

…なぜ教室の外が海?と首を傾げながら、ウサミが他の学生たちに説明をしているのを横目に辺りを観察した。
まるで南の島のような場所だ。ハイビスカスと思しき花も咲いている。

夜になれば星空が綺麗に見えるんだろうなぁと思いながら、春香はウサミたちの話を聞くことにした。
推測通りここは島で、無人島のようだ。
そしてこの修学旅行は、平和でほのぼのと希望を育て合うことを課題としているらしい。
果たして、そう上手くいくのかな…と一抹の不安を感じた春香は、ずっと隣にいた左右田のツナギの袖部分を軽く摘み、話しかけた。


「んーなんだかすごいことになっちゃったねぇ」

「いや、なんで春香は落ち着いてられるんだよ。普通困惑するだろ」

「びっくりしすぎて何も言えないだけだよー」


顔色を悪くしている左右田にへらりと笑った。


「きっと大丈夫!なんとかなるよ……たぶん」

「たぶんなのかよ!」

「だって分からないじゃん?その時にならないとさ。なるようになるよー」


そう。希望さえ忘れなければ。
『どっきどき修学旅行』の始まりに、春香は小さくため息をついた。


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