04



無事、消臭が終わった左右田と合流し、他のクラスメイトを探しに行くことになった。
田中、澪田、辺古山と順に合流し、次は狛枝を探すようだ。


「確かこの辺りなんだけど…」


雪染が手帳を開きながら歩いている。
なかなか狛枝が見つからず、左右田がガードレールに座り込みながら、アイツと絡むとろくな事がないんだよなぁと頭をかいていた。
そんな左右田に、春香は危ないよ、と注意しようとした矢先、トラックが突っ込みそうになっていた。


「和一くん!!!!」


「おわっ!」


春香は持っていた日傘を放り投げ、左右田をガードレールの内側に避難させるため、左右田の腕を急ぎ引き寄せた。
急に腕を引いたため、よろめいた左右田をぎゅっと抱きとめる。
間一髪トラックに轢かれることはなかったようだ。
ほっと安堵の溜息を零すと左右田から少し離れ、怪我がなかった確認した。


「和一くん、怪我はない?」


「あ、あぁ…サンキュ…」


「よかったぁ」


春香は胸をなでおろし、危ないでしょ!と軽く注意をした。
しかし、当の左右田は目線を合わせようとせず、あぁ、すまん…と自分の胸に手を当てながら答えている。
本当にわかっているのだろうか。
むすっとしていると、遠くの方から雪染が大丈夫ー?と声をかけていた。
大丈夫でーす!と声を張り上げ、放り投げた日傘を拾いみんなの方へ向かった。


この時、未だ胸に手を当てて固まっている左右田に、九頭龍が白い目で見ていたことを春香は知らない。


▼▽▼

無事狛枝を見つけ、一同は教室に戻ることになった。
残る生徒は2人。雪染は残りの生徒を探しに行くと言い、教室の清掃を命じて出ていった。
確かにまともに教室の清掃を行っていなかったので、埃が溜まっている。
始めるか、と立ち上がると罪木がバケツに入った水をぶちまけながら盛大に転んでいた。


「ふえぇ…」


「蜜柑ちゃん、大丈夫?頭打たなかった?」


罪木を起こし、使用していないタオルを渡した。
彼女のドジっ子スキルはカンストしてるなぁと苦笑しながら、今にも泣き出しそうな罪木の頭を撫でた。


「天霧さん…ご、ごめんなさぁい…」


「いーよいーよ。ゆっくりやろ?」


「天霧さぁん…!」


うえええん、と泣き出してしまった罪木をよしよしと慰め、清掃に取り掛かった。
皆やる気を出したのか、思いのほか早く終わりそうだ。
黙々と清掃を続けると、雪染が帰ってくる頃にはピカピカの教室に戻っていた。


「よしよし。みんなちゃんと待ってたわね!すごいじゃない!青春の始まりに相応しいわ!」


雪染が褒めると、澪田は鼻高々としており、狛枝も掃除は得意だと笑っていた。
明日からもこの調子よ、と雪染が嬉しそうに言う。
すると、一部の生徒が不満の意を表した。
春香は両手で頬杖をつきながら、やっぱりか、と困ったように笑った。
やはり、才能さえあれば授業を受ける受けないは自由と皆思っていたようだ。
すると、雪染は腕を組みながら、確かに、学校の決まりではそうなっているけど…と話し始めた。


「人生は才能だけじゃないわ。人との関わりが人格を磨き、思い出を作るのよ。才能より素晴らしい、みんなの希望を輝かせましょう」


折角の学園生活なのに、もったいない。そう感じていた春香にとって、雪染が話した言葉は、まさにその通りだ。と思える内容だった。
雪染ちさ。すごい先生がきたなぁ…と春香は窓の外を眺めながら、これからの事を考え微笑んだ。


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