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ずっと2人だった。
トランクスくんと私を養うために、この世界でずっと働き続けるブルマさんはいつだって時間に追われている。つかの間の休息に私たちと晩御飯を共にして、すぐに席を立つ。いくつも歳が離れている、ブルマさんの友人であるチチさんの息子だという悟飯さんは、たまにトランクスくんを連れて戦場に足を運ぶ。
それが私にとって不快極まりなかった。いつだって口には出せないけれど。トランクスくんの中では、きっと傷付いてでも私たちの住むこの世界を守りたかったのね。最終的にあなたさえ生きていてくれるのなら、と私は何も言わなかった。
____悟飯さんが亡くなった。やはりと言うべきか、死因は人造人間の手によって、だった。
私たちは、そうやって生きてきた。きっとこれからも、ずっと、そっと、こうやって。爆破音で騒がしい外をシャットダウンして、ずっと2人で。
私たちの住むこの地球には、破壊を娯楽として楽しむ諸悪の根源・人造人間が誰にも止められないまま、二人も野放しにされているのだ。今はまだ彼らに脅かされる毎日だが、それでもきっといつかはこの地獄から抜け出せる日が来るはずだと、そうやって僅かな期待を胸に生きてきた。
そんな日々も呆気なく終わってしまうが。
日々危険と隣り合わせである私たちは、悠長にもしていられなかったのだ。トランクスくんと二人で下町まで出掛けている時だった。気も気配も持たない人造人間がぬるりと私たちの背後をとって、トランクスくんの命を奪ってしまったのは大層なことのように思えて、されど簡単にやってのけてしまった。
その時の私はと言うと、情けなくも恐怖で心は蝕まれ、パニックを起こした脳は何も考えられずにトランクスくんの後ろで頭を抱えて蹲るしか出来なかった。
騒ぐだけ騒いで大暴れした二人は、やって来る時と同様に去る時も気まぐれだった。ひとしきり楽しんだあとはパッと人が変わったようにやる気を削いでどこかへ飛んでいく。
擦り傷が多くて体の節々が痛む。ひとまず命は助かった、と小さく息を吐いた時、ずっと私に影を作っていた何かが音を立てて崩れ落ちた。ハッとして顔を上げると、目の前にはボロボロになったトランクスくんが横たわっている。何もかもが信じられなくて、サイヤ人なんだからこんなのじゃ死なないんだよね、と現実を受け入れることを拒んだ脳が独りでにベラベラと仮説を語り始めた。
「……ぁ、え、トランクス、くん」
声をかけた。お家に帰りましょう、傷の手当をしなくっちゃ。体を揺すった。どうしたの、立てないの?
どうしよう、どうしよう、と重量のある彼の巨躯を必死に持ち上げた。腹部に穴が空いていたので、慌てて止血しようとした。
「メルさん。俺は、」
「……この広い世界で、俺の短い人生で、あなたと出会えて本当に……本当に、よかった」
呪い。そうだ、呪いだ。
あなたの言葉を表現するなら、これが相応なのだろう。
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