「くそッ!! 強ェ!!」 「こんなんじゃ全くもって手出し出来ねぇよ!!!!」 “なまえが白ひげ海賊団の元に身を寄せている”などといった情報が一体いつ、どこで出回る事となったのか。 おかげで来る日も来る日も。 白ひげ海賊団の元には無謀な戦いをけしかけてくる海賊達が後をたたず、そしてなまえ本人もまた、その苛立ちをぶつけるかのように隠れては戦いに混じり、ストレスを発散させているといった事が続いていたとある日の事。 「なまえ捕まえた!」 「!」 掴まれた腕になまえが振り向くと、そこには白ひげ海賊団の12番隊長であるハルタの姿があった。 「捕まえたから、今日は一緒に夕飯だね!!」 「…わかった」 ハルタの声になまえはコクリと頷くと、大人しくハルタの後に続いて食堂に足を踏み入れる。 「おぉ──── !!なまえじゃねェか!」 「久しぶりだなぁなまえ!!」 「相変わらず細っこいなお前は!ちゃんと飯食ってんのか? ほら、こっち来て肉食え肉!!」 なまえが入ってきた途端ワアァ─── !と大きな歓声が上がり、食堂は一気に歓迎ムードに沸いた。 なまえは戸惑うようにそれに反応しながらも、微かに笑ってその輪の中へと入っていく。 「グラララ!!なまえのヤツ、前よりか幾分あいつらと打ち解けてきたようじゃねぇか」 「違いないねェ」 それを見て酒を手に嬉しそうな笑い声を上げる白ひげに、隣にいるマルコもまたつられて笑いながらなまえを見た。 出会った最初の頃は兎にも角にも手がつけられず、大怪我を負ったままでもところ構わず切りつけようとしてくるもんだから、その怪我を完治させるまでは仕方なく縛り付けたり、動きを封じたりしなければならなかった事もしばしばで。 それなのに怪我が治ったら治ったで今度は船を飛び出すか、“能力”を使って島へと逃げ出して行くかするもんだから、正直本当に彼女には手を焼いたものだった。 「まァ、あの頃はまだあいつも“空間エネルギーの切断”だけは上手く使いこなせてなかったみてェだから、それが幸いっちゃ幸いだったけどなァ」 「ほんとだよい。もしあの頃からなまえがその能力を上手く扱えでもしてたら、この島ではもはや見つけられてなかったろうからねェ…」 初めてなまえと出会った日から早くも2年の月日が経ち、近頃はようやくなまえも少しずつ自分達白ひげ海賊団という存在にも慣れてきたように思う。 …とはいってもまださすがに1日をこの船内で過ごすという事はないが、2〜3日に1回、良い時で1日1回は必ず(能力を使って)顔を見せてくれるようにもなったのだ。 そして自分の事を狙う海賊達がこの船を襲撃しに来た時は必ず隠れて参加し、撃退するその一端も担っているようで… その際に船員の誰かがなまえの存在に気付き、先ほどのハルタのようにその袖を引けば彼女もそれを拒むことはせず、きちんと食事を食べるようにまでなったのだから、たいした進歩ではないか。 ─── そして、この日。 「エド……」 彼女は何かを決意したような瞳で白ひげを見つめた後その名を呼び、招かれた船長室でようやく自身の身に起きた全ての出来事を白ひげと、マルコ達数名の隊長達に告白したのだった。 ページ: |