暴走したチョロ松兄さんの後を追いかけ、駅の改札を抜けてなまえちゃんが働いているビルまでの道のりを必死に走る。チョロ松兄さんはあれで昔から足が速く、自分じゃ言わないけど、足の速さだけなら十四松兄さんよりも上だ。そんな俊足バカに僕がついて行けるはずもなく、正直今にも見失いそうだし、肺なんかは既に悲鳴をあげている。

「…っあいつ!」

遥か前方を走っていたチョロ松兄さんが、なにやらかを叫んだ。と思ったときにはもう既にチョロ松兄さんは更に加速していて、なにかに真っ直ぐ向かっているようだった。あいつのどこにそんな力や体力があるというのだろうか。僕だってジムに通っているはずなのに。
ちょっとした悔しさに気を取られていたけれど、僕の視界にもチョロ松兄さんの向かった先が見えてしまった。あっ、これは止めないとまずい。

「チョロ松兄さーんっ!!」

叫んだってもう遅い。届いたかどうかも分からない僕の叫び声より先に、チョロ松兄さんは長い長い助走をつけて、ビルの前に居た男を殴り飛ばしていた。
問題事に巻き込まれるのは御免だと常々思っている僕でも、さすがにこれは止めてやらなきゃまずいと最後の力を振り絞って、倒れた男と興奮した兄のもとへ足を急がせた。

「っはぁ、はあっ!ちょっと!チョロ松兄さん落ち着いて!!」
「ええコルァ!!アアアン!?コルアアアアああん!?」
「せめて人語を喋って!!」

さわやかジャスティスな梅竹さんの胸倉を掴みあげて、ヤクザ顔負けの凄みを見せるチョロ松兄さんを、なんとか後ろから羽交い締めにする。普段地下ドルを追いかけてるだけなのにすげぇ力強いんだけど!!どっから出てくんのその力!?

「すみません、梅竹さん…で合ってますよね?今、兄が興奮していて…」
「離せェ!!トド松!!俺ァこのクズをぶん殴るんだよ!!」
「いやもうぶん殴った後だし、クズはお前だよ!!」

目を白黒させて頬を押さえた梅竹という男は、ゆっくりと立ち上がりながら僕らを見る。まだ僕らの想像の(どころか妄想に近い)域を出ない疑いを掛けられて、出会い頭に思いきりぶん殴られたというのに、彼は怒りすら露わにしない。事と次第によってはボコボコにしてやるつもりではいるけれど、この人が本当になまえちゃんの携帯を盗んだ犯人なのだろうか?あまり早合点して警察のお世話にもなりたくないし、それに、男であるこの人が、わざわざなまえちゃんの振りをして僕とデートの約束をする理由も分からない。

「あ、えっと…え?みょうじさんの彼氏って双子さん…?」
「今突っ込むべきはそこじゃないと思うんだ…!!」

なんだこいつ、天然なの?!

「てめぇがなまえの携帯盗んで他人の女寝取ろうとしてるストーカーサイコパスだってことは分かってんだよ!!!」
「ええ?!あ、いや、というか、ここじゃ場所が悪いので、移動しませんか?」
「上等だゴルァ!!表出ろや!!」
「いえ、既に外ですので中に入りましょう」

梅竹さんに連れられ、僕らはビル一階の奥にある非常階段横のスペースで話し合うことになった。未だ僕はチョロ松兄さんをいつでも止められるように身構えている。でも正直止められる気がしないし、怪我は絶対にしたくない。

「ここなら多分人も来ないと思います」
「分かった、ボコボコにしてやるよ」
「落ち着け単細胞松兄さん。少しは話を聞こうよ」
「その…さっきの話ですけど、携帯を盗んだとかなんとか…僕はみょうじさんの携帯を盗んだりはしていませんよ。なぜそのような疑いを…」
「はああ?しらばっくれんじゃねぇよ!!ネタァ上がってんだよ!!」
「ちょ、な、なんのネタですか!?」

目の前の男より身長が低いくせに、胸倉を掴みあげるチョロ松兄さん。就活にもそれくらいの気持ちで臨めばいいのに。いや、面接官を締めあげるのはいくないな。

「ぼっ僕はただ!みょうじさんと仲良くなりたくて…っ!」
「仲良くだァ?!ふざけんな!!」
「ほ、本当ですって!彼氏の居る子に手を出したりはしませんし!本当にただ、お友達になりたくて…!それで、昨日の夜も「昨日の夜ゥ?!」…っあ!いや、なんでも!」
「てめぇ…ッ!なまえになにしやがった!!なまえは無事なんだろうな?!嘘つくとドタマかち割んぞコルァ!!」
「ヒィ!!あっいやっ!僕はッ」
「正直に吐きやがれ!!その上で殺してやる…!!」
「ちっ違う!違うんです!!ぼ、僕は…僕は女装家なんです…ッ!!」

怪我はしたくないなと傍観を決め込んでいたのだけど、その僕ですら聞き流せない発言が今この場を駆け抜けた。
僕らの時間が息を合わせて止まったように感じる。今この人なんて?

「僕っ、女装してる貴方とみょうじさんのプリクラを見たことがあって…っそ、それでっ、みょうじさんなら僕の趣味を分かって、友達になってくれるんじゃないかって…っだ、だから!昨日の夜にそのことを打ち明けて、女装姿を見てもらったんです!!本当にそれだけで、やましいことはなにもしてないんです…!!」

あ、チョロ松兄さんの手から力が抜けた。
梅竹さんの胸倉から離れたチョロ松兄さんの手は、所在無さげに宙に浮いている。数歩下がって距離を取る兄さんに、今度は梅竹さんが食い下がってきた。

「しょ、証拠が必要であれば、昨日のみょうじさんと撮った写真があるので…っ」
「アッイヤ!大丈夫です!!」
「で、でもっ」
「信じますすみませんでした!!」

全身で拒否を示す兄さんと、食い寄る梅竹さん。形勢逆転とはこのことだろうか。一般的な男なら誰だって、自分より体格の良い男の女装姿など見たくはないだろう。必死な彼に嘘をついている様子はない。というか突きつけられたスマホの画面がちらっと見えたので、事実確認は出来たと思う。目の前で見せられたチョロ松兄さんの顔面は蒼白だ。

「…じゃあ、なまえちゃんのスマホを盗んだのって誰なの?」

疑問はそこに戻る。
殴られ損のはずの梅竹さんが、なにか考える素振りを見せて、思い立ったように顔を上げた。

「関係あるか分かりませんが…、一昨日の夜にみょうじさんから連絡があったんですけど」

その日だと、その連絡はスマホを盗んだ犯人からのものだ。

「明日の朝に駅前で待ち合わせて一緒に出社しましょう。って、でも実際に駅前で待っていたら、みょうじさんじゃなくて、彼女と同じ課の女性が来て…、みょうじさんは連絡を忘れてるだろうから私と一緒に行きましょうと…。そういえば、プリクラもあの女性に見せてもらったと思います」
「それって…」
「ああ、理由は分からないけど、その女がなまえのスマホを盗んだんだな。すみません、梅竹さん、その女性って今会えますか? 」

チョロ松兄さんも平静を取り戻したらしい。若干距離を取ってはいるが、梅竹さん相手にも普通に話せるようになっている。

「ええと、このビルの三階に居ると思いますけど、もう定時を過ぎているので、社内に居るかどうか…」
「じゃあとりあえずなまえちゃんに連絡してみようよ、なにか聞けるかもしれないし」

僕がスマホを取り出すと、チョロ松兄さんが僅かに表情を歪めた。いくらなにを言ったところで、なまえちゃんと直接会うのはやはり抵抗があるのだろう。早く腹を決めてしまえばいいのに。

「ねぇチョロ松兄さん、きちんと会ってちゃんと謝るんでしょ?」
「そりゃ…そう、だけど…」
「今時五歳児でもちゃんと謝るよ?」
「………」
「確かに、あれは僕もひどいと思いましたよ。女性目線で言わせてもらえば、普通なら縁を切られてもおかしくないと思いますよ?」
「すみませんが、女性目線の意見はやめてもらっていいですか」
「え?チョロ松とトド松・・・?」
「「え?」」

すぐ横の非常階段を見上げると、そこにスカートスーツ姿のなまえちゃん。それからもう一人、同じようにスーツを着た女性がなまえちゃんの隣に立ってこちらを見下ろしていた。

「あっ、あの女性ですよ。僕が言っていた人って」

梅竹さんがこっそりと耳打ちしてくれる。どうやら今なまえちゃんと居る女の人が、件の女性らしい。上背もあって綺麗な人だ。どうしてあんな綺麗な人がなまえちゃんの携帯を盗むのだろうか?いやそんなことよりなまえちゃんのスーツ姿えろくないか?なんでスーツのスカートってあんなにタイトなんだろう。後ろに入ったスリットも誘ってんのかってくらいえろいよね。ビリッて破りたい。ああ破りたい。総評的になまえちゃんがえろい。

「どうして?なにしてるの?梅竹さんまで?…っていうか、えっ!?梅竹さん、どうしたんですか!?その頬の怪我…!!もしかして、チョロ松…っ?!」
「あ、いや、これは…っ、大丈夫ですから!」

なぜか梅竹さんが焦って弁明し始める。こいつ、心底いい奴だな。
そしてさっきから黙ったままのチョロ松兄さん。こいつは心底クズだ。

「みょうじさんの彼氏って双子だったの?」

声まで美人なその女性は、僕らを見比べて驚いた顔をしている。まぁ僕とシコ松兄さんを間違えてLINEするくらいだ、僕らのことは一切知らなかったのだろう。でもなんでこの人がなまえちゃんの携帯を盗んで、僕とLINEしたり、梅竹さんにLINEしたりする必要があるのだろうか。未だに動機が分からない。

「…先輩、行きましょう。早く行かないとお店混んじゃいます」
「あら、彼らはいいの?」
「ええ、まぁ…」

なまえちゃんが複雑な表情で下唇を噛む。チョロ松兄さんはなまえちゃんを見上げたまま黙り込んでいるし、ここは僕が助け舟を出してやらないと駄目かな。まったくクソも根性の無いどクズ三男だ。仕方なく、口を開こうとした

「なまえ」

僕が口を開く前に、切羽詰った声が非常階段しかないこの空間に響いた。それほど大きな声ではなかったけれど、それは僕らが黙るには充分な声量だった。

「ごめん」

チョロ松兄さんが見せたのは、どこで鍛え上げられたのか、見事なまでに綺麗な土下座だった。階上に居るなまえちゃんに向け、一心に頭を床に擦りつけている。とりあえず写真を撮った。ついでにムービーも起動。カシャッの後の、ピコン、というデジタル音は場の雰囲気を壊している自覚はあったが、無意識で行動していたので許してほしい。それに僕のこの一連の動作に目を向けて来たのは怪訝顔の梅竹さんだけだった。あとでマツッターにツイートしとこう。

「言葉が、見つからない」

悲痛な声はやけに響く。見上げると、なまえちゃんが訝しむような驚いたような、そんな複雑な表情でチョロ松兄さんを見下ろしている。
やれやれ、仕方ない僕も加勢してあげようか。でもこれでなまえちゃんに嫌われたらマジで三男殺す。

「なまえちゃん、チョロ松兄さんも本気で反省してるし、話くらい聞いてあげてもらえないかな…?」
「みょうじさん、僕からもお願いするよ。彼の話を聞いてあげたほうがいい」

なんで梅竹さんまで加勢してるのかは謎だが、なまえちゃんの瞳が目に見えて揺れたので結果オーライだ。根本的になまえちゃんは優しくて流されやすい性格だから、あとはチョロ松兄さんの謝り方次第だと思う。

「うるせえな」

でも、この空間に落とされたのは僕らの望んだ言葉ではなかった。

「大の男が三人も集まって、なまえなまえみょうじさんって情けない。滑稽を通り越してイライラしてくるわ、本当」
「……先輩?」

なまえちゃんの隣に居た女が、綺麗な顔をイラつきに歪ませて僕らを睨み下ろす。なまえちゃんも戸惑った表情で隣を見ている。急に豹変した彼女に誰もが戸惑う中、彼女は俯くように盛大な溜め息をついた。

「どうしてかしら…みょうじさんってなんで人を引き寄せるのかな?部長にも気に入られて、男性社員にちやほやされて、彼氏まで作って?私の立場はどうなるの?私のほうが美人でしょ?みょうじさんなんてどこにでも居る顔じゃない、スタイルだって平凡。私がどれだけ苦労してこのプロポーションを保ってると思うの?本当、嫌になるわよね。見る目のない男も、へらへらしてるだけでちやほやされてる、アンタも」

驚愕と恐怖と困惑に混乱している様子のなまえちゃんに、その女が近づいた。危ない、と足を踏み出したときにはもう既に

「目障り」

十数段上の踊り場から、なまえちゃんのもつれた足が離れる。こんなときに僕は体が震えただけで、動けなかった。
女に押されたなまえちゃんが、まるで人形のように階段を落ちようとしている。なんで映像はスローモーションに捉えられるのに、体は動かないんだ。いや、僕もスローモーションで動いていたのかもしれない。踏み出していた足が床についたとき、世界が激流のように動き出した。
落ちてくるなまえちゃんを、階段を駆け上がったチョロ松兄さんが抱きとめるのが視界に映る。なまえちゃんをしっかりと抱きとめたチョロ松兄さんの背中が、宙に浮いたままこちらに落ちて来た。僕が動いたのと同時に隣の梅竹さんも動いていた。二人で上階から落ちてきたチョロ松兄さんの背中を抱きとめたが、男二人の力でもかなり後ろによろめいて、僕らは尻餅をついてしまった。なまえちゃんを抱きとめたチョロ松兄さんは階段に足を取られないよう後ろに飛び上がったのだろう、僕らを信じてか、それとも死んでも自分だけだと思ったのか、けれどその判断は正しかったと思う。おかげで、衝撃はあったものの僕らはみんな無事だ。もしなまえちゃんが一人のときに階段から突き落とされていたらと思うと、恐ろしくて仕方ない。

「なまえちゃん大丈夫!?」
「……っ、」

呆然とまだ混乱した表情を浮かべてはいるけれど、見たところ体は無事みたいだ。チョロ松兄さんの腕の中で震えるなまえちゃんを見て、ふつふつとしていた怒りが一気に脳天を貫いた。

「仲良しこよしね、ムカつく」

鼻で笑った女を見上げて、立ち上がる。梅竹さんの腕を掴んで一緒に来るように促した。

「っざけんな…、こンの…ックソアマぁあ!!!」

なまえちゃんの前でこんな声を出すことになるなんて、今までもこれからもこんなところ見せたくなかったのに。本当、どう落とし前つけてくれるのかな、お姉さんは。
僕と梅竹さんが階段を駆け上がると、当然女も逃げ出した。定時を過ぎていることが幸いして、ビルの廊下で鬼ごっこをする僕らを見ている者は誰も居ないようだ。スカートとヒールで走る女は勿論すぐに捕まって、暴れる彼女の上品なネイルで腕も顔も引っかかれてしまった。普通に痛いけれど、今はそんなことも気にならない。
男二人で女一人を取り押さえる様は、傍から見れば僕らが暴漢や悪漢にでも見えたことだろう。本当に人が居なくてよかった。今日はノー残業デーなのかな。
女を取り押さえるのを梅竹さんに任せて、僕は彼女の目の前に回り、彼女を見下ろした。

「なによ…っ!!結果的に助かったんだからいいじゃない!!ちょっと脅かしてやろうとしただけでしょう!?」

取り押さえられても、なおも喚く女。最初は綺麗だと思っていた声も、キンキンと耳障りな雑音にしか聞こえない。こいつ、自分がなにをしたか分かってないらしい。

「なまえちゃんのスマホを盗んで、勝手にLINEしてたのってキミ?」
「なに?ちょっと借りただけでしょ?あの女にちやほやしてる男が私を見ればすぐ私に乗り換えるはずよ。ねぇ、貴方だって、あんなのが彼女じゃ満足しないでしょう?私ならもっと満足させられるわ」

せっかくの美人なのに、どういう人生を歩んだらこんなにも心が歪んでしまうのだろう。無意識に眉間に力が入って、少し不本意だけど睨むような顔つきになってしまう。けれど僕がいくら睨み下ろしたところで、女は自慢の顔で綺麗な笑みを作るだけだった。胸糞の悪い顔だ。

「じゃあ、君は妬みや嫉みからなまえちゃんのスマホを盗んで、男を奪うために勝手になまえちゃんのLINEを利用したんだね。…それで、チョロ松兄さんとなまえちゃんのキスシーンを見て逆上してスマホを破壊、LINEの履歴がバレないようにアカウント消したってところかな?」

僕がなにを言っても、女は笑うだけ。多分僕の推測は当たっているのだろう。なまえちゃんのアカウントを消したってことは、自分の携帯にIDとかを控えてたってことかな。感情的に動いているのかと思えば、理性的な行動も見せる。この類の人間が一番怖いことは、なにと比べなくても明白だ。きっと、なまえちゃんが階段から落ちて死んだとしても、こいつは罪の意識すら感じないだろう。恐らくこの人は、今までも同じようなことをしてきたに違いない。それは予想ではなく確信だった。
こんな美人を相手に、僕は感じたこともない殺意で内臓がぐたぐたと煮えくり返っている。あーあ、勿体無い。こんなに綺麗な顔と抜群のスタイルなら、今までもこれからも人生はイージーモードだっただろうに。僕らだって、どんな悪女だろうとこの見た目なら許していたと思う。彼女のミスなんて、ただひとつ。なまえちゃんを妬んだこと。でも、それだけで充分だ。

「ボク、暴力って嫌いなんだ、自分の手や足が痛くなるのは御免だし、兄さんたちみたいに喧嘩にも慣れてない」「ボクの武器なんて沢山のフォロワーや友達が居て、普段から人当たりを良くしてるから人望もあることくらいかな?」
「でも、それだけで出来ることって結構いっぱいあるんだよねぇ」
「ネット社会って怖いよね、君も気をつけないと、誰かがうっかり君の写真を撮って」

カシャッ

「誰かがそれをうっかりいろんな人が見る掲示板に載せて、君がしたことや君が発言してた内容なんかを載せちゃったりして」
「そして誰かがうっかりそのアドレスをツイートなんかしちゃって、そうだなぁ、ボクの友達も被害に遭ったとか、それからハッシュタグもちゃんとつけてたとしようか」
「そうしたら、君の今までの被害者が出て来て同じようにツイートして、拡散されて、嘘でも釣りでもなく本当のことだと世間に広まる。実際は嘘でも釣りでもいいんだ、やってないことだって付加されて広まるだろうね?君みたいな美人なら尚更かもなぁ」

「そうしたら、きっと外を歩くのすら躊躇しちゃうくらい面白いことになるよ」

操作の終わったスマホを口元にあてて、にっこり笑って見せる。よくあざといなんて言われちゃうけど、可愛く笑うことのなにがいけないのかな?
女の顔に、先程までの笑みは無い。そんな顔でも美人は美人だ。それも忘れられないくらいの綺麗な顔。モデルにでもなっていれば良かったのにね。これからこの綺麗な顔を見られなくなると思うと、ほんのちょっぴり残念かもしれない。ああでも、なまえちゃんを階段から突き落としたことを思えば全然残念じゃないや。

「あ、最後にひとつだけ訂正」


彼女の彼氏はボクじゃない
言わせんな、クソヤロウ
(2016.08.08)


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