仕事から帰宅後、お風呂から出て居間でテレビを観ていたらついうとうとして、気がついたら眠っていたらしい。起きたら体が温かくて、状況把握に少し時間が掛かった。
「お目覚めかい?ハニー」
「とりあえず離してもらっていいかな」
後ろからすっぽり私を抱き込んでいるカラ松の鳩尾に肘鉄を入れると、変な声をあげながら解放してくれた。座り心地の悪い足の上から立って、少し油断しすぎたなと思いながら寝室へと向かう。さて寝直そうかと布団に入ったら、あとからカラ松が布団に潜り込んできた。なに考えてんだこいつ。
「熱いんだけど」
「ああ、分かるか?なまえを想うオレの燃える心が」
「そういうの良いから」
「一人で寝るのは寂しいだろう?」
「いや大丈夫」
「オレが!!」
「帰れ」
やだやだ一緒に寝るんだい!と駄々っ子を始めたカラ松が足を絡めて更に密着してくる。これ以上なにか言うと面倒が増えそうで溜め息をついた。
「体の動く余裕がないと寝難くて仕方ないんだけど」
「?ああ」
「いやなんで分からないんだよ、離せって話をしたんだよ」
「嫌だ!オレの溢れる愛を伝えながら眠りにつきたい!」
「身勝手な睡眠妨害をするな」
「なまえもオレに抱きつけば良いんだ、腕の中で縮こまるから動きにくいと感じるんだろう?さぁ遠慮することはない」
やっぱり面倒が増えた。
スマホで時間を見ると深夜一時。さすがに寝ないと明日がきつい。観念した私は、カラ松の絡みついてくる足を蹴飛ばしてぐるりと方向転換。カラ松に背中を向け丸くなって眠ることにした。結局背中から抱き込まれるわけだが、今はもう眠りを優先させようと思う。
夢を見た。
とてもリアルな夢で、夢の中の私は様々な感情に振り回され、心身ともに疲れ果てていた。目が開いたときも、これが夢の続きなのか現実なのか、分からないくらいにはリアルな夢だった。体の疲れも夢の中から引き摺っていて、寝て起きたというのにこの倦怠感。あー会社休みたい。
幸いなのは、その夢の内容を一切憶えていないことだ。起きたあとにまで夢の内容に悩まされることがなくて良かった。
「おはようハニー!今日もサンシャインが気持ちいいファンタスティックデイだぜ」
無理くり体を起こしてぐらぐらしていたら、寝室のドアを開けてカラ松が顔を出した。私より早く起きてるなんて、何事だろうか。
「ブレックファーストにしないか?今日はカラ松スペシャルだぜぇ?」
「おーいえー…」
とりあえず起きる、起きよう。会社行きたくない休みたい。ぐらぐら考えていても仕方ないから、頭を起こすためにも朝ご飯を食べよう。
居間に下りると、テーブルの上には所狭しと肉料理が並んでいた。朝のラインナップじゃないんだが。
「ステーキ…」
「焼き加減に拘ったんだ、絶品だぞ!」
「…………」
「んー?どうしたんだマイリル?可愛い眉間に皺なんか寄せて」
カラ松をじっと見てみるも、きょとんと首を傾げられた。悪気は無いみたいだ。
テーブルに並ぶ肉料理、怠い体、回らない脳みそ、そうだ会社を休もう。
すぐさま会社に連絡を入れ、有給休暇をもぎ取った。不良社会人だという自覚はあるが、たまにはこんなのもいいじゃないか。
「よし、じゃあ食べようかな」
「ああ!冷めないうちにいっぱい食べてくれ!」
「カラ松も食べてね。私一人じゃ食べ切れないから」
「分かった!残ったらオレに任せておけ!」
胸を張るカラ松に少し笑ってしまう。六つ子の良いところだけ集めて一人に集約してくれないかな、そしたら私も日々平穏に暮らせるのに。
うっぷ、食べ過ぎた