会社をずる休みして気がついた。これはこれで心許ない。やっぱ行けば良かったなーと昼頃になると顕著に思わされる。

「よぉなまえー!」
「ヒヒッ、遊びに来てあげたよ」

しかし都合良く現れるこいつらがニートだと思うと、働かなくても生きていけるのっていいなと思ってしまう。

「今日は新台回して来たんだけど、もう負けに負けたの!!なまえ〜っお兄ちゃんを慰めてよぉ」
「自業自得」
「なまえちゃん暇そうだね、猫触る?」
「えっ、触る」

床をごろごろ転がるおそ松を放置して、一松が連れて来た猫を好きなだけ撫で回す。毛物ってどうしてこう可愛いかなぁ、飢えすぎるとラビットファーでも可愛がれるもんね。あー可愛い。

「お、おれのことも撫でて良いんだよ…」
「アッ間に合ってます」
「ッチィ…!!」
「ねぇ、一松の猫耳はどうやって出してるの?それちゃんとくっついてるモノなの?」

試しに一松の猫耳を触って、付け根を探ってみる。凄い、ちゃんと頭皮にくっついてる。…びっくり人間、いやなにかの研究の実験体とかになれば一松でもお金を稼げるんじゃ…

「なまえちゃん、今不穏なこと考えたよね」
「猫人間はお金になるなとは考えたよ」
「ぼくが体でお金稼いで来たらぼくの童貞貰ってくれるの?」
「いや遠慮する」
「お兄ちゃんも構って!!お兄ちゃんは構ってもらえないと泣くよ!?」
「「うぜえ」」

おそ松が勢いよく突進してきたせいで、大人しく撫でられていた猫は外に逃げてしまった。私の癒しの時間は短かった。

さて、なにもない一日をどう過ごそうかと考えて、やっぱり特にやることないなと結論が出る。近場に出掛けて会社の人に見つかるのも面倒だしな。

「なんか…遊びたいな…」
「野球拳やる!?」
「やらない」
「ちぇー、ノリ悪いなぁ」
「あ、じゃあ質問ゲームしない?」
「「質問ゲーム?」」
「私が質問するから、それに全部正直に答えて」
「なまえちゃん、それって多分尋問って言うんだと思うよ」
「つーかそれ、俺らにメリットあんの?」
「明日つける下着を選ばせてやるよ」
「「よし、やろう」」

というわけで、私は日々の疑問を二人にぶつけてみることにした。完全な暇つぶしだ。下着選択を賭けるくらい今更どうってこともない。

「じゃあまず聞くけど、盗撮と盗聴機器は私の家のどこにあるの?」
「パス」
「パスをパス」
「ええ〜憶えてないよ、そこら中に設置してるし」
「平然と言ってるけど、犯罪だからね?これだけで君らはすぐ有罪だからね?」
「なまえちゃん、大丈夫だよ、温感センサーつけてるから誰かが前を通らないと作動しない」
「なにがどう大丈夫なの?なんでそんな高性能のやつ使ってるの?」
「抜け駆け防止も兼ねてるから、なまえにとっても悪いことじゃないんだよ?防犯もバッチリ」
「うちのセキュリティが六つ子相手にガバガバなのをなんとかしたいんだけど」
「ガバガバとか言うなよ、えっちな気分になっちゃうだろ」
「帰れよ」

やはり人を雇ってでも一度家中の盗撮盗聴機器を浚う必要があるだろうか。ああもう分かってはいたけど初っ端から嫌なこと聞いちゃったなぁ。

「次の質問、なんで私のストーカーになったの?」
「えっ…?すとぉ…かぁ…?」
「分かるよね?自覚あるよね?なんで分からないふりするの?」
「ぼくらはなまえちゃんの安心と安全を守ってあわよくばなまえちゃんとしっぽりしたいだけだよ」
「君らのせいで安心と安全を感じられないんだよ」
「えーじゃあもう結婚する?」
「べつにどの松と結婚しても良いよ、松野姓になったらあとはどうにでも出来るから」
「絶対に松野にはならないよ」
「公式六股出来るんだよ?エロゲだったら主人公血祭りにされるやつだよ?7Pだって出来ちゃうんだよ?!」
「ひとつも羨ましくないし、なんなら全力で拒否する」
「なまえちゃんは強情だなぁ」
「ねー。幸せにしてあげたいって言う男が六人も居るのに贅沢だよ」
「安定した所得のある健全な男性六人なら贅沢にも感じるよ」
「おれらの愛が分からないなら分からせてあげようか?」
「本当に怖いのでヤンデレはNG」

たった二問でどっと疲れたので、質問ゲームはこれでお開きとした。だいたいゲームでもなんでもないし。

「じゃあ次、俺から質問ね〜」
「え、なんで」
「質問ゲームなんだろ?じゃあ俺らにも質問する権利あるでしょ」
「…まぁいいけど」

強制続行です。

「んじゃあ、まずぅ…今日のブラジャーの装飾の色は?」
「え?ん?装飾?」
「胸にリボンとかビーズみたいなのついてない?」
「いや、多分今日のはついてないと思う…そんなに確認してないし」
「え、じゃあ確認してよ」
「えっ?」
「え?だって、これって全部正直に答えるんでしょ?」
「えでも分かんないって言うのは正直な答えじゃ…」
「いいから確認しろっつってんだろ今ここで!!」
「まあまあ一松、落ち着いて。で、どうするなまえ?」
「……うん、普通に嫌だけど?」
「えーーっ!?本当にノリ悪い!!」
「いいから脱げよ!!」

問答無用で二人の頭を畳に叩きつけた。
こんな変態二人を簡単に家に入れるんじゃなかったなぁ。ほっといても勝手に入ってくるんだけども。

「じゃあ次ぼくからね」
「懲りませんね」
「なまえちゃんの性感帯ってどこ?」
「知らない」
「それは、開発しても良いってこと?それとも経験が無いってこと?」
「一松は今後一切私に触らないで」
「なっ…!?」
「ぷふー!一松かわいそ〜!」
「おそ松は私の半径3m以内に近づかないで」
「えー!?なんで?!」
「とりあえず二人とも帰ってくれる?」
「明日つける下着は?!選ばせてくれるんでしょ!?」
「…うっ、ううっ、なまえちゃん…なまえちゃん…」

駄々をこねて叫ぶおそ松と、泣いて縋ってくる一松。あーもう面倒なことになってしまったなぁ。

「分かった分かった、下着は勝手に選んで良いから」
「よっしゃあ!じゃあ公認で下着漁ってくる!!」
「……うん、盗まないでね…」

嬉々としたおそ松が居間を出て行き、一松は未だ嗚咽混じりに泣いている。メンタルが強いのか弱いのか分からない子だ。子供の頃はみんな見分けもつかないくらい同じわんぱく小僧だったのに、いつの間にこんなに差が出てしまったのだろうか。

「ほら、一松、いつまで泣いてるつもり?」
「なまえちゃ…なまえちゃん…ううっ、嫌わないで…」
「嫌ってはないよ」
「ほ、ほんとに…?でも…、触るなって…」
「あー…うん、一松が行き過ぎたセクハラしなければ今まで通りでいいよ」
「ううっ、ううぅ、なまえちゃぁん…っ」

情緒不安定な一松の背を撫でながら、私はいったいなにしてるんだろうなんて考えて、考えるだけ無駄だと頭を振った。

「なまえちゃん…」
「んー?」
「…ぎゅってしたい」

拒否する。といつもなら言うところだけど、こんなに泣かれてしまってはそうも言えない。仕方なく無言で腕を広げると、ぱっと花やいだ表情を浮かべた一松が腕の中に飛び込んできた。こうしてる間は可愛いんだけどなぁ。

「ぼく、なまえちゃんの抱き心地大好き…」
「それはどーも」

今だけは胸に頭をぐりぐりしてくるのも許そうじゃないか。一松の頭を撫でると、撫で心地はさっきの猫とそう変わらなかった。撫でている内に猫耳も出現して、規格外に大きい猫と思って撫で回してみる。喉をごろごろと鳴らす一松はとても気持ちよさそうだ。だがどうやって鳴ってるの、それ。
そんな穏やかな時間を壊すのは、大抵赤の男だ。

「なまえーー!!コレ!この赤の総レースのやつ上下セットで!!」
「そんなの買った記憶が無い」
「こんなこともあろうかと俺が買っておいた!!」
「だと思いました」

もう、どうでもいいか。
とりあえずお昼ご飯食べたいな。


そんなこんなで昼下がり


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