好きな人の好きな人
俺は葵ちゃんが逃げられないのをいいことに、毎日葵ちゃんの病室を訪れた。本気で嫌な顔をされたらやめるつもりだったけど、なんだかんだで話し相手になってくれるし、病室に閉じ込められて、葵ちゃんも暇だったんだとも思う。
そんなのが一週間続いたのだが、しかし今日は、葵ちゃんが忽然と姿を消していた。
「あれ?檜佐木副隊長、どうなさったんですか?」
「葵ちゃんは…」
「今日退院しましたけど…連絡、行ってなかったですか?」
聞いていない。
「わかった、ありがとな」
逃げられた。なんだか悔しくて、今日も絶対に会ってやろうと思って総合救護詰所を飛び出した。
こうなったら霊圧探って本気でたどり着いてやろうと思い、めちゃくちゃ集中した。意外と離れていない場所にいるようで、方向が解ったから少しずつ追いかけた。
行き着いたのは、三番隊の隊舎だった。俺の予想が正しければ、吉良に会いに来ているのだろう。
自分の霊圧を完全に消して、二人が居るであろう執務室に近付いた。ここまで来るのに体力も霊力も使って疲れてきたし、腹いせに思いきり扉を開けて驚かせてやろう。
足音も気配も消して、やっとのことで執務室前までたどり着いた。よし、開けてやる、と思ったのだが、「吉良くんの馬鹿!」という葵ちゃんの声が聞こえてきて踏みとどまった。喧嘩か何かだろうか。
「悪いことかい?」
盗み聞きなんてするべきでないが、開けて入るタイミングを逃してしまった。どうしよう。気付かれてないみたいだし、帰ろうか。
「悪いよ!私別に、好きになるつもりなんかなかった!」
「やっぱり好きなんじゃないか。嬉しいよ」
「喜ばないでよ!馬鹿!」
「これでやっと両想いなのに、何が嫌なのか全然解らないな」
「…私じゃ、釣り合わないよ」
「君はもっと自信を持つべきだよ。そんなに可愛いのにそれ以上何を望むんだい?」
「可愛いだけの死神なんて価値無いよ…」
「僕は神谷さんのこと、可愛いだけだなんて過小評価しないけどね」
これ以上、聞いていられなかった。心臓が張り裂けるかと思った。
そうか、葵ちゃんは吉良と両想いになったのか。だったらもっと早くから、好きな奴がいるとでも言ってくれればよかったのに。吉良だって……まぁ、恨んでも仕方がない。俺の力不足でしかなかった。
「…やけ酒でもするか」
隊の奴でも捕まえて、明日のことなんて考えずに飲み明かしてやろう。
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