君がいるだけで


謝りに行こう、と思いつつ一週間、編集室にほとんどこもりっぱなしで仕事をしていて、まだ葵ちゃんには会えていなかった。

「檜佐木副隊長…徹夜続きですし、1度帰って寝てきていいですよ?」
「いや、でも…」
「副隊長に倒れられたら困るんすよ!」

部下たちの優しい思いやりにより、俺は寝ることになった。最近ほんとに仮眠しかとっていなかったからありがたい。
自室に戻り、死んだように深く眠りについた。


何時間が経ったのだろうか。考えようにも頭が回らなくて、とりあえず着替えを持って浴場に向かった。久々にゆっくりと湯に浸かることができて、目も覚めて心も潤った。
仕事に戻る前に飯でも食いに行こう。そう考えながら歩いていたら、誰かの走ってくる足音が聞こえ振り返ると、葵ちゃんがいて心臓が大きく波打った。

「葵ちゃ…」
「申し訳ありませんでした!」
「へっ?」

突然頭を下げて謝られ、変な声が口から漏れる。別に葵ちゃんから謝られるようなことされた覚えはないし、むしろ俺が謝らなきゃいけない方だった。

「冗談で、からかわれているだけだと思って、冷たくしてしまってすみませんでした。あの日…ほんとに、忙しかったんですね。さっき九番隊の方に聞きました。きちんと仕事をしていたのに…それを、あんな風に…すみません」
「いや…俺こそ、ちゃんと仕事片付けるつもりだったのに、間に合わなくてごめん。それに、謝りに行けなくてごめん。今朝…いや、昨日…?や、寝てたから解んないけど、やっと休み貰えてさ…とにかく、あれっきりにしちまって悪かった」
「いえ、私が冷たく返してしまったから、連絡が無くて当然だと思ってました」

葵ちゃんは反省しているようで、そんな思いをさせてしまったことに申し訳無くなってしまった。

「…迷惑でなければ、今から、一緒にご飯、行きませんか。まだ疲れていてゆっくり休みたいのであれば、今日は引き下がりますが」
「いや、行こう。嬉しい。むしろ、葵ちゃんが居てくれた方が疲れがとれる」
「…そうですか」

まさか葵ちゃんの方から誘ってもらえるだなんて。見たか恋次。これが俺の努力の成果だ。

「どこがいい?美味い酒のある店とか、」
「寝不足で疲れてる人がお酒を飲むべきじゃないと思いますよ。普通に、檜佐木副隊長の食べたいものでいいです」
「…、おう、わかった」

今食べたいのは葵ちゃんだよ、なんてことを言ってしまいそうになるが、正直になったらドン引きされるに決まってる。せめてもう少し、好感度をあげてから。

- 6 -

←前次→