青春爆走



「大和田くん、今日も授業でなくていいの?」
「いい」

私がさぼっている時ほとんど大和田くんもさぼって隣にいる。まだ一年生なのにそんなにさぼりグセがついていていいのだろうか。クラスの子達と仲良く過ごした方がいいと思うんだけど。

「授業置いてかれちゃうよ」
「天野先輩もだろ」
「私は勉強得意だから…」
「…まじかよ」

さぼる授業はちゃんと考えてさぼっているし、授業のペースもきちんと把握した上で考えている。しかし大和田くんは、どうなんだろう。何も考えていなさそうだ。

「…つっても、勉強なんかこの学園で関係ねぇんだろ」
「まぁ、そうだけど。でも、せっかく学校来てるんだから、クラスの子達と勉強したり仲良くしたりして青春するのも悪くないと思うよ」
「あぁ?先公みてぇなこと言うんじゃねーよ」
「…ごめん」

こうして私の傍に居ることを、落ち着くからという理由だと言っていたけれど、落ち着くだけじゃなく楽しむのも大事だと思うんだけどな。

「天野先輩」
「ん?」

大和田くんは地べたに座っていたけど、立ち上がって私の真横まで移動してきた。ベンチだから大和田くんの重みで少し軋んだのが伝わってきた。

「先輩だって、さぼってばっかじゃなくてもっと青春した方がいいんじゃねーのか?」
「…私は才能を育むことを青春だと思ってるんで、青春できてるよ」
「じゃあ俺は族の奴等と走り回ってりゃ先輩の言う青春てやつに当てはまるのかよ」
「…」

それもちょっと違うと思う。しかし、黙ってろと言わんばかりに怖い顔で見てくるせいで、キャンバスを見つめたまま絵を描く手さえも止まってしまう。

「なぁ先輩」
「…何」
「…何じゃねぇだろ、呼んでんだからこっち見やがれってんだ」

怖いから、隣に居るような距離で大和田くん見るの苦手なんだけどな。恐る恐る大和田くんの顔を見れば、やっぱり怖い顔、というかいつもより鬼気迫るような怖い顔をしていた。

「俺は…その、天野先輩と、青春してぇんだよ」

怒っているのか照れているのかも解らない真っ赤な顔で、そう言われた。怒鳴らなかったことは褒めたいが、その分顔が怖いのはどうなんだ。

「…勉強教えてほしいの?」

大和田くんの言う青春が何なのか、そんなのはもう解っていた。最初に日寄子ちゃんの言った一目惚れというのが大和田くんの本心なのだろう。だけどそれを受け入れるには、私はまだ大和田くんのことが解らなくて、怖くて、避けることしかできなかった。

「勉強なんざどうでもいいに決まってんだろ!」
「ど、どうでもよくはないよ…」
「うっせぇ!今んな話どうでもいい。俺はただ、付き合ってくれって頼んでんだよ!!」

それが物を頼む態度かよ、って九頭龍くんなら怒るんだろう。しかし私は大和田くんに対して怒れるほどの度胸は無いし、大和田くんと付き合う度胸も無い。

「ど…どこに?」

私にしては最低のかわし方だと思ったけど、好きだと言われたわけじゃないからまだ許される範囲内であってほしい。大和田くんは唖然としたようだけど、やはりダメみたいですぐに表情に怒りが見えた。どう逃げようかと思ったら、ちょうど授業終了のチャイムが鳴り響いた。

「ごめん大和田くん、次の授業前回さぼったやつだから今回は出なきゃ」

さっさと退散するために急いで画材を片付けていたら、途中で急に腕を引かれて体を締め付けられた。いや、抱き締められていた。
ヤンキーだし今までもこんな風に強引に女の子を手にしてきたのかと思うと、身震いがした。でも、男子にこんな扱いをされるのは初めてで、緊張もしたし、恥ずかしくもあり、でも少しだけ、嬉しくもあった。大和田くんのたくましい体から感じる激しい鼓動で、大和田くんも緊張しているのだと理解させられた。
何か言われるのかと思って身構えていたのだが、しばらくするとただ解放された。それはそれで驚いて大和田くんの顔を見てみれば、やっぱり真っ赤に染まっていて、大和田くんの純情さを垣間見たような気がした。

「…ごめん、行くね」

どうしていいか解らず、私は自分の荷物をまとめて立ち去った。
私の自惚れでも勘違いでも無く、大和田くんは私になついているし、それ以上の好意を抱いている。でも、申し訳無いけど、応えてあげられそうにない。

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