猛獣に懐かれる
「なぁ天野、暴走族と付き合ってるってマジか…?」
久しぶりに左右田くんと授業をさぼっていたら、そんなことを聞かれた。大和田くんとはどう関わっても何かしらの噂をされるらしい。それだけ彼が目立つということだろうか。
「そんなのただの噂だよ」
「だよなぁ。あんな怖ぇ男と付き合うわけねぇよな」
最近は怖いだけじゃなく可愛いとか思うこともあって、ただ怖いだけの男とは思わなくなってきた。でも彼と関わったことの無い人たちは、そんな可愛い一面なんて知らないんだよなぁ。
「お友だちにはなったかも」
「…まぁ、そうだよな。一緒に飯食いに行くくらいだしな」
「二人でご飯食べる仲ってもう友達だよね?」
「そうじゃねーの」
「じゃあやっぱ友達だよ」
大人しく生きてきたつもりなのに、ぶつかって出会ったことがきっかけで暴走族と友達になるなんて、数ヵ月前の私には思いもよらなかっただろうな。
「怖くねーの?」
「たまに怖いけど、ひどいことされるわけじゃないから…まぁいいのかなって…」
「…怖く感じる時の方が少ないのかよ」
「あー…そうかも。私が絵描いてるとやって来て、その辺に座ったり寝転がったりして、邪魔もしないし騒いだりもしないし、なんか…ペットっていうか…番犬が傍に居るような感覚で…」
「友達っつーか、なつかれてるって感じか」
じゃれた訳でも、餌付けをした訳でも、撫でた訳でも無いのに、なぜなつかれてしまったのだろうか。
「天野って結構みんなになつかれてるよな」
「…なつかれてるって言い方、すごい一方的な感じする」
「実際そうだろ。おめーからはあんまり人に寄っていかないくせに、みんなはおめーに寄ってくだろ?」
「…わ、私、そんな冷たい感じに見える?めっちゃフレンドリーじゃない?」
「一人が好きなくせによく言うぜ」
それもそうなんだけど。だから授業をさぼってまで一人で絵を描いたりするし、放課後も一人で絵を描いたりする。ていうか、私の才能、人とわいわいしながら育むものじゃないし、仕方がないと思うんだよね。それに才能関係なく、一人で過ごすのは好きだし。
「なのに来るものを拒まないから、暴走族みたいな奴でも受け入れちまってんだろ」
「…受け入れてるのかな」
「拒絶もしねーし逃げもしなかったら、そう思われるんじゃねーの。だから昼飯一緒に食うくらい仲良くなったんだろ」
「…仲良いのかな」
「友達っつーことは仲良いんじゃねーのか…!?」
大和田くんも、私と仲良くなったって思ってるのかな。私が思うくらいなんだから、きっと思ってるよね。まぁでも、日寄子ちゃんの期待とは違って大和田くん何もしてこないし言ってこないし、きっと恋心なんて無かったんだろう。だったら、安心して仲良くなってもいいのかもしれない。
「せっかくなついてくれた後輩だし、もうちょっと可愛がってあげた方がいいのかな…」
「…惚れられても知らねーぞ?」
「それは困るから、その時は左右田くんに彼氏の振りでもしてもらおうかな」
「やらねーよ、ソニアさんに勘違いされたらどうすんだ」
「勘違いしたまま祝福してくれると思うよ」
「ちくしょう!!ぜってぇやらねーからな!!」
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