ガン飛ばされる
日寄子ちゃんが先生に提案してくれたおかげで、席替えが行われた。また狛枝くんの隣になったらどうしようと思いながらくじを引いたら、窓側の席になれて嬉しかったし、隣は左右田くんだった。
「あぁ、ソニアさん…」
ソニアちゃんは廊下側の後ろの方の席で、左右田くんの視界にも入らない位置だった。可哀想に。これも、左右田くんの右隣に狛枝くんがいるせいかな。
「なぁ席変わってくれよ…今日の昼飯おごってやるから」
「代わりに何か失うの怖いからやめておくよ」
「二人とも嫌だなぁ、僕は疫病神じゃないんだから」
私にとっては疫病神だったんだもん、しょうがないじゃん。でも間に左右田くんが入ってくれたわけだし、私の幸運は私に留まってくれるかな。代わりに犠牲になってね左右田くん。
「あー…俺今日の授業休もうかな」
「え、ずるい。じゃあ私も休もうかなー」
「たまにはいいよな」
「そうだよね、最近ちゃんと授業出てたもんね」
私と左右田くんは悪ガキみたいな笑みを浮かべ、それぞれ画材と工具を持って教室を出た。別に私も左右田くんも、授業が嫌いな訳ではないけど、勉強はできる方だったから、たまに授業の進み具合が遅くてたるくなったときに二人でさぼって遊んでいた。
「左右田くんのせいで先生からの評価下がっちゃうな〜」
「テストさえできりゃ下がんねーだろ、楽勝だって」
「じゃあ今度のテスト勝負しよっか」
「…頑張っても成績に関係ねーのにか?」
「成績なんてどうでもいいよ、私も左右田くんも才能あるし。ただ勝負して勝ちたいだけだよ」
「じゃあたまには勉強すっかなー」
「左右田くん勉強するの!?ずるい!」
「はぁ?勝負なんだから勉強させろよ」
「え、じゃあ私教室戻って授業聞こうかな…」
下らないことを話ながら左右田くんと歩いていたら、私を悩ませる問題の彼をまた見つけてしまった。今は授業中なのに出歩いているなんて、やはり彼も不真面目だ。
「ここまで来たんだから暇潰し付き合えよな」
「しょーがないなぁ」
彼もこちらに気付いたようで、何やらこの前よりも随分と不機嫌そうなオーラを放ちながら前方から歩いてきた。
「何だあれ…目が合ったら殺されそうだな…」
左右田くんがそう呟くと、彼は左右田くんをきつく睨んだような気がした。左右田くんはヒッと小さく声を漏らしていたし、睨んだように見えたのは私の気のせいじゃなかったらしい。結構距離があるのに、地獄耳なのだろうか。
「…全教科勝負して、勝った数だけ昼御飯おごりね」
「んなの俺が全教科勝ってやるよ」
「どうかな。これから狛枝くんに運を吸いとられ続けるんだからテストの日に体調崩すかもよ」
「え、縁起でもねーこと言うなよな」
不自然にならないよう会話を続けながら彼とすれ違ったのだが、今日の彼は私ではなく左右田くんのことをずっと見つめていた。いや、ガンを飛ばしていた。
しばらく歩き続けてから、左右田くんは大きなため息をついた。
「んだよあれ…俺が何かしたか?迫力ありすぎだろ」
「…さぁ、なんだろうね」
私が能天気お気楽女なら、左右田くんに興味があったんじゃない?とか適当なことが言えただろう。しかし日寄子ちゃんの一目惚れ発言を考えると、私と歩いていた左右田くんのことが、気に入らなかったのではないかと思う。思うけど、そんな自惚れたことを左右田くんに言えるわけもなく、しらばっくれるしかなかった。
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