極道と暴走族
「あぁん?ウチのクラスに何の用だ?」
教室の入り口付近から険悪な雰囲気と九頭龍くんの声が聞こえてきた。他のみんなもザワついているし、何だろうと思ってそっちに顔を向けてみた。
「天野先輩出せって言ってんだよ」
「それが人に物を頼む態度かよ?」
教室に訪れていたのは大和田くんだった。怖すぎるから九頭龍くんと喧嘩なんかしないでよ。
見て見ぬふりをしたかったけど、私がどうにかしなきゃおさまらない気がしたから仕方なく二人の元へと向かった。
「九頭龍くん、そんな怖い顔しなくて大丈夫だから…」
「九頭龍…?」
九頭龍くんの肩を引いて下がらせれば舌打ちをされるし、九頭龍という名前を聞いて何かピンときたのか、少しだけ大和田くんの顔色が悪くなった。
「えっと…お、大和田くん?私に何か用だった?」
「……」
言いたくないのか、大和田くんは無言で去ろうとした。わざわざここまで来たんだから何も無いわけないだろうし、仕方なく彼を追いかけた。
「大和田くんってば、どうしたの?」
「…なんでもねぇ」
「何の用だったの?」
「…昼飯、誘いに来ただけだ。嫌なら帰れ」
そういう言い方するなら帰りたいけど。でもここで素直に帰れるほど鬼の心は持ち合わせていなくて、大和田くんについていくことにしてしまった。
食堂に着いて、私と大和田くんは日替わりランチを注文して着席した。いつもただでさえそこまで会話を交わさないのに、二人でご飯なんて耐えきれるのだろうか。
「…天野先輩、九頭龍組の奴と仲良いのかよ」
「まぁ、クラスメイトだしね」
九頭龍くんも最初は怖かったけど、極道だとか考えずにいたら普通に仲良くなれた。肝が座っているとか言われたけど、だから今こうして暴走族の総長とも関われているのかな。
「…急に押し掛けて悪かったな」
「別に…。びっくりしただけだし。大事な話でもあった?」
「…話がねぇと会いに行っちゃダメなのかよ」
そう言ってぎろりと睨まれる。ダメとは言わないけどさ、その台詞、すごく可愛いってことに大和田くんは気付いてるのかな。
「ダメじゃないけど、せっかくだし何か話した方が楽しいと思うけど」
「…じゃあ先輩が何か話せよ」
そっちが誘ってきたくせに!なんて文句を言ったらまた怒鳴るんだろうなぁ、と思ったら言い返す気力も無くなってしまう。大和田くん、ほんとに私と会いたくてお昼一緒に食べたかっただけなのか。それってやっぱり好かれてるようにしか思えないんだけど、勘違いなのかな。ただなつかれてるだけかな?
「…あ、そうだ。さっきの、教室来たとき、九頭龍くんと喧嘩してたでしょ。ああいうの、もうしちゃダメだよ」
「…」
「一応…私の学年、大和田くんより先輩なんだからね?私は気にしないけど…他のみんなには、敬語使うとか、した方が、いいと思います……」
押し黙る大和田くんが怖くて、こっちが丁寧語になってしまう。暴走族の総長が敬語なんて使うの、ありえないのかな。
「…できたらな」
「う、うん」
そういうの気にするの九頭龍くんくらいかもしれないけど、九頭龍くんを怒らせたらいくら大和田くんでも敵わないだろうし、大人しくできるなら大人しくしてほしいところだ。
「…そしたらまた、昼飯誘いに行ってもいいんだよな?」
「まぁ、うん、いいよ」
ダメだとか言えるわけないじゃないか。
肯定したら、大和田くんは笑顔を見せてくれた。そういう可愛い顔もできるんだから、怒るのやめたらいいのにな。
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