消された思い出



「盾子ちゃんのバカ!バカバカ!死んじゃえ!」

私は盾子ちゃんのスケッチブックをビリビリに破いていた。

「暴れんなよ、座れって」
「だって!こんなのひどい!私の、私との記憶も、全部っ…」

盾子ちゃんの宣言通り、78期生のコロシアイ学園生活が始まった。そこまでは別にどうでもよかった。だからその全国放送を左右田くんと見始めたのだが、78期生全員の記憶が無くなっていて、ショックを受けた。

「まぁクラスメイトでコロシアイなんてあのイイコちゃんたちにできるわけねぇしな」
「だからって!大和田くんの中から、私が居なくなったなんてそんなの、ひどいよ。それじゃあ大和田くんが生き残って出てきたとしても、私のことなんか解んないし、もう私のことなんか選んでくれないかもしれない」
「ははっ、絶望的だな!」
「盾子ちゃんの悪意を感じる!私に対する絶望が多い!」
「喜ばしいことじゃねぇか」

私ばかりこんな目に合ってテンションを上げていたら、このあとのコロシアイを落ち着いて見られない。私は大和田くんの最期をしっかり見届けなければならないんだから。

「しかももうシェルター閉じちゃってるし…文句も言えない!むかつく!!」
「あれ?大和田の部屋のアレって天野のか?」

破いたスケッチブックをぐしゃぐしゃにしてゴミ箱にぶちこんでいたら、左右田くんに服を引っ張られてテレビの前に連れていかれた。

「あー!これ!左右田くんが邪魔した時に描いてた描きかけのやつ…大和田くん、ちゃんと持っててくれたんだ」

部屋に遊びに行くから預かっていてと言っておいたものだ。大和田くんがそれをシェルターまで持ち込んで部屋に飾ってくれていたなんて。

「おい、壁から外し始めたぞ」
「ちょっと待ってどこ持ってくの」

大事そうに見つめていたと思いきや、それを壁から外して部屋の隅に立て掛けた。もう見ないってことなの?

「残念だったな、アイツもうお前の絵に興味無いってよ」
「…私が画家から絶望になって、大和田くんの記憶が消えたんなら、もう私たちに接点なんて無いんだね。あんなに愛し合ったのに、こんなことになるなんて」
「愛し合ったって、キスしかしてねぇんだろ」
「うるさい!あと一歩だったの!ていうかあの時左右田くんが邪魔しなければあのまま…」
「は!?まさかお前ら、空き教室でヤろうとしてたのか…!?」

いけない、口が滑った。いや、でも、あの時は私も浮かれていたし、本当に左右田くんが来なければ、大和田くんに流されていたかもしれない。

「たしかにあの時服も乱れてたし、やっぱりそういうことを!」
「だって本当に大好きで、大和田くんになら何されても良かったし、触られるのも嬉しかったし、ほんとに、好きで、好きで…」

私の好きになった大和田くんの記憶はもう無い。盾子ちゃんに消されてしまったと思うと、本当に腹立たしい。私以外の人に、大和田くんの大事なものが奪われただなんて。盾子ちゃんに文句を言いたいのに私たちはもうシェルターを破ることができない。

「どうにもできないなんてほんとに絶望的!」
「ほんとな。まぁ学園周り居てもどうしようもねぇし、数日したら俺らもここ離れるから出れる準備しとけよ」
「え?私左右田くんと行動共にしなきゃいけないの?」
「お前1人で何ができんだよ。ここ画材もねぇし」

それもそうだ。おしおきマシーン作ってる間に他の皆はここを離れてしまったし、今いる絶望は左右田くんと私だけ。生きて絶望を蔓延させていくためにも、左右田くんと力を合わせた方がいいかもしれない。

「愛する人とお別れしてただのクラスメイトの男子と生きていかないといけないなんて絶望的…」
「ひでぇ言われようだな」

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