よそ見しないで



最初のコロシアイは、まさかのアイドル舞園さんと、桑田くんの対決だった。桑田くんイイコだったのに人を殺したのがショックだし、左右田くんの作ったおしおきマシーンで死ぬ桑田くんの姿が残酷で、目に焼き付いた。

「…私たちも、人殺しちゃったね」
「そうだな」

二人で一緒に作った機械が、人を殺した。言わば私と左右田くんは共犯だ。主犯は盾子ちゃんだけど。
ちらりと左右田くんを見てみれば、自分の作った機械が全国放送されたせいか、目を輝かせていた。

「左右田くん、才能あるよ」
「そーか!?だよな!」
「次も楽しみだね」

全員分のおしおきを用意したけど、よく考えたら殺された側の子のマシーンは無駄になったということか。舞園さん用のおしおきマシーン、結構頑張ったんだけどな。

「天野まだ絵描けねーの?」
「枚数足りなくて。どうせ全国に流すならいっぱい見てもらいたいじゃん?」
「まぁそうだな」

赤い絵の具ばかり使っていたから、赤が足りなくなってきた。この絵を仕上げたら、追加で赤だけどこかからもらってこないと。

「あっ、おい!大和田が女子と喋って照れてんぞ!」
「はぁ!?」

思わず筆を床に落としてテレビに顔を向けた。小さくてか弱そうな不二咲さんという子と、仲良さげに会話していた。何その顔。それ、いつも私に見せてくれてた顔だよね。

「ひどい、浮気だよこんなの、私の場所なのに」
「いだだだだ」

八つ当たりぎみに左右田くんの腕を掴む。盾子ちゃん、こういうの見せて私を絶望させるために付き合わせたんじゃないの。盾子ちゃんほんと性格悪い。死んで正解だよ。

「残念だな、愛してくれる奴が別の女に気を取られちまって」
「…大和田くんがその気なら私だって浮気してやる」
「はぁ?誰とだよ」
「そんなの…ここに左右田くんしか居ないんだから聞かなくてもわかるじゃん」

テレビから目をそらせば左右田くんのピンクの瞳と視線が交わる。文句を言われる前に顔を近付け、唇を重ねた。


「…はは、浮気しちゃった。左右田くんも、どう?ファーストキスが好きな子とじゃなくて、絶望した?」

自分からしたくせに、浮気した罪悪感で涙が溢れてきた。これじゃほんとに、大和田くんに顔向けできないや。

「どうせやるなら、後戻りできないくらいにしてやるよ」

滲んだ視界の中で、悪魔のように笑う左右田くんがいた。べろっと頬を涙ごと舐められて、左右田くんの鋭い歯が間近で見える。

「そういうの、いらなっ…」

頭をがしっと掴まれて、無理やりキスされた。煽ったのは私だけど、好きでもない左右田くんとこんなことするなんて、絶望でしかない。大和田くんに知られたらどう思われるか。なんて考えたところで、今の大和田くんは私を知らないんだから何も思わないのだと気付く。

「んっ…ソニアちゃんのこと、好きだったんじゃないの?もういいの?」
「どうせ敵わねぇんだから、考えたってしょうがねぇだろ」

そんなことを言いながらまた唇を合わせてきた。うわ、こいつ、誰でもいいのかよ。

「お前だって、絶望感じたいから俺と居るんだろ」
「…そうかも」

左右田くんと居ると、大和田くんと一緒に居られない絶望感が常につきまとう。こうして触れて唇を寄せることで、なんでこれが大和田くんじゃないんだと心が更に黒くなる。

「利用してごめんね。でも、絶望感じるの、気持ちいい」

再び唇を合わせ、唇を割って舌を入れる。左右田くんの歯は尖っていて、噛まれないかと不安に思いながら舌を絡ませた。好きでもない男とキスしちゃってるよって、大和田くんに知らせたい。そして、怒られたい。怒ってくれる大和田くんはもう居なくて、更に涙が流れてくる。

「っは…、天野…これ以上すんなら、性処理までさせんぞ」
「…大和田くんのすらしたことないのに」
「嫌ならまじでやめろ、トイレ行かせろ」
「私で抜くんだ…」
「わざわざ言うな」

左右田くんは頬を上気させたまま、私の元を離れて行った。人を殺す機械は作れるくせに、私を襲うことができないなんて。左右田くんは絶望的なほどに優しくて、この世界では致命傷になりそうだ。

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