溢れ出る殺意


城宮の言うことを信じるつもりはない。それでも、藍染隊長のことが気になった。
どんなに城宮が図々しい奴でも、少しでも藍染隊長に注意されていたら、もう少し控えめにしていたんじゃないか。つい最近だって、檜佐木副隊長を使って私に怪我させたくらいだ。本当に藍染隊長は私の味方で、私を護るつもりがあって、私のために動いていてくれたのか、不安になった。

この広い瀞霊廷内を闇雲に走り回って旅禍を見つけ出すのは困難だと思い、体力温存のためにも今日は体を休ませることにした。
休んでいる内に夜になったから、きっと藍染隊長も隊首室に戻っている頃だろうと思い、自室を出て隊首室に向かった。

「失礼しまぁす」

そこで見たのは、城宮が隊首室の中へと姿を消すところだった。
あいつが言っていた通り、藍染隊長と城宮は二人きりで話す機会はあったんだ。それなら、なぜ城宮が大人しくならないんだ。藍染隊長は本当に、私のために何かしてくれていたのか?
藍染隊長に会うことすらできずに、私は自室へと逆戻りした。誰を信じていいのか解らなくなって、嫌な汗が出てきた。動悸も激しくて、手が震えた。途端に怖くなって、布団に潜り込んだ。
私を信じて優しくしてくれた藍染隊長を疑ってしまうなんて、自分のことも嫌になりそうだった。藍染隊長の優しさも、笑みも、温もりも、全て偽りだったのかと思うと、怖かった。



布団なんかに潜ったせいで、どうやら眠ってしまっていたらしい。悪夢にうなされて目が覚めた。最悪の寝覚めだったけど、今日もまた旅禍を探し回らなきゃいけない。布団から出て死覇装に着替えていたら、遠くから悲鳴が聞こえた。私の耳が確かなら、雛森副隊長の声だ。
急いで外に出て雛森副隊長の霊圧を探し、現場へ向かった。

「嘘…」

震える雛森副隊長の見つめる先には、壁にはりつけにされている、藍染隊長がいた。胸に刀が刺さり、壁には大量の血が流れていた。
夢だと思いたかったけど、こんなに意識がはっきりしているのに夢な訳もない。藍染隊長の遺体は大勢の死神が見ていて、中には隊長格の人も数人いた。藍染隊長の霊圧は微塵も感じとることができなくて、本当に死んでしまったのだと実感した。
昨晩会っていた城宮を真っ先に疑ったが、私程度の席官から逃げ出すくらいのあいつに、藍染隊長を殺せる力があるわけがない。
だとすると、怪しいのは旅禍なのか?三席の一角さんを倒せるくらいの力がある旅禍がいるということは、そいつは隊長格の強さだったはずだ。仇を取るにも、隊長格の強さに、私が勝てるのか?

「藍染隊長……」

疑ってしまってごめんなさい。最期に、少しでもいいから話したかった。声を聞きたかった。
心の支えだった藍染隊長がいなくなった今、瀞霊廷を護る理由がわからなくなってしまった。ただ、藍染隊長を殺したかもしれない旅禍のことを、殺したかった。


「お前か!!」

突然、雛森副隊長は刀を抜き、真っ直ぐ市丸隊長へと駆け出した。しかしそれは吉良副隊長によって防がれた。
何が起こっているのか、理解できなかった。雛森副隊長が市丸隊長を、なぜ疑う。何か知っているのか?市丸隊長が藍染隊長を殺したとでも?
混乱しているうちに二人が始解までして戦おうとしたのだが、冬獅郎くんとが止めに入ってやめさせられていた。
誰の行動が正しくて、今何が起こっているのかすら解らないこの状況で、何を信じたら良いと言うんだ。この状況で瀞霊廷を護れと言われても、瀞霊廷を何から護れば良いのかも解らなかった。


私は状況を把握するため、一心不乱に色んな死神に情報を聞き回った。藍染隊長に関することは何も解らなかったけど、数人に話を聞いたら、旅禍二人が四番隊の席官を人質にして連れ回しているということが判明した。しかもそれが、花太郎君だということも、解ってしまった。
会って逃げられたりしたらどうしようなんて思ったけど、どうせ旅禍とやりあえば私は死ぬかもしれないんだ。そしたら、花太郎君に避けられようが、関係無い。

花太郎君の霊圧は凄く遠くに感じた。けど十一番隊舎から懺罪宮までの間に居るはずだから、そう遠くなわけがない。もしかして、と思い付いたのは、四番隊の彼だからこそ知っている、地下の抜け道のことだった。

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