あの子に勝てるところ


「どう?美味しい?」
「うめー!すげー才能だな!」

乱馬くんを家に誘って、手料理を振る舞った。もちろんあかねに断りをいれてからだ。じゃないと乱馬くんを借りるなんて怖くてできやしない。

「あかねもこのくらい見習ってくれていーのにな」

今日はたまたま女の姿だったから、そのままで家にいれてあげた。この姿なら緊張しないから好都合だ。

「あかねが手料理までできるようになっちゃったら、非の打ち所が無くなって乱馬くん困るでしょ」
「けっ。料理の腕が改善されたって色気の無さに変わりはねーっての」

本人の居ないこの場でも乱馬くんは素直じゃない。私の手料理は素直に美味しいと言ってくれるのに。

「そういやなんで俺だけ呼んだんだ?よく食うからか?」
「…まぁ、料理の練習みたいな。人の感想聞きたくて」
「ふーん。あかねも呼べばいいのに」
「あかねが料理手伝うとか言い出したら困るし…」
「……たしかに」

あかねは料理に何をぶちこむか解らないから、一緒に作るにしても見張っていないと安心できない。

「練習なんかしてどうすんだ?」
「…たまに友達が遊びにくるから、美味しいもの食べてほしくて」
「俺はその友達じゃねーのかよ」
「えっ、いや、そういう意味じゃなくて…乱馬くんは友達だよ?けど、あの、えっと、」
「…ま、いいけど。普通にうめーし、練習なんかしなくても大丈夫だろ。おめーも食えよ」
「あ、うん」

料理の感想を聞くためとは言え乱馬くんと二人で食事するなんて、少し緊張する。見た目は女の子だけど食べ方は雑で男の子らしくて、ちょっと面白い。

「なぁ、あの花、もらったのか?」

乱馬くんは口をもぐもぐ動かしながら、箸でチューリップの方を指した。

「…良牙くんが、くれた」
「あかねと一緒だな」
「……うん」

私が黙ったら、乱馬くんまで黙ってしまって沈黙が生まれてしまう。すごく気まずい。これならむしろ色々聞いてくれた方が楽だと言うのに。

「あいつよぉ、あかねのことが好きだからいっつもあかねにちょっかいかけてんだよ」
「…そうなんだ」

やっぱり良牙くん、あかねのことが好きなんだ。見てれば解ることだけど、改めて言われると悲しくなる。やっぱ諦めた方がいいのかな。

「でもあかねと同じ物貰ったってことは、はるかのことも好きなんじゃねーの?」
「……は?」
「いや、わかんねーけど。何て言って貰ったんだよ」
「…道案内してあげたり、ご飯あげたりしたお礼だって」
「ほー。ってことはこの料理の練習も良牙のためか。そーかそーか」
「あ」

乱馬くんは楽しそうににやにやと笑う。私の密かな想いがばれてしまった。

「別にそういうんじゃないから!良牙くん馬鹿みたいにふらふらしてろくなもの食べてないかもって思ったから作ってあげてるだけだから!」
「へー、優しいんだな、良牙に対しては」
「私は誰にでも優しいもん」
「協力してやろーか?」
「…何を」
「良牙とくっつけるようにだよ」

でもそれって、良牙くんの想いを無視することにならないかな。あかねのことが好きなのに、邪魔するのつらいし。

「別にいらない」
「遠慮すんなよ」
「…じゃあ、今度の日曜日、良牙くん見かけたらここまで連れてきて」
「居るかなアイツ」
「一応、約束したから…来る、はず」

方向音痴の迷子だからそこまで期待はしていないけど、乱馬くんが味方になってくれるなら、見かけたら連れてきてくれるはず。

「よし、じゃあ俺に任せろ!もし町内にいたら連れてってやる」
「まぁ、見かけたら、でいいよ。県外まで行っちゃってるかもしれないし」
「それもそうか……こればっかりは運だな」

期待して裏切られるのは嫌だし、あんまり期待せずに待っていよう。

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