危なっかしい


「風林館高校はどこだ?」

どこかで修業でもしてきたかのようなボロボロとした、同い年くらいの男の人に突然声をかけられた。

「ここを真っ直ぐ行って、信号を右に行けば学校が見えてくるかと…」
「そうか。ありがとう」

その人は私の言う方向に歩いて行ったのだが、信号にたどり着く前に路地裏のような道へと曲がって行った。あのまま行っても行き止まりで人の家しか無いし、困りそうだと思って追いかけた。

「あのっ、すみません!」
「む?」

やはり行き止まりでどうするか迷っていたみたいで、立ち止まっていた。

「曲がるの、この道じゃないです。よかったら高校まで案内しましょうか?」
「しかし…」
「私なら暇なので大丈夫です!それに私、風林館高校の生徒なのでばっちり案内できますよ」
「…そうか。ではすまないが、頼んでもいいか?」
「どうぞどうぞ」

私が歩き出せば、その人はついてきて私の横に並んだ。
本当は家に帰る途中だったけど、高校に用があるなら早いうちに辿り着かせてあげないとみんな帰ってしまいそうだからしょうがない。

「高校に何か用なんですか?」
「会わなければならない奴がいるんだ」

と、なんとも憎々しげな表情を見てしまう。なんだか怖い人に声をかけてしまったのだろうか。

「でももう、授業終わってるからその人も帰っちゃってるかもしれないですよ」
「なに…?」
「いや、わかんないですけどね。あ、あそこの道で右です」

と、案内したものの、彼はまた指示より手前の道で曲がろうとした。

「ちょ、そこじゃない!待って!ていうかそこ道じゃない!」

道どころか、家と家の隙間だ。何をどう勘違いしたらここを道だと思えるのだろうか。
ずかずかと進んでいこうとする彼の、服の袖を掴んで動きを止めさせた。

「あの…ちゃんと連れてくんで、ここ掴んだままでもいいですか?」
「……はい」

彼はちょっと大人しくなったので、また正しい道で歩き始めた。男の人の袖なんか掴んで歩くのは、ちょっと緊張する。よく見ればかっこいい顔してるし、こんなことならどさくさに紛れて手でも握っておけばよかった。

「名前何ていうんですか?あ、私黒野はるかです」
「…響良牙」
「誰に会いに来たの?」
「言ったらそいつに会わせてくれるのか?」
「まぁ…知ってる人なら、案内するよ」

最後まで送り届けてあげないと、さっきみたいに行き先を間違えまくるかもしれないしね。制服でもないから校内うろついて不審者扱いされるのも可哀想だし。

「早乙女乱馬という男だ」
「えっ、乱馬くん?それなら同じクラスだからちゃんと解るよ」
「本当か!」

良牙くんは私の腕をがしっと掴んで真っ直ぐに見つめてきた。そんな瞳で見つめられると、照れるんですけど。

「あ……すみません」
「い、いえいえ」

私が照れたせいなのか、良牙くんまで照れてしまって私から腕を離した。それでもやっぱり道を間違えないために、私はまた良牙くんの袖を掴んだ。

「早く行かないと、乱馬くん帰っちゃう」
「そ、そうだな」

ちょっとだけドキドキしながら、それから無言のまま高校に辿り着いた。

「まだ居るかなー」

もう大丈夫だろうと思い良牙くんから手を離し、周りを見回す。少しすると、いつものように喧嘩しながら追いかけっこをしている乱馬くんとあかねがこちらへ向かってきていた。

「いたよ」

と声をかける前に、良牙くんはすごい勢いで乱馬くんに向かって飛び出した。文字どおり高く跳んで、持っていた番傘を突き刺すように乱馬くんに降り下ろしていた。乱馬くんだから当たり前のようにひらりとかわしていたけど。

「復讐だぁっ!!」

良牙くんは敵意剥き出しで乱馬くんに吠える。乱馬くんってば、こんなに怒らせるほど良牙くんに何をしたんだろう。

「俺はどんな手を使ってでも、貴様のしあわせをぶち壊す!」

何があったかは検討もつかないけど、厄介そうな人連れて来ちゃってごめんね乱馬くん。

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