メタモルフォーゼ


「何だよ、こんなとこで話って…」

私は放課後、乱馬くんを校舎裏に呼び出した。一応、あかねにも一言断りは入れておいた。

「ずっと、乱馬くんのことが気になってて」
「えっ」

何て言えばいいのかな。おさげの女の子とはどういう関係かって、直球で聞いてもいいのかな。でも本当に愛人だったら、私はこれからあかねにどんな顔を向けていいのやら。

「できれば、正直に答えて欲しいんだけど、」
「え、あの、でも、」

乱馬くんも戸惑ってるし、もう本題に入ってしまった方が私も乱馬くんも気が楽だろう。聞いてしまえ。

「おさげの女の子って、乱馬くんの何?どういう関係?」
「……え?そんなこと?」
「……そんなこと、なの?その程度にしか思ってないなら、是非とも教えてほしいんだけど」
「あっ、いや、そういうわけじゃねーけど……なんか、話の切り出し方が告白っぽかったから…」

え?私最初何て言ったっけ?乱馬くんのことが気になってて……とか言わなかったっけ。

「そ、そういう意味じゃない!期待させて……じゃない、誤解させてごめんね!?」
「いや、別にいいんだけどよ…」

あっ、気まずい。恥ずかしい。
あかねの見てないとこで乱馬くんに愛の告白とかそんな裏切り行為できないし、したくないし、するつもりもないし。

「で、その、教えてもらえるの…?もらえないの?なびきちゃんに聞いたら、乱馬くんに聞けって言われちゃったから」
「あいつ……」

あぁやっぱり、言いたくないことだったのかな。ごめんね聞いちゃって。好奇心には勝てなかったよ。

「あの子の、身も、心も、乱馬くんのものだって…なびきちゃんが言ってて……誤解なら誤解だって言って欲しくて…」
「誤解だ!!あれはそんなんじゃなくて、じゃなくて…その…」

続きを聞くのがなんだか怖い。お互いにどうしようかと固まっていたら、乱馬くんはずかずかと歩き出した。そして水道にたどり着くと、なぜかバケツに水をためてからまた戻ってきた。

「お前のこと信頼して見せるんだからな?その目によーく焼き付けとけよ?気持ち悪いとか言うんじゃねーぞ?」
「うん?」

そして乱馬くんはバケツを掲げ、逆さまにして水をかぶった。途端に体が少し小さくなり、見覚えのある女の子の姿になった。

「……マジック?」
「こーゆー体質なんだよ、俺は。天道家の皆は知ってるけど、あんま人に言うなよ?」
「へぇ……乱馬くん、可愛いね?え?触っていい?え?」
「……」

見れば見るほどめちゃくちゃ可愛いし、手も小さくて女の子らしくなっている。ついでだし気になったから胸を掴んでみると「にゃっ」と声を出された。やばい可愛い。

「な、何しやがる」
「いや、触っとかなきゃ損かと思って…。あー、でも納得した。こういうことだったんだー。ほんとの性別はどっち?」
「男だよ!」
「へー。どうやったら戻るの?」
「お湯かぶりゃ元通りだ」

なんかすごい、楽しそうで不便そうな体質だ。私だったら悪用しちゃう。

「あ。教えてくれてありがとね。すっきりしたよ」
「満足したならいーけどよ。それと、俺も聞きたいことあんだけどいいか?」
「いいよ」
「その…最近、俺のことすっげー見てたよな。それって、この件のせいだったのか?」
「あ、気付いてたんだ……。そうだよ、ずっとこの女の子姿のこと気になってたから、つい」

見られてたの気付かれてたなんて、普通に恥ずかしいな。

「ならよかった!あんまり見られてるもんだから俺に惚れちまってんのかと思ったぜ」
「あっはっは。半分くらいはその気だったしかっこいいから見てたんだけどね」
「あっはっ……はぁ!?おま、それ、」

意外にも乱馬くんは頬を染めて照れていた。勘違いさせたらまずいと思い、「嘘だよ」と微笑んで乱馬くんの頭を撫で回した。この可愛い子が乱馬くんだなんて、実感がわかない。

「友達の許嫁に惚れたりなんかしないってば」
「おめー、無害そうな顔して悪い女だな……」
「へへ、なびきちゃんと比べたら私なんか善人な方だよ」
「あれは悪魔だ。比べるな」

別にあかねとの友情捨てるほど乱馬くんが好きなわけじゃないし、本気なわけでもないし。乱馬くんに脈なしなのわかるから、これ以上かき乱したくないし。

「疑問も解けたことだし、帰ろっか」
「そーだな」

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