泣いてしまうほどに
「心音、一緒にご飯行こ」
響香ちゃんに誘われて、放課後に女子みんなでファミレスに行くことになった。大勢でわいわいしたことがほとんど無かったから、緊張した。
「それで、今日の本題なんだけど」
ご飯を食べながら談笑して、私の緊張も解れてきたところで、お茶子ちゃんが切り出した。
「心音ちゃん最近元気無いけど何かあった?」
「へっ」
「みんなの前だと言いにくかったら今度でもいいけど、何か困ってるならみんな力になりたいんよ」
困ってる?元気無い?私、そんな風に見えてるんだ。
「別に…私、今も、みんな仲良くしてくれてすごい嬉しいし、楽しいし、困ってなんかないよ」
「…そう?大丈夫?」
みんなして、私のことどんな風に見ているの。そんなに、元気無く見えるの?
「まどろっこしいなぁっ!聞いちゃうよ?心音ちゃん最近切島と何かあった?」
「三奈ちゃん!そんなずばっと!」
そんなの私が聞きたいよ。私は切島くんに何かしたつもりも無いのに、切島くんが、壁を作ってきたんだから。って、そっか、私切島くんに避けられてんのかな。私の思い違いとかじゃなくて、客観的に見ても、そんな風に見えてるんだ。
「…切島くん、よそよそしくなっちゃった」
「だから元気無かったんだ?」
私、切島くんのせいで元気無いように見えてたんだ。人に避けられるのなんていつものことなのに、慣れっこなのに、へこんじゃったんだ。
「…話すの、減っちゃったし、目もあんまり合わないし、さ、避けられてるのかな…?みんなから見ても、何か変わったように見えてたんだよね…?」
「うん、最近切島変だし。主に、心音ちゃん関連で」
やっぱり私が切島くんに何かしちゃったんだ。だから私の前でだけ変なんだ。何かした自覚は無いし、どんな悪いことをしてしまったんだろう。
「…何したのか、全然解んないの。でも、この前、偶然手が触っちゃったら、びっくりされて、すぐ手離されて、避けられたの。今までそんなことなかったのに、何か心読まれたくないことでもあるのかなとか、私のこと嫌いになったのかなとか、色々考えちゃって…」
深く考えないようにしていたのに、周りから見てもおかしいということは絶対に何かあるはずだ。嫌われた線が強すぎて、悲しくなってきた。本当にそうだったら仲直りしたいけど、うまく話せる自信がない。
不安な気持ちが膨らんできて、視界が滲んできた。
「あー、ほら、大丈夫だから、落ち着きなよ」
隣の響香ちゃんが頭を撫でながら引き寄せてくれて、私は響香ちゃんの肩に額を乗せた。そんな風に優しくされたこともなくて、余計に泣けた。
「切島悪い奴じゃ無いしさ、話せばどうにかなるって」
「うぅ、で、でも…」
「大丈夫だって」
「そうよ、心音ちゃんが切島ちゃんになついてたみたいに、切島ちゃんだって心音ちゃんになついてたんだから。きっとまた仲良くなれるわ」
優しくされ慣れていないせいで、みんなの心配が嬉しくてたまらない。
情緒不安定になってしまったせいで、個性を使ってしまったのか響香ちゃんの声が頭に流れ込んできた。その内容に驚いて、「へっ?」と声をあげて驚いて響香ちゃんの顔を見た。
「な、何?」
「私、切島くんのこと好きなの?」
「…あ、もしかして読んだ?ってか、そうじゃないの?」
全然自覚無かったけど、みんなにはそう見えてるの?
心を読んでしまったにも関わらず、響香ちゃんは離れることもなく、優しく私の涙を拭ってくれた。
「泣くほど好きなのかと思ったけど」
「…そうなの?」
「違うの?」
好きか嫌いかで言えば、好きだよ。でも私、切島くんだけじゃなく、みんなのことだって好きだよ。私だって馬鹿じゃないからみんなが、私が切島くんに特別な感情抱いてるんじゃないかって思ってるのもわかるよ。でも私、自分が切島くんをどんな風に好きなのかなんて、わかんない。
「わかんないけど、私切島くんと仲直りしたい」
「そーいうことなら私らが一肌脱ぐよ!」
「私だって二肌くらい脱ぐよ!」
「葉隠ちゃんはもうちょっと着てていいのよ」
わかんないけど、元気の無い私のためにみんなが何かしてくれようとしているのは、とても嬉しかった。
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