ヒーローの笑顔



「なぁ大神、一緒に帰ろうぜ」

帰宅しようと立ち上がったところで、声をかけられた。切島くんからのお誘いで、びっくりして固まった。

「今日頭打ってたろ?元気そうだけど、やっぱ心配で」
「あ……いや、心配なんてそんな、もう大丈夫だよ?」
「それでも、今日だけでも良いから、頼む!俺の気が済まない!」

そんなに心配するようなことないのに。切島くんは優しい。ここまで言われて拒否するのもどうかと思い、うなづいた。

「めっちゃ嫌って訳じゃないなら、家まで送る」
「…嫌じゃないよ」
「ならよかった」

切島くんからは、峰田くんや上鳴くんのような嫌な感じがない。真っ直ぐな瞳は嘘をつくように見えなくて、一緒に居ても落ち着ける。
お茶子ちゃんたちにバイバイと手を振って、切島くんと二人で教室を出た。



「私さ、もうちょっと強くなるね。個性暴発しないようにして、からかわれないようにする。だから、頑張るから、また戦って欲しい」
「、おう!またやろうぜ!なんならコントロールの特訓、俺も付き合うし!」
「えっ、いいの?」
「いいぜ!俺にできることならなんでも!仲間だしな!」

うわ、切島くんめちゃくちゃ優しい。ヒーローって感じですごい。

「つっても何手伝えばいいんだろうな。びっくりさせられても個性暴発しないように、びっくりさせまくればいいのか?」
「すごい心臓に悪そう」
「でもそうじゃないとまた耳出てくんだろ」
「うーん…」

今までの感じからすると、私は背後からの衝撃に弱い。耐性つけるためには、たびたび背後から驚かされるしかないのか。

「教室だと皆いるし、尻尾出たら困るから……普段、尻尾出ちゃっても大丈夫そうな場面あったら驚かせて欲しい」
「人気の無いとこで不意打ちってことだな。…男らしくねぇけど、大神がそう言うならやってやるぜ!」
「うん、ありがとう」

どんな驚かせ方をしてくるのか、ちょっとだけ楽しみだ。

「そういや、読心の方はコントロールできてんのか?」
「……そっちも、あんまり。実は、びっくりした拍子にそっちも使っちゃうことある」
「じゃあ自主的にはあんま使ってないのか?」
「そうだね、あんまり人に触らないし……読まなきゃいけない場面ほとんど無いし」

平和に過ごしていれば、他人が何を考えているかなんて気にならない。今のクラスでの生活がまさにそれだから、本当に使うときが無い。

「読心ってさ、救助ですっげぇ役に立ちそうだよな。喋れないような人が居ても、個性ですぐ状況把握できそうだし。ヒーロー向きの個性二つもあんのやっぱすげーな!」

切島くんはそう言って太陽のような笑顔を見せてくれた。みんなに嫌がられる個性のことを、ヒーロー向きだと言ってくれた。

「わ、私、ヒーローなれるかな」
「何言ってんだよ、ヒーローになるために雄英通ってんだろ?」
「っ、そうだね!そう!私、ヒーローになる!」
「おー、その意気だ!俺もヒーローになる!一緒にがんばろーな!」
「うんっ!」

ああ、嬉しい。個性の話なんて今まで大嫌いだったのに、受け入れてくれる人がいる。認めてくれる人がいる。それがこんなにも嬉しくて、楽しい気持ちになるなんて。

「大神そういう笑顔できるなら普段からもっと笑おうぜ?ヒーローになるならさ!笑顔って大事だぜ!」

と、笑顔の切島くんに言われた。そういう笑顔、って何だろう。そういえば私、人前でこんなに嬉しくなって笑えたの、久しぶりかも。

「笑顔、変じゃない?」
「変って何だよ?普通に可愛いって。…って、いや、今のは違、違わないけど…、あれだ!笑顔、良いと思うぞ!」

すごい雑にまとめられたけど、切島くんは照れていた。もちろん私も可愛いなんて言われ慣れていないせいで、顔が熱くなった。

「き、切島くんがそう言うなら、笑顔もがんばる」
「おう!がんばろう!」

不思議な気持ちだ。切島くんと居ると、落ち着くし、気分が明るくなるし、心が、あたたかくなる。これが、ヒーローの素質なのだろうか。

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