あそばれる
「おっはよー!」
教室に入った瞬間、めちゃくちゃ元気よく挨拶されて驚いた。びくっとしてしまったしまた耳を出してしまった。不覚だった。
「おはよう……」
「また耳出てるよー、かわいい!」
お茶子ちゃんは麗らかに微笑みながら私の耳を撫でる。くすぐったい。
「狼なのにびっくりしやすさはウサギみたい」
「どうせ小心者だもん…」
「そ、そーじゃなくて!可愛いって意味だよ!」
ビビる姿を褒められても、私としては複雑な気分だ。
「狼に可愛さなんかいらないし、もっと強くならないと…」
出てしまった耳と尻尾を引っ込めた。
「おっす大神、おはよ」
背後から峰田くんの声がして、ナチュラルに尻を触られた。ぞわっとして、さっき引っ込めた耳と尻尾がまた出てしまった感覚があった。
さすがに怒ろうと思って振り向こうとすれば、ぎゅっと尻尾を掴まれた。
「ひゃっ、」
「ははーん、やっぱこの尻尾、性感帯だな!?」
性感帯って何だと思い、背筋のぞくぞくに耐えつつ峰田くんの心を読んでみれば、読んだ瞬間に後悔した。脳内真っピンクで、思春期通り越してただの変態でしかない脳内お花畑が広がっていた。
「む、むり!!峰田くんむり!!離して!!」
「無理ってなんだ!?生理的にか!?」
「無理!!!」
男子の脳内ってこんななのか。それとも峰田くんだけがこんななのか。知らない世界すぎて顔は熱いし泣きたくなった。
「その思考で私に近付くのやめて!」
「勝手に思考読んだのか!?変態だな!」
「わ、私が!?峰田くんに言われたくない!」
「オイラは脳内で留めてんのにそれを覗いたのは大神だろ!この覗き魔!」
「お尻触ったし留めれてないじゃんか!」
「あ、ほんとだ」
峰田くんの態度が気に入らなくて、ガルルル、とつい喉を鳴らす。演習で峰田くんとやることがあったら絶対噛み付いて怪我させてやる。
「心音ちゃん怒ると牙出るんや」
「え」
「犬歯が」
言われた通り触れてみれば、たしかに牙ができていた。攻撃力が高くなった気がする。
「おはよー、峰田と言い合いしてたの麗日か?」
「あ、二人ともおはよー。私やなくて心音ちゃんだよ」
登校してきた上鳴くんと切島くんは、それを聞いて驚いたように私を見た。
「峰田また何かしたのか?」
「心音ちゃんのお尻触った」
「はぁ!?ずりぃ!俺も触りたい!」
「柔らかかったぜ!」
「オイ」
切島くんはポカッと峰田くんを殴った。
「お前なぁ、あの顔見ろよ。泣きそうじゃねーか」
「興奮するよな」
「そうじゃねーだろ!ごめんな大神、峰田には俺からきつく言っとく」
「オイラが悪者扱いされてるけど、大神は個性使って勝手にオイラの思考読んでわめいてるだけだからな!?人の思考読んで泣くとか失礼にもほどがあんだろ!」
「泣かれるほどやべー思考晒すなっての」
「女子を目の前にして耐えられるわけないだろ!?」
今後峰田くんの心を読むのはやめよう。ろくなことが無さそうだ。お茶子ちゃんも「行こ」と少し冷めた顔で私を峰田くんから遠ざけてくれた。
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