損ねる機嫌
翌日登校すれば、上鳴くんは昨日どうだった?と聞いてきた。
「噛みつかれた」
「は?」
「話しかけてくんなって言われた」
「おいおい…何失敗してんだよ」
そんなのは私が聞きたい。どこがいけなかったのか全く解らなかったのだから。
「あとごめん、果たし状って書いたの上鳴くんって言わされた。上鳴くん殺されるかも」
「何言ってくれてんだよ、まじか」
「何かされたら言ってね、私がこらしめるから」
「ろくに話せないのに何言ってんだ」
話せないからこそ、話す口実が欲しい。話しかけるなとか言われれば、むかつくから逆に話しかけたくもなる。
上鳴くんとこそこそと勝己くんに関する話をしていれば、勝己くんが登校してきた。目が合った瞬間に勝己くんの目付きが更に悪くなり機嫌を損ねたことに気が付いた。
「何あれめっちゃ怖…」
「俺今日中に殺されてもおかしくねーな…」
どういうつもりでキスをしてきたのか知らないが、そんな相手と目が合って機嫌悪くするっておかしくないか。私のこと好きなのか?なんてことが頭を過ったりはしたけども、あまりのジャイアンっぷりのせいで、気まぐれでしたとか、逆に嫌いだから嫌がらせでしたとか、その辺の理由なのかとも思ってしまう。
「…なんかね、体育祭終わるまでは話しかけて欲しくないみたいだからとりあえず様子見てみる。で、ちょっとむかつくからそこからは私から無視してみて、あっちがどうでるか見てみる」
「強気かよ」
「だって私ばっか気にしてるみたいでやだもん」
勝己くんが、あの頃と同じ気持ちを少しでも持っていて、私とヒーローになりたいとか少しでも思ってくれているのなら、私はこのまま頑張りたい。でも、もうそんな気持ちも無いのなら、私がヒーローを目指す動機も無いし、このまま他の動機が見つからなければヒーローになるのは諦めたっていいくらいだ。そのくらいには、私の心の奥底には、あの頃の泣きそうな勝己くんの姿がある。
「佐伯みたいな幼なじみが居るのに無視すんのもったいねぇな。緑谷みたいに慧ちゃんって呼んでも許されるわけだろ?」
「別に私のことを慧ちゃんって呼ぶ分には何も問題無いよ?」
「えっ、まじで?じゃあ慧ちゃんって呼ぶわ」
「いいよ」
「慧、あんまり気許すとこいつ調子に乗るよ」
「あ、響香ちゃん。おはよ」
上鳴くんが嬉しそうだからいいかと思ったけど、響香ちゃんの忠告が入った。調子に乗られると私に被害でもくるのだろうか。
「慧ちゃんが良いって言ってんだからいいだろ」
「下心見え見え」
「下心の無い男なんかいねーっての!」
じゃあ勝己くんにも下心とかあったりするのだろうか。下心ってどういう意味だっけ。
「なぁ、ついでに俺のこと電気くんって呼んでも、」
「だからそれはしないってば」
「ちくしょう!」
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