読めない思考


「ねぇ爆豪くん、一緒にご飯行こ」

私は上鳴くんに言われた通り、話しかけてみることにした。とりあえずお昼を誘ってみたのだが勝己くんは真顔で無視して立ちあがり、一人で教室を出ていった。

「ど、どうしたの慧ちゃん。入学初日のリベンジ?」

たまたま近くで聞いていた出久くんに心配そうに聞かれた。その通りリベンジである。

「やっぱ腹立つ…。出久くんご飯行こ」
「えっ!う、うん、いいよ!」
「お茶子ちゃんも行こー?」
「はーい!」

とりあえず、勝己くんに話しかける作戦第一段は失敗した。
お昼ご飯を食べ終わったあと教室に戻れば、作戦失敗の様子を上鳴くんも見ていたらしく、話しかけられた。

「なぁ、話しかけるの、人目の無いとこのがいいんじゃね?」
「なにそれ」
「爆豪も思うとこあったら教室なんかじゃ話せないかもしれないし」
「なるほど」

だが人目の無いところへ勝己くんを連れ出すことがまず難しい。ちょっとついてきて、と言っても来ないだろうし。そうなると、手紙か何かで呼び出すしかないのでは。
さっそく行動に移すべく、購買に便箋を買いに行った。可愛い便箋に書いてやろうかと思ったけど、ラブレターだと勘違いされても困るし、勝己くんのことだからラブレターだと思った瞬間に爆破させてもおかしくない。私は無難に白の封筒と便箋を購入した。
放課後、皆が帰るまで上鳴くんと喋って時間を潰し、二人になったところでやっと便箋を取り出した。

「封筒にさ、果たし状って書いとけば絶対読むんじゃね?」
「あー、確かに」

ためしに封筒に果たし状と書いてみたのだが、いかんせん私の字が女子の字なので説得力が無かった。だから代わりに上鳴くんに書いてもらえば、きちんと男子が書いた感を演出できた。本文については自分の手で、放課後屋上で待つ、とだけ書いておいた。
やってることが馬鹿みたいで、上鳴くんとくすくす笑いながらその果たし状を勝己くんの机に入れておいた。明日登校したら気付くだろうし、楽しみだ。



翌日、ゆっくりめで登校して教室に入ってみると、ちょうど勝己くんは果たし状を開いていた。ドキドキしつつ自分の席へむかえば、ボン!と音がして果たし状が消し炭になっていた。

「上等じゃねぇか…ぶっ殺したる」
「おっかねー」

やばいな私、殺されるのかな。違う意味でドキドキしていたら上鳴くんがアクビをしながら登校してきて気が抜けた。

一日中、勝己くんに殺される不安を抱きながら過ごし、やっとやってきた約束の時間。上鳴くんは他人事だからテキトーに、がんばれ!と言ってくる。ホームルームが終わってすぐ教室を出て、屋上に向かったと思われないよう遠回りして屋上に出た。他には誰も居なくて、ホッとした。
待つこと6分、屋上の扉が開かれ、お待ちかねの人物が現れた。

「ごめんね、呼び出して」
「…あの果たし状お前か」
「うん」
「中と外で筆跡違ったろ。誰の字だ」
「え、そんなとこ気付いてたんだ?」
「答えろ」

勝己くんなんでそんな怖い顔してるの。いやいつもだけど。今日格段に怖いのは、やはり果たし状なんて送りつけてしまったせいか。

「…上鳴くん」
「アホ面か、殺す」
「いやいやいや」

そんな怖い顔のまま勝己くんは近付いてきて、私は思わず後ずさる。

「果たし状って言うからには喧嘩売ってんだよな?あ?」
「ご、ごめん、昨日無視されたから、そうでもしなきゃこうやって話せないかと思って」
「あぁ?そんなに俺と話したかったんか」
「…うん。だって、久々に会ったのに、まだまともに会話してない」

やっと会話できているのに、勝己くんは怖い。ほんとはもっと落ち着いて話したいし、昔みたいに、笑顔を向けられたい。

「お前、なんで雄英入った?」
「…自分で言ったこと覚えてないの?」
「なめんな、覚えとるわ」
「私のこと、覚えてたの?」
「忘れるわけねぇだろが」

まるで馬鹿を見るような顔でそう言い放ってくる。私のこと誰?って言ってきたくせに。馬鹿はそっちじゃん馬鹿。

「俺のためにここまで来たっつーことだよな?」

自信満々で、意地悪く口角を上げてそう言われた。その通りだけど、認めるのがなんだか悔しい。でもこの話の流れで否定したところで悪あがきでしかないし、私はただふてくされた。

「つまんねー顔すんな笑え」
「いたっ、」

目をそらしたせいなのか、女子の頬をつねる力とは思えない強さで頬をつねられた。抵抗しようとしたがそんな隙すら与えられず、近付けられた顔がそのまま私にぶつかってきた。
拝啓、上鳴電気くん。男子高校生がそう簡単には噛みつかないなんていうのはただの上鳴くんの思い込みでした。簡単に噛みつかれました。

「なっ、に、してんの」
「高校生にもなってキスも知らねーのか」
「知ってるよ!なんでって聞いてるの!」
「しちゃ悪いか」

勝己くんは悪びれる様子もなくそう告げた。いや、悪いよ。私初めてだったんだけど。何軽く奪ってるの。

「…つまんねぇ。お前体育祭終わるまで話しかけてくんな」
「えっ、何その期間」

何に納得いかなかったのか、勝己くんは私を突き放して校内へと戻って行った。せっかく二人で話せたのに、私はどこを失敗したんだ。また、なんか知らないけど体育祭終わるまで無視されるのかな。それ普通にむかつくんだけど。なにそれ。

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