俺のもの



とうとう勝己くんに話しかけても許される日が訪れた。無事に雄英体育祭を終え、勝己くんが選手宣誓した通りに一位を獲得した。お祝いの言葉でもあげたかったけど、勝己くん自身がその一位に納得できていないみたいだったからそのことに触れるのは控えた方が得策かと思った。


「佐伯さん、好きです!付き合ってください!」

体育祭を終えてから、呼び出しをくらうことが増えた。もちろん果たし状ではなく、ラブレターの方だ。
個性のすごさを認められ、ついでに私の女子としての魅力も認められているということだから、めちゃくちゃ舞い上がった。知らない男子からばかりだから全部お断りしているけど、気分は良かった。


「ただいまー」
「また呼び出し?」
「うん」
「よく全部律儀に行くよな、ほっときゃいいのに」
「待ってたら可哀想だもん」

毎日のように昼休みや放課後の時間を少しずつ奪われていたが、私が行かなければ相手がいつまでも待ってしまうことになるのが気の毒で、放置なんかできなかった。

「全部断ってんの?」
「うん」
「なんで?遊んでみればいいのに」
「遊んでてヒーローになれなかったら困るもん」

勝己くんに嫌いだとかどうでもいいだとかはっきり言われるまでは、きちんとヒーローを目指したい。付き合いたいとか結婚したいとか、今のところそういう願望は私には無い。

「おい」

突然背後から声をかけられ、振り向けば不機嫌な勝己くんが立っていた。

「何、爆豪くん」

呼べば更に眉間にシワを寄せて、怒りを露にさせてきた。周りに緊張感が走るのが解ったけど、機嫌なんかとってやるものか。

「放課後残れ。話すぞ」
「…放課後、電気くんと遊ぶ予定なんだけど」
「あぁ?」

嘘をついてみれば、勝己くんは上鳴くんを目だけで殺せそうな勢いで睨み付けた。ごめんね上鳴くん。意地悪を言うだけで怒る勝己くんがちょっと面白くて、ついにやけた。

「アホ面、譲れ」
「え…あ、お、おう、」
「私は先に約束した人と遊びたいんだけど」
「てめぇ…」

上鳴くんを巻き込んでしまったのは申し訳ないけど、勝己くんが自分から話しかけてくれたことが嬉しくてにやにやが止まらない。そのせいで余計に怒らせている気がするけど。

「だったら今来い」
「えっ、今?」

力強く腕を掴まれて、引っ張られて立ち上がった。

「待ってよ昼休憩そんな時間無いけど」
「黙ってろ」

やばいな、ほんとに怒らせちゃったかな。そのまま教室から連れ出されるときに、振り向いてみれば教室に居た全員にはガン見されていたし、上鳴くんは不安そうな顔をしていた。やばいなこれ、後で何て説明しよう。
どこまで行くのかと思えば、屋上まで連れ出され、それでも腕は離してもらえなかった。

「なんで」
「え?」
「なんで体育祭終わっても話しかけてこねぇんだよ」
「…体育祭終わったら話しかけろとも言わなかったじゃん」
「言わなくても解んだろ」
「解んないよそんなの」

触れ合える距離で睨まれるのは、さすがにびびる。昔よりも迫力を増している。

「あと、なんで名前で呼ばねぇ」
「…そっちこそ、呼んでくれないじゃん。私の名前まで忘れたんじゃないの」
「慧」

あ、覚えてたんだ。ほっと一息ついたら、腕を引かれて抱き寄せられた。またしても勝己くんに隙をつかれてしまった。

「他の男に渡す気はねぇからな」
「…え、何を?」
「テメーをだわ」

何その独占欲の塊みたいな発言は。私別に勝己くんのものになった覚えは無いし、そんなこと言われても。

「覚えとけよ」

勝己くんは一方的にジャイアン発言をして、私を解放して校舎に入っていった。もう昼休憩も終わりそうだったから、私も勝己くんのあとを追いかけた。

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