続かない会話



「行くぞ」

昼休憩に入って、教科書を机にしまっている段階でもう勝己くんは私の元までやってきていて、声をかけてきた。私の返事を聞かぬまま教室を出ていこうとするから、慌てて机の上を片付けて、勝己くんを追いかけた。

「はやいよ」
「慧が遅いんだろ」

隣に追い付いて文句を言えば、理不尽なことを言ってくる。勝己くんの世界はやはり勝己くんが中心で回っているようだ。
食堂について、勝己くんは麻婆豆腐を頼み、私は親子丼を頼んで適当に席についた。何となくわかっていたことではあるけど、視線が痛かった。体育祭1位の勝己くんと、上位にはなれなかったがそこそこ目立ったこの私。ちらちら見られてすごく食べづらかった。

「やっぱ、皆見てくるね」

勝己くんはそんなこと何も気にならないのか、私の言葉すらも無視してご飯を食べ進めた。勝己くん食べるの早いし、このままでは食べ終わったら1人取り残されそうだ。

「他の奴なんざ気にしてんじゃねぇ、どうでもいいだろ」
「だって気になるし」
「今は俺と飯食ってんだろうが」

それとこれとは別だろう。一緒にご飯食べてるから周り気にするなと言うくらいなら、何か他愛のない話でもしてほしい。無言で居られたら周りに意識が向いてしまうし。

「勝己くん、なんで私誘ったの?話でもあった?」
「は?」
「違った?」
「話なんかねぇわ」

わからない。勝己くんのことがわからない。無駄話するような人間じゃ無いことは理解できているけれど、必要な話すらしてくれない人間になってしまっている気がする。もうちょっとでいいから上鳴くんを見習って口を軟らかくしてほしい。

「はよ食え」
「え、あ、ごめん」

いつの間にか勝己くんは全て食べ終えそうで、私も急いでご飯をかきこんだ。意外なことに、勝己くんは自分の分を食べ終えても先に帰ったりしなかった。しなかったが、私の前に居座ったまま、私がご飯を食べるところをまじまじと観察してきた。周りの視線だけでも食べ辛かったのに、勝己くんのせいで余計に食べ辛い。

「…お前、変わったよな」
「へ?な、何が?」
「…別に」

勝己くんこそ、昔と違って無愛想だし素直じゃ無くなっちゃったよ。前は俺つえー!って感じでにこにこしていたのに。勝己くんも成長したということだけれど、素直な笑顔が見れないのは寂しい。

「食ったなら戻んぞ」
「うん、ごちそうさま」

素直じゃ無いけど、食べ終わるまで待っててくれたのは勝己くんの優しさなのだろうか。食器を返却して、二人で一緒に教室に向かった。勝己くんは歩くペースが少し速くて、やっぱり優しくなかった。

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