いってきます
「全寮制ねぇ…」
今日は相澤先生とオールマイトが家に来ていて、親に全寮制の説明をしていた。私は父に寮だとしても生きていけるし雄英に通い続けたい思いは伝えてあった。だけど今日、父の表情は暗かった。
「正直言うと、うちの大事な一人娘をそちらに預けるのは不安ですよ」
「なっ…父さん!」
先生たちからも緊張が伝わってくるし、ここでダメだと言われたら私の夢が、人生が終わってしまう。
「例の爆豪くんって、最近慧と仲良い子だよね」
「そうだけど…」
「狙われている子と一緒に居るからってことで慧がついでに狙われる可能性だって充分あるよね」
「はーー?そんなこと言ったらクラス全員危ないじゃん、なんで私だけダメなの」
「心配なんだよ」
母さんの居ない今、私には父さんしか家族がいなくて、逆もしかりだった。だからこそ、私が心配なんだろうけど、でも、ヒーローになれなきゃ意味がない。
「ていうかね、先生、ちゃんと寮に居るときもうちの子の安全は保証できますか?家なら僕が居るからいいものの、寮なんて子供たちだけしか居ないんでしょう?」
「おっしゃる通りではありますが、寮はセキュリティも完備していますし、ある程度防犯カメラもついています。そもそも雄英の敷地内に建てたものなので、警備はしっかりしています」
そーだそーだ、危ないわけがないじゃないか。
「うん…でしょうね。ほんとは心配してるのそこじゃないんです」
「はい?」
「寮なんかになって、うちの大事な娘がどこの馬の骨だか解らんようなクソガキに手を出されるようなことがあったら不安で不安で!」
「ばーか!」
父さんは勢いで抱き付こうとしてきたから、念動力で止めておいた。
「だって例の爆豪くんだって同じ寮なんだろ!?ていうかクラスのほとんど男の子だろ!?むりむり!男子高校生なめちゃだめだって!」
「クラスごとの寮にはなっていますが、男女で棟は分けていますのでご安心頂ければ」
「僕だって女子寮忍び込んで母さん取っ捕まえたんだから爆豪くんだってそのくらいするさ!」
「勝己くんを父さんなんかと一緒にしないで!!」
「男なんか皆考えることは一緒だよ!」
「先生たちはそんなこと考えないですよね!?」
「もちろん」
「さすがにね」
「ほら!!」
今来ているのがこの二人で良かった。ミッドナイトとかプレゼントマイクだったらこの事態を更に大変なことにしていたかもしれない。真面目な先生たちでよかった。
「ていうか父さんの心配ってそれだけ?」
「あとね、寂しい」
「それだけ?」
「うん」
意外としょーもなかった。あれだけの事件に巻き込まれたのだから、もっと危険な方の心配をされるものかと思っていた。
「全寮制と言っても、敷地外に出られない訳ではありません。慧さんが帰ろうと思えば案外簡単にお父様のもとへ行くこともできます」
「あ、じゃあおっけーです」
「いいの!?」
「うん」
拍子抜けだった。先生たち来たときあんなに険しい顔をしていたくせに。
「寂しいからって引き留めてたら、慧がやりたいことできないだろ?そりゃあ寂しいけど、ヒーローになりたいならなってほしいし、慧が選んだ男の子ならクズじゃなければ幸せになってほしいし」
「父さん…」
「寂しいけどね」
「…許可、ということでよろしいでしょうか?」
「うん、寂しいけどね!!」
こうして父から入寮の許可を得ることができた。おかげでオールマイトも安心したのか笑顔になっていて、私もほっとした。父さんのことは家に押し込めて、先生たちを外まで見送った。
「すみませんでした、厄介な父で」
「いいや。それより、佐伯も案外きついとこあるんだな。もう少し父親には優しくしてやれよ」
「…解ってますよ」
家だとどうしても気が緩んで子供のような態度をとってしまう。気をつけなければ。
「でもなんか、爆豪少年と仲良しな理由ちょっと解ったよね」
「そうですね」
「い、家で口が悪いのは内申に響かないですよね」
「心配なら直すんだな」
「…努力します」
きっと無理だけど。口の悪い勝己くんにうつされた口調が、怒るとどうしても出てしまう。せめて怒らないように生きていこう。
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