咄嗟の判断



今日は人命救助訓練に行くとのことだった。戦闘には抵抗があったから、こっちの方ができる気がした。
他の皆もヒーローらしいことができるとワクワクして、着替えてバスに乗り込んだ。

「緑谷ちゃん、あなたの個性、オールマイトに似てる」
「!そそそそうかな?いやでも、僕はその」
「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトはケガしねえぞ、似て非なるアレだぜ」

なんとなく個性の話になり、出久くんの話になった。たしかに言われてみれば、増強型の個性だし、少し似てる。まぁ切島くんの言う通り、精度とか色々、全然違うところもあるけど。

「佐伯の念動力も派手で良いよな。戦闘訓練は轟に圧されてアレだったけどさ、俺入試のとき佐伯見かけたけど、すげー派手でかっこよかった」
「えっ、あ、ありがと」
「なんつーか、顔に似合わず暴れ散らしてるって感じだったな」
「まじか、俺も佐伯が暴れるとこ見てみてぇ」
「やめてやめて」

入試のとき切島くん近くに居たのか。全然覚えてないや。あのときたぶん必死すぎて仮想敵を破壊することしか考えてなかったから、ヒーローというよりも敵よりの思想で動いてた気がする。だから暴れているように見えたに違いない。

「派手で強えっつったらやっぱ、轟と爆豪だな」
「ケッ」

勝己くん、褒められてるんだからその態度はどうなのさ。昔は褒められたら素直に喜ぶ良い子だったのに。

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」
「んだとコラ出すわ!!」
「ホラ」

梅雨ちゃんてば勝己くん怒らせて平気なんて、胆が座ってる。私ですらまだ勝己くんを怒らせて平常心を保てるとは思えない。
皆ではしゃぎながら過ごしていたら、バスも目的地に到着した。

「すっげーー!!USJかよ!?」

人命救助訓練と言うからには廃墟のようなところへ連れていかれるのかと思いきや、割りとアトラクション施設のような風貌だった。楽しみだ、なんて言うのは不謹慎かもしれないが、個性を人助けの方向に生かす訓練をするのだから楽しみに思ってしまう。

13号先生の、施設の説明やら何やらを聞き、自分の個性の危険性を改めて認識する。私だってこの個性で人を傷つけたことがあるし、もうそんな使い方したくない。この訓練で、ヒーローに近付くんだ。

「以上、ご清聴ありがとうございました!」
「ブラボー!」

やっと訓練が始まる。気を引き締めたところで、相澤先生が声をあらげた。

「一かたまりになって動くな!!」
「え?」
「13号!生徒を守れ!!」

先生の視線の先には怪しい人達が何人もわらわらと現れた。入試の時みたいに突然始まるアレかとも思うが、先生の慌てっぷりからそうではないことがわかる。

「あれは敵だ!!」

まさか本物の。先生は単身で敵の方へと突っ込み、戦闘に出向いた。普段の気だるさからは想像もつかないような機敏さで、ヒーローらしく敵を倒す姿は、かっこよかった。

「早く避難を…」
「させませんよ」
「!!」

避難しようとしたら、目の前に闇の塊のような敵が現れた。私たち生徒に、先生の足を引っ張らずに戦う術がわからない。けどきっと今、一番手短に、敵にばれずに個性を使えるのは私だ。皆を避難させるためにも、私の念動力を使わないと。たとえ相手が、敵で、人間だとしても。
躊躇っている間に、敵に突っ込む姿があった。勝己くんと切島くんだった。

「俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
「危ない危ない…そう…生徒といえど優秀な金の卵…」

二人ともほんとに私と同級生なの?かっこよすぎでしょう。やらなきゃいけない私が、何もできていないのに。

「ダメだ、どきなさい二人とも!!」

13号先生の注意と同時に、敵の出す闇が、私たちを覆った。何をされるのか解らないけど、一かたまりになれと相澤先生の指示があったんだ。私は個性で、少し離れていた勝己くんと切島くんを近くに引き寄せた。闇に飲まれる前に、勝己くんは私を目で捉え、私に手を延ばしてきた。姿が見えなくなる前に私もぐっと手をのばし、勝己くんの手を握った。

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