久々の会話
気付けばさっきと違うところに居て、目の前にはたくさんの敵がいた。背筋がゾッとしたが、私の手が握られていることに気が付いた。
「うわ、まじか!」
「騒ぐなや」
どうやら私は勝己くんと切島くんと一緒に皆と違うところに飛ばされてしまったらしい。状況を認識すれば、勝己くんは私の手を離した。
「戦闘型の俺らをまとめて飛ばしたこと、後悔させてやんよ!」
「ガキが調子に乗るなよ!!」
「爆豪!」
勝己くんが飛び出したことにより、口火は切られた。私は別に戦闘型なんかじゃないのに、と思ったがそんなこと考えていられない。女の私にも容赦なく敵は突っ込んでくるから、念動力で相手の動きを止めたり転ばせたりして動きを封じた。
「死ね!!」
勝己くん、敵じゃないんだからそんな掛け声はやめてほしい。爆風がすごいし、近くで見る勝己くんの個性の威力を思い知る。
「うおらっ!!」
「わっ」
勝己くんに目を奪われた隙に敵が近付いてきていた。攻撃を防ぐだけのつもりが、驚いて敵を飛ばして建物の壁に穴を空けてまで遠くに吹っ飛ばしてしまった。
「やるな佐伯!」
わざとじゃないよ。
しばらく闘っていたら、気付けば全員床に転がっていた。敵といえど人間だし、気絶するほどの怪我をさせてしまったことに罪悪感を覚えてしまう。
「これで全部か。弱ぇな」
「っし!早く皆を助けに行こうぜ!攻撃手段少ねぇ奴等が心配だ!」
私もそう思う。思うけど、ちょっと体力が足りない。緊張しながら全力を出したせいで、想定外に疲れている。このままだと、足を引っ張ってしまう。
「行きてぇなら一人で行け。俺はあのワープゲートぶっ殺す!」
「はあ!?この期に及んでそんなガキみてぇな…」
「うっせ!敵の出入口だぞ。いざって時逃げ出せねぇよう元を絞めとくんだよ!」
勝己くんが行くなら、私だってたとえ遠くからでも、個性でサポートしたい。
私も行く。そう伝えようとしたら勝己くんは突然後ろを振り返り、なにかを掴んだのか爆破させた。姿を消していたらしい敵が、爆破によって姿を現し床に崩れた。
「つーか、俺ら生徒に充てられたのがこんな三下なら大概大丈夫だろ」
「…つーか、そんな冷静な感じだっけ?おめぇ…」
「俺はいつでも冷静だクソ髪やろう!!」
「あぁ、そっちだ」
俊敏な動きに感心したのに、やっぱり勝己くんは口が悪い。それで切島くんがホッとしてるからもうそれで何も問題無いのかもしれないけども。
「じゃあな、行っちまえ」
「待て待て、ダチを信じる…!男らしいぜ爆豪!のったよおめぇに!」
「わっ、私も一緒に行くから!」
「男らしいぜ佐伯!」
「女子だけどね!」
皆が大変で、勝己くんや切島くんがまだやれると言っているのだから私が疲れて弱音を吐く暇はない。私だってヒーローになるんだから、本当に潰れるまで戦おう。敵を倒す罪悪感はあるけれど、それよりも、仲間が傷つく方が嫌だ。
三人で倒壊ゾーンを抜けて皆の元へと向かうけど、勝己くんがとにかく速い。私は普通に走っても追い付けないから、個性で自分の体を飛ばして移動した。
「佐伯のそれかっこいいな、普通に空飛んでる」
「走るの遅いから」
「基礎体力くらい付けやがれ」
「う、うん」
無事に帰れたら、トレーニングして体力を付けよう。個性だけでどうにかなるだろうとか甘い考えがあったけど、現実を思い知ってしまった。このままではいけない。
「それと、敵に攻撃すんの躊躇ってんだろ」
「え…」
「見りゃ解る。まだ咄嗟の判断で攻撃できねぇなら、ワープゲートんとこ着いたら下がってろ。俺と切島で行く」
「で、でも、」
「命落とすぞ」
足を引っ張りたくない。でも、力になりたい。足を引っ張らずに戦えるかと問われれば、胸をはってはいと答えられるほどの自信はない。
「自分の命くらい自分で守れ」
「…うん」
他の敵が、私たちが相手したやつらほど弱いとは限らない。ワープゲートの人とかリーダーっぽい人たちは、きっと、もっと強い。今の私にできるのは、自分の命を守るくらいだろう。
「…下がっとくけど、遠くからでも、個性で手助けする」
「ありがとな、助かる」
勝己くんは優しい言葉なんてくれないけど、切島くんの言葉で少し救われた。
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