相談窓口
あのあと、騒動は駆け付けたプロヒーローたちによって封じられた。逃げた敵も居たけど、大半は捕獲できて、私たちは誰一人死ぬことなく、帰還することができた。相澤先生と出久くん、オールマイトはひどい怪我をしてしまったけれど、他は皆普通にしていられる程度の軽症だった。
一日の臨時休校を経て、すぐに三人とも復帰して、二週間後に雄英体育祭が開催されることを告げられた。
「はぁ…」
「佐伯元気無いじゃん、どーした?」
「私…無力で…」
「いやいや、どこがだよ」
不意についたため息を、隣の席の上鳴くんに気付かれてしまった。
「USJでもめっちゃ戦ったらしいじゃん、切島に聞いたぜ?」
「体力無いってダメ出しされたし、人に個性使うの敵にすら躊躇ってるって突っ込まれた…」
「あー、もしかして爆豪?あいつそういう奴じゃん」
「…でもほんとのことだもん。人に個性使うの、怖い。怪我させたことあるから、戦いたくない」
それもまだコントロールがうまくいかない頃の話だけど。でも、その時のことを思い出すと、人に使うのは不安になる。
「でも調整できんだろ?んなこと言ったら俺だってこの個性、人に使うときめっちゃ気ぃ使うし。皆一緒だって」
「…体育祭、怖くない?また戦わなきゃいけないんでしょ?」
「まぁでも、リカバリーガールいるし。怖い怖いって言って引き下がってたら強くなれねぇよ」
ヒーローになるために、強くなるためには、人に対しても使えるようにならないと。
「あと二週間あるしさ、ダメ出しされた体力だって少しは鍛えられるし、そんで自信付けば対人でもいけるって」
「だといいけど…」
「そんなへこむなって。美味いもんでも食べに行くか?俺どこまででも付き合うよ?」
「行く…」
「まじで!?ラッキー!え、何好き?何食べる?」
軽く返事をしてしまったが、なんだかめちゃくちゃ喜ばれている。一体何なんだ。
「パンケーキ…」
「重いな!でもいいぜ、そんで佐伯が元気出るならオッケー!」
よっしゃーデートだ!なんて喜び方をしていたけど、これはデートではない。上鳴くんの口車に乗せられてしまっただけだ。
そんなこんなで、放課後上機嫌な上鳴くんと一緒にパンケーキの美味しいお店に向かうことになった。
「やー、嬉しいな。まさか佐伯とデートできるなんて」
「だからデートじゃないってば」
「男女が二人でパンケーキって誰がどう聞いてもデートじゃね?」
「…上鳴くんと二人で出掛けるのやめようかな」
「わー!ごめんなさい!」
こちらこそデート気分じゃ無くてごめんなさいだよ。
「ほら、パンケーキ来たぞ!うまそう!佐伯見ろこれ!」
「美味しそう!」
「な!食おうぜ!」
気分は沈んでいたけれど、甘い香りと共に運ばれてきたパンケーキの輝きで元気を少し取り戻した。一口食べれば、ぶわっと幸せが口いっぱいに広がって笑みが溢れた。
「美味いな!」
「うん!」
上鳴くんの誘いに乗って良かった。救助訓練からずっとへこみっぱなしだったから、落ち込んだ気持ちが和らいだ。
「俺さ、こんなことで良ければいつでも付き合うし、俺で良ければ話だって聞くからな」
「優しいね」
「だ、誰にでも言う訳じゃねーからな?」
「そうなの?上鳴くん皆に優しいと思うけど」
「え、そう見える?ありがと。…じゃなくて!俺まじで、佐伯の笑顔が見たいからさ。何でも話してくれていいから」
さっき教室で話したことがほとんどなんだけどな。でも、私のためを思って、実際にパンケーキまで一緒に食べに来てくれてるわけだし、ほんとに優しい。
「…そこまで言うなら、お話聞いてくれる?」
「もちろん!」
「爆豪くんの話なんだけど」
「なっ!何それ、こ、恋話…?」
「恋はしてない」
「な、ならよかった、どうぞ、お話くださいませ」
「なんで敬語?」
ずっとモヤモヤしていたことを、話すことにした。聞きたくなんかないかもしれないけど、聞くって言ったのは上鳴くんの方なんだから。
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