ヒーローになれ



「そのときはヒーローになろうってとこまでは思ってなかったけど、私四年生のときに親の都合で引っ越すことになっちゃってさ。そのとき勝己くん泣きそうな顔で、俺はヒーローになるから慧も絶対ヒーローになって俺の下で働けって言ってきたの。大人になってから私がヒーローに居なかったら勝己くん悲しむかなって思って、その時の約束守ってヒーローになるため雄英入ったんだけど……全然喋ってくれないんだよね。へこむ」

最近へこんでいる原因のひとつを話して見れば、上鳴くんは真顔になっていた。何その顔。

「俺って今何の話聞いてたんだっけ。緑谷の初恋の話?爆豪の初恋の話?」
「どっちも違うし私の憂鬱な話なんだけど」

何でも話してって言ったくせに。

「この通り、めちゃくちゃ勝己くんと仲良しのつもりだったのに高校で再会したら誰?って。ひどくない?私それからなるべく無視しちゃってるんだけど、向こうからしゃべってきたと思ったら基礎体力無いとか下がってろとかでもう、ほんと、へこむ、へこみすぎて穴空きそう」
「結論なに?爆豪とまた友達になりたいって話?」
「…え、わかんない。ただムカついたから、愚痴聞いて欲しかっただけ」
「いやいや、聞いた感じそうとしか思えないからね?」

そうか、私は勝己くんとまた仲良くしたいのか。そりゃあまぁ、再会して嬉しかったし、できればまた話したいけど、勝己くんなんか怖いし、喋ってくれなさそう。今喧嘩したら勝てる気が全くしないし、どうするべきか。

「あと全く関係ないけどその出久くん勝己くんって呼び方めちゃくちゃ可愛いから俺も電気くんって呼んで欲しい」
「あらぬ誤解を受けそうだから遠慮しとく…」
「ちくしょう!」

しかししまったな、勝己くんだなんて呼んでいたことが少なくとも一人にばれてしまった。もし誤って教室でこの呼び方してしまったら、皆に詮索されて勝己くんに迷惑をかけてしまいそうだ。徹底して爆豪くんと呼ぶようにしておかなければ。

「でもさ、爆豪ほんとに覚えてねーの?」
「…いや、たぶん思い出してるっぽいけど、それで何もそれっぽいこと言わないから、なんかもう私のことどうでもいいのかなって。友情レベル初期化されてる気がする」
「じゃあまたゼロから仲良くなればいいんじゃね?話しかけてみろよ」
「…怖いよ」
「噛み付かれるわけでもあるまいし大丈夫だろ」
「噛み付かれたらどーするの」
「男子高校生がそう簡単に女子に噛み付かねーわ」

勝己くんが悪人面だからって、あくまでヒーロー科の人間だ。私が話しかけたくらいで怒ったり噛みついたりするわけがないのも解るけど。私がヒーローになる動機は勝己くんなのに、その勝己くんに他人扱いでもされたら、今度こそヒーローになるのを諦めてしまいそうだ。

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