一歩ずつ寄り添って
「俺から提案があるんだけど聞いてくれる?」
「大事な話なら座ってしてください」
電気は私の仕事終わりに私の家に来て、ソファに寝転がっていた。突然来たことにイラついてはいたが、疲れているだろうと思いご飯を作っていてあげた。叱ればきちんと起き上がって、寝転がって崩れた髪のまま私に顔を向けた。
「一緒に暮らそ」
電気からの提案は突然すぎて、びっくりしてフライパンに直接手を触れてしまった。
「あつっ!!」
「はっ!?いや、何してんの、そんなびっくりした?」
火を止めて水道水に手をあてれば、電気も心配して来てくれた。
「びっくりするよ。私らまだ付き合いだしたばっかだよ」
「別に、今までもお互いの家行き来してたじゃん」
「電気の家三回くらいしか行ったことないけどね。それもみんな居るときだし」
「…俺は何回かここ来てるじゃん。仕事終わって家に入って幸が居て、それすげーほっとすんの。だから今までも彼女居たときも来てたんだけど、彼女居ても、仕事終わりに落ち着くために会いたいのは幸だったんだよな」
ほんとに気付くの遅いよ。電気は本当に鈍い。彼女居るのに他の女の家とか罪じゃん。ヒーローのやることじゃないよ。
「…だから、一緒に住みたいの?」
「うん」
「私もヒーローなんだよ。電気が帰っても、私も仕事かもしれない」
「そしたら俺がご飯作るし、幸の帰り待つだけじゃん。幸もさ、帰ってきて俺がご飯作って待ってたら嬉しくない?」
「んー……うん、嬉しいかもね」
「じゃあいいじゃん。俺の部屋広いし、来る?ここだとセキュリティ甘すぎて怖いし、大事な彼女一人で置いときたくない」
たしかに電気の家は部屋も広いし余っていたし、私一人そっちに住んでも問題無いかもしれない。でも同棲なんかしてしまったら、元に戻れないかもしれない。それでいいなら同棲してしまうけど、進むことが、少しだけ怖い。
「…私が、一緒に住みたいくらい電気のこと好きになるまで、待って欲しい」
「…まぁ、そうだよな。ごめん、なんか俺焦ったかも」
落ち込む電気が少し可哀想で、可愛くて、水道を止めてから濡れていない方の手で電気の頬に触れた。
「付き合えるくらいには電気のこと好きだから、あんまり落ち込まないで。気長に待って欲しい」
「…うん、ちゅーしていい?」
「また今度ね。ご飯持ってくから座って待ってて」
「…ん」
犬みたいな電気の頭を撫でてあげれば、大人しく食卓へと向かっていった。付き合えるくらいには好きなのにキスはダメって、自分でもおかしいと思う。でも電気のこと好きだし、電気が友達の壁を壊しにかかってきてくれているのだから、私だってそれに答えたい。
「はい、どうぞ」
「幸の気持ちさえ良ければ、俺いつでも待ってるから」
キスのことか同棲のことか、解らないけど電気の顔は真剣で、ほんとに私を受け入れてくれる気がした。私も本気で人と付き合ったことが無いから、怖いけど、電気となら良い気がした。
「ありがと。私、電気の笑顔も好きだけど、たまに見せてくれる真剣な顔も好きだよ」
「…照れる」
「照れた顔もね、好き」
「からかってるよな!」
「うん。でもほんとのこと」
私も少しずつ電気に惹かれているし、何事もなく相思相愛になれたらいいのに。
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