瞳を閉じて
あれから電気は仕事が終わるのが遅くても、ほぼ毎日会いに来てくれた。毎日ちゃんと連絡くれて、会ってくれて、楽しそうにしてくれて、幸せを感じていた。
「おはよ!」
私と電気の休みがかぶり、電気は朝から会いに来てくれた。朝は苦手なくせに無理したのか、家に入れてからあくびばかりしていた。
「眠いなら寝ていいんだよ?」
「ん、やだ…幸と居るのに寝たらもったいないじゃん…ふぁ」
電気は眠そうな目で私を見つめてくる。
「膝枕でもしようか」
「えっ、いいの!?あ、でもそんなことされたら絶対寝る…でも膝枕…でも…」
「足痛くなったらちゃんと起こすから。とりあえず寝なよ」
眠い電気は私の誘いを断れず、引き寄せられるように私の太ももに頭を乗せた。
「最高…埋もれて死ぬ」
「埋もれるほどのお肉は無いと思うんですけど」
「言葉のあやだって。…てか下から見上げる胸やべぇ」
「はやく目瞑る!」
恥ずかしくて怒れば、電気は目を瞑った。黙って目を瞑る電気の顔はとても綺麗で、改めて見て惚れ惚れした。
見とれていたら、規則的な寝息が聞こえてきて電気が眠りについたことが解った。
電気はアホだけど、これでも人気なヒーローだし、電気系の個性で強い。だから私より仕事が多いし、忙しくて疲れてしまうのだろう。
ひとまず電気を寝かせておくため、私はスマホをいじって時間が経つのを待った。ついでだから、電気の寝顔の写真を数枚撮っておいた。
「電気」
三十分ほど経ってから、喋れないのがちょっと寂しくて呼び掛けた。呼んでも起きる様子が無く、「起きてー」と声をかけながら電気の頭を何度も優しく撫でてみた。何度かそれを繰り返せば、さすがの電気も起きたらしく、重く開かれた目と視線が交わった。
「おはよ。そろそろ起きて、私に構って」
電気はしばらく私を見つめた後、手繰り寄せるようにして私の手を握った。
「やっぱさ、一緒に暮らしたい。起きたら傍に幸に居てほしい」
「…私が居ると、そんな嬉しい?」
「うん。嬉しいから、幸とならいつまでも一緒に居られる気がする」
握った手を引かれ、頬擦りされる。甘えてくる電気にはまだ戸惑うけど、嫌ではない。それに、可愛い。
「気がする、じゃだめだよ。ずっと一緒に居てくれなきゃ」
「幸がその気なら、俺はずっと一緒に居る」
「…電気のね、そうやってはっきり言ってくれるとこ好き」
「まじ?じゃあちゅーする?」
電気は頬擦りしていた私の手に、唇を寄せた。その柔らかい感触が、恥ずかしくて頬に熱が集まるのを感じた。
「してみよっか」
「まじで!?」
飛び上がる、という表現が正しいほどに勢いよく電気は起き上がった。私の顔をまじまじと見て、ごくりと喉を鳴らされた。
「やべぇ、俺すげぇ緊張してる」
「…私も」
電気の頬も赤いが、きっとそれ以上に私は赤くなっているだろう。キスする前からこれって、私たちやばくないか。
「と、とりあえず一回するから、嫌だったらすぐ嫌って言えよ」
「…ん」
「したらもう、俺幸と友達に戻れなくなると思うけど、いい?」
「…わかんない。でも、今すごく電気とちゅーしたいから、いいと思う」
「…目、瞑って」
緊張して、ドキドキして、電気に聞こえてしまうんじゃないかというくらい心臓がうるさい。目を閉じれば、電気の熱い手でそっと頬に触れられて、それから一瞬だけ、唇に柔らかな感触があった。すぐに離れてしまったから目を開ければ、間近で電気と目があった。
「…電気、すぐ不安そうな顔する」
「いや、だって、幸に嫌だって言われるの怖いし」
「嫌じゃないよ。私、電気のこと、キスできるくらいには好きみたい」
「…俺も好き。もう一回したい」
「ん」
見つめあって居たかったけど、もう一度するなら恥ずかしいなと思って目を閉じた。すぐにまた唇が重ねられ、ちゅ、と音を立てられた。大人しくしていたら、電気は何度も唇に触れてきて、執拗に私の唇を堪能してきた。もちろん、されればされるほど、私も電気の唇の感触を覚え込まされた。
「幸、」
呼ばれて目を開ければ、電気の熱い視線にくらっとする。
「俺、今まで会った誰よりも幸のこと好きだ」
「そうなの?」
「あぁ、まじで、今幸せすぎて死にそうだし、俺ばっか幸せ感じてごめん。幸大丈夫?今めっちゃ何回もしたけど嫌じゃない?」
「ふふ…私もね、幸せ」
幸せだけどこれ以上キスしたら心臓がもたなそうだったから、休憩するために電気に抱き付いた。すぐに電気も私を抱き締めてくれて、ほっとした。
「付き合おうとか、俺のくそみたいな提案のってくれてほんとありがと。おかげで今すげぇ幸せ」
「電気が幸せなら良かった。電気いっつも落ち着かなかったから、そろそろいい相手見付けて幸せになってほしいなって思ってたんだよ」
「うん、その相手になってくれてまじありがと」
「こちらこそありがと」
付き合ってしまったらきっと友達には戻れない。そんな不安を抱きながら付き合い始めたけど、そんなの忘れてもいいくらい、電気とのお付き合いは楽しくて、幸せだった。友達には戻れなくていい。むしろ、このままの関係を続けて、友達に戻りたくなくなってしまっていた。そんなことを思えるくらい、私は電気を好きになっていた。
- 7 -
←前・次→