知らない間に



悪い報せがあるから今すぐ会いたい。響香にそんな風に呼び出されたのは五時間前のこと。
何事かと思って駆け付ければ、見せられたのは週刊誌だった。そこには電気と、私の前に付き合っていたモデルの女の子の写真が載っていた。何日かに渡ってデートしたり、二人で電気のマンションに入っていったり、オシャレなレストランで食事をしている写真だった。どうやら先月、女の子の誕生日にも会っていたらしく、結婚間近!?という煽り文が書かれていた。誕生日翌日に喧嘩して愚痴を聞いたはずだったから、その写真が最後なら私は何も見なかったことにするつもりだった。だけど、今月また二人で食事をしている写真まであって、胸がザワついた。
ちゃんと話し合いなよ、と響香に言われて、私は大人しく家で電気を待っていた。

憂鬱な気分で晩御飯を作っていたら、呼び鈴を鳴らされた。電気なら合鍵があるはずと不審に思いながら玄関に行って、小窓で外を覗いてみれば知らない女が立っていた。チェーンをかけたままドアを開けてみれば、女は隙間から私を睨んできた。

「あんただよね、電気に付きまとってんの」

どこかで見たことがあると思った。昼間に週刊誌で見た、あの女だった。

「見たでしょ、週刊誌。電気まだ私のものだから、手出さないでよ。私から電気をとらないで」
「…帰って」
「はあ?私が帰ったらまた電気のこと誘惑して家に呼ぶんでしょ!やめてよ、電気と会わないでよ」
「電気とのことを他人に決められたくない。電気と話し合うから、貴方は帰って」

止められないように勢いよくドアをしめ、鍵もしめた。ドアの向こうでまだ何か言っていたけど、聞きたくなかった。ほっといたら足音が遠ざかって行ったし、そのうち電気も来るだろうと思ってチェーンだけは外しておいた。
台所に戻っても、電気のためにご飯を作るのも悲しくなってきて、作れなかった。なんだか泣けてきて、ソファに寝転がった。私を一番好きだと言ってくれた電気のことを、疑うわけではない。それでも、ただ、不安だった。

しばらくしたら鍵の開く音がした。電気に泣き顔なんか見せたくなくて、起き上がって涙を拭った。

「幸、泣いてんの?」

顔も見られていないのに、電気にばれた。電気はソファに、私の横に腰かけた。

「ねぇ電気、モデルの子、まだ終わってなかったの?」
「終わってる、もう終わらせてある」
「だって週刊誌の、あれ今月だったよね?もう私と付き合ってたよね。報告するって、電気言ったよね」
「ごめん…」

そこで謝るんだ。二人で会ったのに報告しなかったの、認めるんだ。

「けど、最後に会った日、あれ幸が切島と帰ってきたあの日なんだって。あの女により戻さないかって呼び出されて、ちゃんと振るために会った。そんで幸と付き合ってるから無理って言ったし、ちゃんと振った」
「…さっき、あの人ここまで来たよ」
「は!?」
「電気は私のものだから手を出すなとか、会うなとか、言われた」
「まじごめん…俺ちゃんと幸のもんだから、泣かないで」

私だけでなく電気まで悲しそうな顔をする。私だって電気にそんな顔させたいわけじゃないのに。

「あの日、ほんとに振ったから。それですっきりしたから幸に会いに行って、会いたかったから、帰ってくるまで待ってた」
「…二人で会ったら報告って話したの、その日じゃん。なんで言わなかったの」
「だって、もう完全に終わらせたやつだから、わざわざ言う必要無いかと思って…」
「…電気のバカ」
「ごめんって」

泣きたくない。怒りたくもない。それなのにむかむかして泣けてくるのは、電気のことを好きになってしまっているせいだろう。こんな思い、したくない。

「…合鍵、返して」
「えっ…いや、待てって、ほんとに俺あいつともう終わってるし、他の子とも遊んでないって」
「私、家出る。電気のとこ住む」
「……はい!?」

あんな女のせいで泣くのは悔しくて、袖で涙を拭って無理やり涙を止めた。

「私も妬いて泣いちゃうくらい電気のこと好きみたいだから、もう後戻りできなくする。電気と住んで、私も週刊誌とられて、結婚間近とか書かれたい。私そこそこ男性人気あるし、電気に捨てられたら電気のイメージダウンになるようにしてやる」
「えっ、あの、ほ、ほんとにいいの?怒り方めっちゃ斬新なんだけど」
「いいの!もう友達なんかに戻りたくないし、こんなに好きなんだからもう電気を誰にもとられたくない。たぶん私、電気の今までの彼女たちより独占欲強いかもしれないけど、その気にさせた電気が悪い」

怒った口調で喋ったにも関わらず、電気は笑顔で私を抱き締めてくれた。

「幸になら独占されたいし何されても許しちゃう」
「私は電気にまた同じことされたら許せない」
「んんっ…もうしないから、ほんとごめん」
「…私も、怒ってごめん」

何でも受け入れてくれてありがとう。口にはしないけど、伝わるといいと思って電気にきつく抱き付いた。

「大事にするの、下手でごめん」
「…いい。これからもっと大事にして」
「うん、がんばる」

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