肝を冷やす
「最悪!!」
「最高だぜ!!!」
お楽しみの肝試しの時間がきていたのだが、私のくじ運が最悪だった。常闇くんとペアになることのみを望んでくじを引いたのに、まさかの峰田くんとペアになってしまった。
「先生!暗闇で峰田くんと二人きりっていう状況がもう無理なんですけど!私ただでさえ…」
「怖いのか!?オイラがみっちり傍についててやるから安心しろ!」
「だから安心できないんだってば!」
「峰田、くじで決めたことだから変更はしないが、一周して戻ってきたとき、明星に何かされなかったか事細かく聞いてお前の処罰の判断するから覚悟しておけよ」
「な、なんでオイラが何かすること前提なんだよぉ!」
先生が私の味方で安心する。でも、一周するまではこの変態と二人きりでいなければならない。もし何かあったら脅かす役のB組の人たちが見ていてくれるだろうし、証人になってくれるだろう。
「明星、気を付けろよ」
意外にも、常闇くんは私に声をかけてから障子くんと森へ入っていった。だからさ、そういうさりげない一言がめちゃくちゃ好きなんだって。
「くそっ、常闇まで俺の事危険物扱いしやがって…あいつ明星に気でもあるんじゃねぇの」
峰田くんの一言で、更にドキッとした。冗談なのは解っているけど、私の気持ちを知らない男子からそういうことを言われると、端から見てそう見えるのかと勘違いしてしまいそうになる。
「あかり災難だったね…」
「うん、無事に一周できる気がしないよ…」
「だよね…ペアが女子だとしても、私も無理、ほんと無理」
響香ちゃんは不安そうな顔のまま、透ちゃんと共に森の中へと消えていった。皆がどんどん森へ行くと、順番が後の方な私はそれはそれで不安が募る。
「…私、峰田くんに何かされたら叫ぶから。聞こえたら後ろから全力で駆けつけてね」
「う、うん!」
「うんじゃねーだろ!緑谷ぁ!」
私の次に出発するのが緑谷くんだったから、念のためお願いしておいた。ああもう、本当に憂鬱すぎる。もうすぐ、私たちの出発だ。気が重い。
そろそろかぁと思っていたら、近くで突然衝撃音が響いた。振り向けば、知らない奴らにピクシーボブがやられていた。敵は二人も来ていたのに、全く気が付かなかった。
「なんで敵がいるんだよぉ!!」
逃げなきゃ。咄嗟にそう思ってしまってショックを受けた。ピクシーボブがやられているというのに、助ける選択肢が咄嗟に出てこなかった。仮にも私、ヒーロー科なのに。ヒーロー目指してるのに。
「あなたたちは戻ってなさい!委員長、引率お願い!」
「はいっ!」
マンダレイには戻れと言われたけど、本当に戻っていいのか。森にはまだ他の皆がいるのに。助けずに自分だけ逃げて許されるのか。
「行くぞ明星くん!」
「で、でも、皆が」
飯田くんは無理やり私の手を引いて走り出した。助けたい気持ちと逃げ出したい気持ちがいっぱいで、私はそれについていくことしかできなかった。
「僕らは個性を使えない!たとえ敵であろうとも!」
敵が来ても個性を使えないこの状況も、個性を使って戦うほどの勇気がない自分にも、悔しかった。逃げることしかできない自分が、無力だった。
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