大切なきもち
あのあと、緑谷くんや切島くんたちが爆豪くんを助けに行き、プロヒーローたちが戦って、勝利を納め瑠児とができた。けど今度は、平和の象徴を失うことになってしまった。オールマイトはもう、敵との戦いのせいでほとんど戦えない体になってしまった。
そして私たち生徒は、敵からの襲撃を恐れて、寮に入ることになった。
「風呂上がりの女子の姿を!!合法的に見れるんだぜ!!??」
お風呂上がりに共有スペースに行けば、騒いでいる峰田くんの声が耳に入った。私の存在に気付いたのか、峰田くんは振り向いて私を見たと思えば「だろ!?!?すげぇなここ!!!」と更に騒がれた。一緒に居た上鳴くん切島くん常闇くん瀬呂くんは気まずそうな顔をしていた。
「峰田くんだけ寮じゃなくて監獄に入れた方がいいんじゃないかな」
「俺もたまにそう思う」
「上鳴てめぇ!!」
こんなとこ早くずらかろう。水をコップに注いで、飲めば冷たくて気持ちいい。
「…でも風呂上がりの姿見れるのはこっちも一緒だよね」
コップを持ったまま皆の座っているソファの方に行く。遠目で見るよりも、お風呂上がりの皆の姿がはっきり見える。
「髪セットしてない切島くんと上鳴くんいつもと違うね、かわいい」
「それ言うなら明星のが一億倍かわいいからな?」
「風呂上がりっていいよなぁ、頬は上気して赤らんで、髪はまだ水が滴ってて、何よりも部屋着!!一緒に住んでいないと見られない特別感よ!!」
「峰田くんそろそろ気持ち悪いけど」
素直なのはいいけど、少しは内に秘めておくことはできないのか。他の皆もほんとはそんなこと考えてるのかな、と思ってふと常闇くんを見れば目があって、でもすぐそらされた。なんか悲しい。
「そうだ明星今から何かやることある?暇なら雑談しようぜ」
「えー、峰田くん居るからなぁ」
「そうやってすぐオイラを除け者にしようとする!!」
心の底から嫌なわけではないから、雑談に加わることにした。私はちょうど空いていた常闇くんの隣に座った。
「さっきまで何の話してたの?風呂上がりの話してたのは丸聞こえで理解したけど」
「最初何から始まったっけ?」
「峰田が、寮生活で女子と距離近くなってウハウハだぜって話し始めたんじゃなかったっけ」
「へぇ、まぁ峰田くんは無理でしょ」
「無理ってなんだよぉ!」
水飲み終わったら帰ろう。たぶんここに長居しても峰田くんの下らない話に付き合わされて終わりだろう。
「オイラも女子にモテてぇ!!」
「だから無理でしょ。この話終わらなくない?私部屋帰ろうかな」
「待てよ!!何が無理なのか教えてくれ!!女子にモテる極意を!!」
「ええぇ、もう峰田くん根本的なところがアレだからな…」
「根本的なところがアレ!?!?」
普段の行いが悪すぎて、峰田くんにだけは優しくする気が起きないし、言葉をオブラートに包めない。
「ていうか、もしかして峰田くん以外の皆も同じことで悩んでたりしたの?」
ウッとバツの悪そうな顔をする上鳴くんと切島くんと瀬呂くん。常闇くんだけは相変わらず無表情だったけど。
「皆いい人だから、ヒーローになるころにはもてもてだと思うよ」
「根拠の無い慰めありがとな!!」
「た、たしかに根拠は無いけどさ…」
やばいな、思春期の悩みを解決できる力が私には無い。
「明星は良いよな、可愛いから彼氏作ろうと思ったらいつでも作れそう」
「さっきからそれ照れるってば」
「いやまじで。明星が頬染めて好きって囁いたら全員落ちるだろ」
「少なくともここにいる俺らは簡単に落ちそうだよな」
瀬呂くんまって、失礼だけど上鳴くんや峰田くんや君はそうかもしれないけど、切島くんや常闇くんも?
見れば切島くんは少し頬を染めてうんうんとうなづいていたし、常闇くんはやっぱり目があってすぐそらされる。常闇くんだけ顔色わかんないのずるい。私が知りたいの、常闇くんの反応なのに。
「常闇はそんなこと無いかもだけど」
と、上鳴くんに心を打ち砕かれた。そうなのね、常闇くんは落ちてくれないんだね。
「いやいや、こういう奴ほど何考えてるかわかんねぇぞ?さっきから黙りやがって、こういう奴ほどムッツリスケベなんだよぉ!」
「…お前と一緒にするな」
「ケッ!いい子ぶりやがって!」
「峰田くんモテないからって喧嘩売るのやめなよ」
「モテねぇのは今関係ないだろぉ!?」
ムッツリスケベな常闇くんとかちょっと想像し難いけど。
「エアコンで体冷えてきたから帰る」
「逃げるのか!?話はまだ終わってねぇぞ!」
「えぇ…峰田くんがモテないって話で結論出たじゃん」
「勝手に出すんじゃねぇ!!そこじゃなくてだ!!」
「はいはいどこですか」
峰田くんと話すの疲れる。
「明星のそのモテないオイラたちを舐めきった態度!ついでにさっきから余裕たっぷりで微動だにしない常闇!!合宿の時から思ってたけどお前らデキてんだろ!?」
「はぁ!?」
これにはさすがに常闇くんも動揺したのかビクッとしていた。
「いやいやいや、できてないよ、何それ…」
「最近よく近くにいるよな!!合宿のバスとかいちゃついて寝てやがるし!見舞いのときも二人でこそこそしてやがるし!今もナチュラルに隣座ってるし!!見せつけるなよな!?!?」
「バスってなんだ!?俺それ知らねぇ!」
「あー、そういや寄り添って寝てたな」
「寄り添って!?!?」
やばい、頼むから騒がないで。私の純粋な気持ちに土足で踏み込まないで。そういうのほんと、無理だから。
「峰田には関係無い」
「はぁぁぁん!?」
常闇くんは温厚な方だと思っていたけど、峰田くんに対してはきっぱりと言い放った。言い返してくれたのはありがたいけど、いつにも増して悪い目付きで峰田くんを睨んでいるような気がして、ドキッとした。
「踏み込むな。…明星も部屋に戻れ、体冷やすぞ」
「う、うん…戻る…。じゃあね皆、おやすみ」
「お、おう、おやすみ!」
おやすみに返事してくれたのは切島くんだけだった。峰田くんがまだ何か騒いでいたけど、とても居づらくなってしまったので私はすぐ逃げて部屋に戻った。
変な勘違いされて、常闇くんどう思ったんだろう。焦った私と違って冷静に対応してたけど、もしかして、何も思ってなかったり。あのあとどうやって場を静めたのか気になるけど、知るのが怖い。浮かれていたのが私だけだったら、勘違いされて嫌がられていたら、気にして距離を置かれたら、私は元気に生きていける気がしない。
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