男に慣れる



「一年の若松です!よろしくお願いします!」

本当は、イケメン慣れするためにみこりんに相手してもらおうと考えていた。だが冷静に考えて、普段のみこりんに対して照れてしまうことが多々あるため、もう少し平均に近い男子から慣れようということになった。
野崎くんという案も結月に相談したら出されたが、千代に即却下された。よって、代わりに後輩の若松くんを紹介された。

「ごめんね、とても馬鹿馬鹿しいことに付き合わせることになっちゃって」
「いえ、大丈夫です!瀬尾先輩の無茶に付き合わされるのに比べたら何だって平気です!」

鹿島くんやみこりんと比べてしまえば、まぁイケメン度は低い。だが運動部独特の爽やかさ、一年の若い明るさ、性格のせいなのか輝かしさまである。とても眩しい。

「しかし京極…全く照れないな」
「うん…ほんと、申し訳ないくらいに…」

野崎くんが見ていて楽しむことができないくらいに、若松くん相手に照れることができない。眩しい笑顔を向けられても、純粋な瞳に見つめられても、甘い言葉を囁かれても、照れることなどほぼなかった。

「ご、ごめんね?先輩の馬鹿なわがままに付き合わせたのに面白い反応できなくてごめんね…!」
「い、いえ!大丈夫です!暇でしたし!」
「あのね、正直なこと言わせてもらうと、若松くんのこと男として見れないっていうか、後輩だし、何しても何言っても、かわいいな〜で終わっちゃって、」
「…俺、男としての魅力無いんですかね」
「そ、そんなことはないと思うけどね!?若松くん普通にかっこいいし、運動部だから力あるし、明るくて爽やかだし、背高いし、腕とか筋肉ついてて頼もしいし…」

フォローしていたら、若松くんの方が照れてしまった。そんな姿もまぁかわいい。結月が彼をいじめる気持ちもなんとなく解ってしまう。

「京極先輩だって、優しいし、努力家だし、賢そうだし、落ち着いてて大人っぽいです。そういうとこ瀬尾先輩と正反対で女性らしいと思います!それに瀬尾先輩と違って可愛いです!」

とても嬉しい言葉を並べられ、普通に照れた。

「野崎先輩!俺の勝ちです!」
「これ勝負だったのか」
「でも京極先輩、俺なんかで照れてたら舞台やばいんじゃ…」
「…そうだね、もっと鍛えないと」

落ち着いてて大人っぽいって言われた。若松くんってば私のことよく解ってる。普通に出会ったから私に不良イメージが無いんだろう。嬉しい。

「俺でよかったらまた付き合いますからね」
「若松くん…ありがとう!」

犬のようにいい子だ。これはたしかに構いたくなるし遊びたくなる。

「やるならまたここでやってくれよ」
「…夢野先生がそうおっしゃるなら、喜んで…」
「ん?だったら、俺よりも野崎先輩に相手してもらった方がいいんじゃないですか?少女漫画家だし、歯の浮くような台詞考えるの得意だったりしません?」
「の、野崎くんは演技が下手だから!」
「あ、そうなんですね」

仮に野崎くんに特訓相手をしてもらって、それが千代にばれたらどうなることやら。激怒されるだけでは済まなそうだ。

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