作画資料2
「鈴木とマミコが遊園地に行くことになったから、資料を撮ってきてくれないか」
という野崎くんからのお願いにより、私とみこりんで遊園地に行くことになってしまった。みこりんには、佐倉と京極で行けばいいだろ!?と言われたが、せっかくの日曜日だし千代を野崎くんの傍に置いといてあげようということになり、こうなった。みこりんが千代の想いを知っていてくれて本当によかった。
「日曜日すごい人だね…」
「迷子になったら放送かけるからな」
「…それは恥ずかしいからお断りだね」
しかしこれ、デートじゃない?夏祭りも二人きりで、遊園地も二人きりって、何回デートしてんの?あの御子柴美琴とデートとか許されるの?女の子たちに刺されない?
「でもせっかく来たんだし、いっぱい乗りまくろうよ」
「そうだな!」
だがしかし、ここに同じ高校の子がいるとは思えない。偶然会ったとしてもそれがみこりんのファンでなければ問題ない。噂されたら、私は問題ないが、みこりんには迷惑かもしれないけど、そうなったらそのとき考えよう。
せっかくみこりんとデートなんだから、とにかく楽しもう。
「ね、後でお化け屋敷いきたい!」
「あ…あとでな。それより、ジェットコースター乗ろうぜ!」
ジェットコースターあんまり得意じゃないんだけどなぁ。でもみこりんが楽しそうだから、私も頑張ろうかな。
なんて、無理をしてジェットコースター三種類を乗り終わる頃には、頭がくらくらしていた。
「おい…大丈夫か?」
「…大丈夫。ちょっとHPを削られただけだから…」
「…ごめんな、つい、楽しくて」
つい??楽しくて??私と遊ぶのそんなに楽しかったかな!?あ、楽しかったのはジェットコースターのこと!?
「ちょっと休むか?」
「…息抜きに、お化け屋敷行きたい」
「息抜き!?息の根止まるわ!!」
「…みこりん、お化け屋敷苦手なの?」
「ににに、苦手なわけねぇだろ!!ただ、あれだ…暗いところになんか行ったら、せっかくのお姫様の顔が見えねぇだろ?」
あぁ、たしかに。恥ずかしいことを言ってから照れるみこりんの顔が、お化け屋敷の中では見れないのか。だとしても、吊り橋効果って感じで、怖いドキドキを恋のドキドキに変えれたりとかしちゃったりして…
「苦手じゃないなら、行けるよね?」
「…上等じゃねぇか、行ってやるよ…」
照れる可愛いみこりんを見れたおかげで元気が出てきた。みこりんは嫌そうな顔をしていたが、構わずお化け屋敷まで連行した。列に並んでいる間みこりんの口数が少ないから、他愛の無い話をして慰めたけど、どうも上の空だった。
「…京極」
「何?」
「怖かったら怖いって言えよ」
「うん」
たぶん私が怖いって言わないとみこりんが怖いって言い出せないんだろうなぁ。
私達の番が来たのでお化け屋敷に入ると、私達より先に入った人たちの悲鳴が何回も聞こえてきてちょっと怖くなる。
「くそ…なんで楽しむ施設にこんなこえぇもん作るんだよ…」
「ドキドキして楽しいからでしょ」
中に入れば壁一面、恐ろしい造形物が飾られていたり、赤い手形があったりするのを見て、みこりんがいちいち声をあげる。
「うわあああああ!!」
「わわっ、なに!?」
「か、鏡だった…」
「みこりん…」
みこりんはびびって私の両肩を掴み、完全に怯えてしまっていた。歩きにくいから余計に歩くスピードも落ちてみこりんに不利なのにいいのだろうか。
「お、お前の背後は俺が守るからな。背中は俺に預けろ…」
「みこりんの背中ががら空きだよ」
「お化け屋敷で背後から脅かしてくることなんか無いからいいんだよ」
じゃあみこりんが私の背中を守るのも無意味なんだけどなぁ。
「つーか、暗すぎだろ…足元見えるか?」
「なんとか。足元は私がちゃんと見てるから、みこりんは周りちゃんと見ててね」
「み、見れるわけねーだろ!」
「だってここ写真に撮れないから、せめてどんなのがあったか野崎くんに伝えれるように見て覚えないと…」
何気なくみこりんの方に振り向いて見たら、ものすごく近くに顔があった。そうか、怖がりだとそんなにぴったりくっついて歩くのか。
「な、なんだよ」
「別に…」
薄暗くても、怖がるみこりんの頼りない顔はとても可愛くてかっこよかった。私だってほんとはこのくらい怖がって、怖いからとか言って手を握ったり、勢い余って抱きついたりとかしたいのに。みこりんが怖がってしまうせいでそれができない。
のれんを潜ると和風な家みたいな廊下になっていて、女の笑い声が響いていた。よく見ると障子が破れて人の目が覗いていたり、そこらじゅうが赤く染まっていたりした。
『ヴアォォォォォアアア!!!』ガタガタッッ
「うわああああ!!」
突然聞こえた物音と男のうめき声のせいで、みこりんまで叫んだ。叫んだついでに抱きついてきて、私は自分が何のせいでドキドキしているのか混乱した。
「なんだよここ!!俺もう外出る!!無理!!」
「だ、大丈夫だよ、みこりんは一人じゃないんだし…」
「俺は一人じゃない!?ここには俺が二人も三人もいるのか!?」
「いや、落ち着いて。私がついてるから大丈夫だよって、そういう意味だから…」
みこりんは少しの間を置いて、私からぱっと離れた。心配になってみこりんの顔を見れば、真っ赤になっていた。
「…行こ?」
これは吊り橋効果期待してもいいのかも?なんて考えながら歩き出せば、みこりんもついてきた。そしたらみこりんに手を握られた。
「…怖いだろ?手握っててやるよ。は、離すんじゃねぇぞ」
「…うん。ありがとう、みこりん」
みこりんの手は震えていたけど、さっきみたいな嫌そうな顔は全然していなくて、照れて赤いまま困ったような表情をしていた。どうせ誰も見ていないし、と思いみこりんとの距離を縮めれば、みこりんの手に力が入った。このまま、ここから出られなくなればいいのにな。なんて、みこりんに言ったら怒られそうだ。
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