真実はひとつ
付き合うことにされてしまって2週間経ったのだが、1日置きに本郷さんは私に会いに来た。そのたびに美味しいご飯を食べさせてくれて、色んな話をして、付き合うってこんな感じなのかぁ、と感じてきていた。
「なぁ一色、…話があるんだが」
「ん?どしたの?」
「大事な話だから、今日は仕事あがったら俺に時間くれ」
檜佐木くんがいつになく真面目な顔で言ってきた。何かあったのだろうかと不安にもなる。でも檜佐木くんも解ってると思うけど、いつもの流れでいくと今日は、またあの人が迎えにくる。
「今日の仕事後じゃないとダメな感じ…?」
「……だったら、今でいい。ちょっときてくれ」
「え、でも買い出し頼まれてて、すぐ買って戻らないと、」
「遅くなって怒られるなら俺が代わりに怒られるから。ほんとに、大事な話なんだって」
檜佐木くんが無理を言うことなんて今までなかったから、私はおとなしく従うことにした。そんな大事な話どこでするんだろうと思ったのだが、連れていかれたのは脚立やら工具やらが保管されている埃っぽい倉庫だった。
「…誰もいないよな」
「そりゃ、静かだし、霊圧も感じないしいないと思うけど…」
倉庫の扉を閉めれば、外の音は一段と聞こえなくなった。檜佐木くんと二人きりでお話するなんて、いつぶりだろうか。
「…時間無いし、直球で言うぞ」
「うん」
檜佐木くんは眉間にシワを寄せて、なんだか言いにくそうだった。いつもと違う様子で心配になる。
「…本郷さんの、ことなんだけど」
「何?」
「…他の先輩から聞いたんだが、あの人、女遊び激しい人らしくて」
「…おぉ」
「今までも、新入隊員から可愛い子見つけては喰ってる奴らしくて、泣かされた女もいっぱいいるみたいで
。…だから、一色のことも、そうなるんじゃないかって、思っちまって」
嘘だ。あの人、そんな風には見えないし、喋った感じだっていい人だった。いまだに手を繋ぐくらいしか手も出してこないし、体目当てなだけだなんて。
「…嘘。だって、噂は噂でしょ?そんなまさか…ね」
「俺だってそう思ったけど!でも…、この前、聞いちまったんだよ。同期と飯行ったとき、同じ店に偶然あの人いて、新しく彼女できたからしばらく遊べる…って。また飽きたら捨てるんだろってあの人の友達も言ってて…皆で笑ってた」
「嘘…」
「俺が今まで一色に嘘ついたことあったかよ」
だってそれが本当なら、私に優しくしてくれてる本郷さんの優しさは、全部嘘になる。素直に嬉しいって思ってたのに。
「俺もこんな一色の恋愛事にまで首突っ込むのどうかしてると思うけど…でも、知っちまったこと、黙って見過ごせねぇよ」
「……」
「一色に…無駄に傷付いて欲しくない」
だからって、ここまで言う檜佐木くんの言葉が、嘘なわけがない。どれかが偽物でどれかが本物だと言うのなら、私は今まで信じてきた檜佐木くんの言葉が本物だと、信じたい。
「…わかった。檜佐木くんのこと、信じる」
だからそんな、私のために、泣きそうな顔しないで。
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